ジョジョの奇妙な聖杯戦争

未来の過去から来た男

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777 名前: マロン名無しさん 2006/04/25(火) 19:16:52 ID:???
 どうも辻褄が合わない。
 リンゴォ・ロードアゲインという男だったか。その男が、大草原の小さな小屋に、時間を繰り返すことによって、閉鎖された箱庭を作り上げていた。
 ジャイロと、そしてホットパンツという男―男だったと思うが―と共闘し、リンゴォと戦うことになった。
 そして、再びリンゴォの攻撃が始まった。その瞬間だった。気がついたら、この世界にいた。
「ジャパン・・ジャポン・・・とかいう国だったかな?・・・ええと、ライダーっていったっけ?」
「そうなりますね。私も全ての疑問に答えられるほど状況を把握してはいません。・・もしかしたら、貴方の方がずっと『今』のことについては分かっているかも」
「そうかもしれないけど・・・五十歩百歩ってやつだろう」
 五十歩百歩・・・・?チャイナの故事だろうか?自分は果たしてそんな言葉をしっていただろうか?どうも解せない。そもそも、自分が自分の知っている言葉で喋っているかどうかさえ、自信がないのだ。
「・・・とりあえず、宿を探さなくてはなりませんね。行きましょうか?」
「あ、ああ」
 ライダーが、ジョニイを乗せた、うっすらと赤錆が浮いた車椅子を、ゆっくりと押し始めた。この車椅子は、ライダーが廃材置き場から適当に調達したものだ。
「・・・・・・・・・・」
 カタカタと乾いた音を立てて動き始めた車椅子の上で、ちらりと横目でジョニイは紫の髪の美女―両眼帯をしており、推測でしかないのだが―を見た。
 そもそも、このライダーという女も、信用できない、とはいまさら言いはしないが、得体が知れず、なんとすればいいものか、分からない。しかし―。
「聖杯・・・・か」
 もしかしたら―聖人の遺体の一部なのかもしれない、とジョニイは考えていた。血液の遺骸があっても、いまさらおかしいことはなにもない。
 眼球でさえも、劣化せずに保存されていたのだ。もしかしたら―この世界もまた、聖人の遺体が作り出した世界なのかもしれないな―。
 一人ごちるジョニイをのせた車椅子は、カラカラと街路へと向かって、ただ車輪を廻す。

783 名前: マロン名無しさん 2006/04/25(火) 19:35:53 ID:???
 しかし、そこでジョニイはあることに気がついた。
「・・・・・ドル・・・・は使えないよな」
「・・・・ですね」
 はあ、とため息を吐いて、ジョニイはうな垂れた。どうもいけない。心強い相棒、ジャイロと、己の足として闘ってきたスローダンサーが欠けるだけで、その精神は、SBRが始まる前まで退行してしまっている。
「・・・しょうがない。今日は野宿だ。二、三日は大丈夫だろう。こっちの言葉は通じないわけじゃないし、じっくりと街の中を見てまわろう。それでいいかい?」
「ええ、別に構いませんが・・・・」
 ライダーは、語尾をいくらか濁した。
「? どうしたんだい?」
「敵は、夜でも待ってくれないでしょうね」
「・・・・警戒は怠るな、ってとこかな?ま・・・真夜中に恐竜に襲われた経験だってあるしな・・」
「ならいいんですが・・・さて、どうしましょうか」
 街路を流れていく枯葉が、ジョニイの心情を映していた。

「・・・あ、いや、こっちだ。ライダー。そう、そこを右」
「・・・・どちらへ向かうつもりですか?ジョニイ」
「いや・・・大きな屋敷が見えたんでね。どうせなら、和風の建物も見てみたいな・・と」
 一際大きな建物が、二人の視界に入る。そして、ジョニイはその門に掛けられた表札を見た。
「クージョー・・・かわった名前だな」

793 名前: マロン名無しさん 2006/04/25(火) 20:04:41 ID:???
「ホリイは元気にしとるかのぉ。なんにも連絡いれとらんから。びっくりするじゃろうな。・・・ん?」
 愛娘、ホリイの家の門の前に、車椅子に座った男と、その連れらしい女性が立っていた。
「・・・クージョー・・・か」
「覚えが?」
「ない。だが・・・何故か、懐かしいような、待ち望んでいたような、そんな気がする」
「?」
 娘の家を見てなにやら話している二人に、何気なく、不審なものと、奇妙なものを覚え、ジョセフ・ジョースターは話しかけた。
「あー・・・お兄さん、ワシの家に何か用でもあるのかね?」
 ハッ、とした顔になり、ジョニイはジョセフの方を見た。
「あ・・・いえ・・・その・・・そう、ただの観光です。僕はジョニイ・ジョースター。こっちは・・友達の・・・そう、そうです。ルーシーです。そうだよな、ルーシー」
「え?ええ、ルーシーです」
「ちょっと立派な家だったもんで、見ていただけです。失礼しました・・・ん?」
 ジョセフの顔色が、幾分変わっていた。紅潮したり、青ざめたりするほどではなかったが、その顔色には、確かに驚愕の色が見て取れた。
「あー・・・どうかしましたか?」
「あ、いやいや、ワシも、ジョースターという姓だったもんで。ジョセフ・ジョースターですわい。観光でこちらに?」
「貴方もジョースター?奇遇だなあ。・・・観光ではないんです・・・ちょっと・・・色々あって」
「ふむ・・・よければ、話してもらえませんかい?何か力になれるといいのですが・・・」
「ああ・・・・すいません」
 と、その時、ライダーが肘でジョニイを小突いた。
「(・・・・いいんですか?)」
「(え?構いやしないよ。この人は悪人でも敵でもないと思う)」
「(・・・・カン、ですか?)」
「(ジョッキーの経験さ)」

811 名前: マロン名無しさん 2006/04/25(火) 20:25:49 ID:???
「あら、パパ!来るなら来るって電話くれれば・・・・あら?そちらの方は、どなた?」
 空条ホリィ―旧姓、ホリィ・ジョスターは、父の後ろから入ってきた客人に目を移した。
「ああ、ただの客人じゃ。ホリイ、いきなりで悪いが、何かお茶請けを頼めるかい?」
 そのとき、ホリイはこう思った。
 ―アブドゥルさんもお父さんも凄い恰好してたけど、こ、この人たちは一体・・・ゴクリ―
 違うだろ。

「承太郎の祖父?」
「ああ。典型的なスケベジジーさ。アイツの血を引いてると考えると、たまに泣けてくるぜ」
「・・・・いないよりは、いた方が淋しくはないと思いますが」
「・・・・・・・」
 二人は階段を降りて、居間に目を向けた。その瞬間だった。
 居間のテーブルには、四人座っていた。ホリイは、正座で。ジョセフを胡坐をかいて座っており、他の二人を見た瞬間、セイバーの気配が変わった。
「!」
「? どうした?セイバー」
 セイバーは、膝にタオルケットをかけて座っていた男の後ろで、正座していた女を、睨み付けていた。向こうも同じく、セイバーに視線―というか気配を向けていた。
「・・・・・・ライダー!?」
836 名前: マロン名無しさん 2006/04/25(火) 20:42:30 ID:???
「・・・・・つまり、ジョニイ。アンタとこっちの話を合わせると、アンタは1890年の人間なのか?」
 ジョニイは、首を捻りつつ少し考えてから、言った。
「そうかもしれないな。あんな奇妙なレースだ。時間を飛んでしまうくらいの話はありそうだな。で・・・君達は俺の子孫なのか?」
「どうなんだ?ジジイ」
 しかし、ジョセフはノートパソコンの画面を見ながら、首を捻った。
「分からん・・・今、財団のワシの家系の詳細なデータを送ってもらったが、どうもおかしい。ジョニイ君、君の家族に該当する人間がおらんのだ」
「?  じゃあ、これなら分かるはずだ。スティールボールランとかいう歴史的な事件があるはずだ。それの出場選手を調べてくれないか?」
 だが、二人の反応は、ジョニイの期待にそぐわなかった。
「スティールボールラン?聞かねえなあ。ジジイ?」
「いや・・・・そんな話は知らん・・・データもない。君を疑うつもりはないが・・・いや、聞くまい。信じよう」
「ありがとうございます・・・しかし・・・残念だなあ」
 ジョニイはため息を吐いた。
「何がだ?」
「いや、君達みたいな男前の子孫がいるってことは、俺は美人の女と結婚できるってことだろ?」
「OH! YES!」
 そういって両手を叩く二人を見て、承太郎は呟いた。
「・・・・・・・やれやれだぜ。勝手にやってろ」

「(しかし・・・・・やはり聖杯とやらが関係しているのか・・・セイバーとあのライダーとかいう女はどうした?)」

888 名前: マロン名無しさん 2006/04/25(火) 21:03:01 ID:???
「あのジョニイ・ジョースターとやらが、貴方のマスターですか?ライダー」
 セイバーの問いかけに、ライダーは答えた。
「ふう・・・否定する理由はないですわね。だったら・・・どうするのですか?」
 キッ、っとセイバーの殺気と闘気が澄み渡った。剣に微弱ながら風王結界が展開を始める。
「・・・・・そちらがやるというのなら、こちらはいつでもよろしいですが、ね」
 ライダーが、ゆっくりと鈍く輝くナイフを取り出した。ナイフというよりは、ギリシャ製武器のハルパーを思わせる形状だった。
 和の風が涼やかに流れる空条邸に、にび色の風が通り抜ける。
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
 一触即発という文字が、これほど適した状況はほかになかったであろう。何かの拍子に、二人の均衡は崩れていたであろう。
 と、その時であった。
「はあい、セイバーちゃん♪暇ならちょっと手伝ってもらえるかしら?」
「あ、わかりました」
 ズルッ、っとライダーの構えが崩れた。そのままセイバーは、物干竿の下で洗濯籠を持っているホリイの元に走る。
「何時もすまないわねえ、セイバーちゃん。あ、ライダーちゃんだっけ?手伝ってもらえるかしら?」
「え?あ・・・・・はいはい?わかりました」
 三人で、真っ白なシーツを伸ばし、布団を掛け、パンパン、と布団たたきで叩く。
「今日はセイバーちゃんもライダーちゃんもふかふかの布団で眠れるから、安心してね♪」
「はあ・・・?」
 いつの間にか、ジョニイはこの家に泊まることを承諾していたらしい。混乱するライダーに、セイバーが言った。
「こんなことを言うのもなんですが・・・私はたまに、ホリイさんの笑顔が見たいと思うときがある・・・私は変ですか?」
「いや・・・・・・・・・いいのではないですか?」
 笑顔、か、ライダーは呟いた。確かに、この女性の笑顔は嫌いではなかった。
 シーツは、吸い込まれる程に白かった。

END?


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