ジョジョの奇妙な聖杯戦争

腹ペコの英雄、イタリア料理を食す

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868 名前: マロン名無しさん 2006/04/08(土) 22:27:07 ID:???
扉を開くとチリーンとベルが鳴る。
内装はこじんまりとしているが、ごちゃごちゃした物が嫌いな承太郎は好感を持った。
テーブルも二つしかなく、なんとなくか隠れ家的な雰囲気を演出している。
「なかなか良さそうな店ですね」
とセイバーも気に入ったようだ。
「いらっしゃいませマセ、お客サマ」
店の奥から調理人らしき茶髪の男が出てきた。おだやかな顔つきの外国人だ。
「さ!お席へドーゾ」
と椅子を引いてくれる。二人とも素直に席に着く。
「ここは何が出来るのですか?」
とセイバー
「料理の献立はお客様次第で決定いたします」
「それは…どういう事です?」
セイバーが訊く。男はそれには答えず、セイバーの手を取り、じっと見つめ出した。
「アナタ…少し疲れていますネ?」
「え?」
唐突にそんな事言われ、セイバーが疑問符を浮かべる。男は更に続ける。
「最近仕事や勉強をしすぎたりしていませんか?」
「?!」
セイバーがさっき浮かべた疑問符に感嘆符を加える。たしかに先日の
敵サーヴァントとの戦闘で、魔力が減少し、疲労していたのかもしれない。
「私は両手を見れば肉体全てが分りまス」
(まさかこいつ…敵スタンド使いか?)
しかしもし敵ならば、わざわざ警戒されるような事を言うはずが無い。それにこの店を
選んだのはセイバーだ。敵という事はない気がする。
(一応警戒はしておくか…)

869 名前: マロン名無しさん 2006/04/08(土) 22:28:36 ID:???
「ワタシは人々が快適な気分になるための世界を旅してきました。
中国の漢方料理、アフリカの山野草など様々な物を習い、研究しました」
男の話しはまだ続く。セイバーはなにやら真剣な顔をして聴きこんでいる。
「そして、私の祖国イタリア料理に取り入れたのです。数千年の歴史ある
南イタリアの地中海沿岸の人々というのは、成人病が少なく長生きです。
それはヘルシーなイタリア料理を食べているからです。私はあなた方を
快適な気持ちにする料理を出します…オー!ゴメンナサイ!説明するヒマ
あったら料理しなくてはイケませんでス。えーとこちらのシニョールは?」
長い説明を終え、男が承太郎に訊いてくる。
「俺はいい。腹はすいていない…」
「かしこまりました」
男は二人のグラスにお冷を注ぐと、店の奥へと戻って行った。まさか一人でこの店を
切り盛りしているのだろうか。それならテーブルが二つしかない事もうなずけるが。
「現代の料理人とはなんと素晴らしいのでしょう…私の時代とは大違いです。」
セイバーは先ほどの男の話に、しきりと感心している。承太郎が料理注文をしなかった
事も、気にしていないようだ。食べ物に何か嫌な思い出でもあるのだろうか。
「どんな料理が出るのでしょう。たのしみです」
実に嬉しそうにセイバーが言い、グラスのお冷を口に運ぶ。次の瞬間、セイバーの
顔が驚愕で固まった。
「こ、これは…!」
「どうした!セイバー!まさか毒でも入っていたか?」
セイバーは、今飲んだ水を見つめたまま凍りついている。震える声で言葉を返す。
「違います…この水は…この水は美味しいのです!今まで!飲んだ事も無いほどにッ!」
「なに…?」
(美味い…だと?)
「まさに命の源!全ての生命の母!」
「セイバー、少し落ち着け」
普段の冷静なセイバーとは、全くかけ離れている。まさか本当にスタンド攻撃か?

870 名前: マロン名無しさん 2006/04/08(土) 22:29:20 ID:???
「喜んでもらえて光栄です…」
料理の乗った皿をもち、男がやってきた。
「そのミネラル・ウォーターはアフリカ、キリマンジャロの五万年前の雪どけ水です。
作物は水で育ち、食材は水で洗われます。パスタを茹でるのも水です。
料理と水は切っても切れない関係なのです。」
男はまた、訊いてもいない講釈をたれる。
「いや、本当にこの水は美味しい。私の名前はセイバー、貴方の名前を教えてください」
「私の名前はトニオ・トラサルディー。そしてこれが前菜の『モッツァレッラチーズとトマトのサラダです』」
トニオは持っていた皿をテーブルに置いた。料理の内容はその名の通り、輪切りにされたチーズと、トマトのサラダだ。
四枚のチーズと5枚のトマトが交互に並べられている。
「トマトとチーズを一緒に口の中に入れて、召し上がってください。」
「はい!」
セイバーはやたら勢いよく勢い返事をし、慎重にチーズとトマトをフォークで突き刺す。 
そして、それをゆっくりと──
口の中に─────
入れた。
変化は劇的だった。まるでセイバーと言う水素にサラダと言う炎が加わわったかのの如く。
「ゥンまーーーーーーーいッ!」
そして、生まれたのは味わいと言う爆発。
「これはあぁ~~この味はああぁ~~~!」
「トマトとチーズの素晴らしき連携!お互いがお互いを引き立てあう!まるで私がエクスカリバーを使いこなす事でッ!
爆発的攻撃力を得る事のようにッ!!」」
「…」
「グラッツェ~喜んでいただいてこの上ない幸せです」
承太郎は相変わらずの無言。トニオは実にうれしそうニコニコと微笑んでいる。
「トニオ!もしも貴方の身に危機が迫った時は、騎士の誓いにかけて必ず助太刀いたします!」
「ありがとうございます。それでは少しの間失礼しマス。パスタの湯で加減をみなければなりませんので」
そう言い、トニオはまた店の奥へと戻って行った。

871 名前: マロン名無しさん 2006/04/08(土) 22:30:10 ID:???
「本当に素晴らしい!トニオは料理の天才です!!」
セイバーは今まで見たことも無い程嬉しそうだ。だが、承太郎は不安を隠せなかった。
(果たしてこれは敵スタンド使いやサーヴァントの攻撃なのだろうか…だが毒殺するのなら水に毒を混ぜれば
よかったはずだ。)
セイバーの反応が、オーバーすぎるだけなのかも知れない。だが、料理を食べてみるわけにもいかない。
「やれやれだぜ…ん?どうしたセイバー」
先ほどまで、料理に感動して騒いでいたセイバーが急に大人しくなっている事に、承太郎は気付いた。
「いえ、…さっきから、何か体が暑いいのです」
見やると、セイバーは少し息を荒げ、額には汗が浮いている額には汗が浮いている。
「な、何か……体がどんどん暑くなっていきます…あ、暑い!性質の悪い風邪にでも罹ったみたいに暑いです…」
セイバーの具合は見る間に悪くなっていく。今はもう肩で息をつき、全身びっしり汗をかいている。
「まさか…スタープラチナ!」
ローマ拳闘士を思わせる逞しい肉体を持つ承太郎のスタンド、スタープラチナが出現する。
「この料理に何かあるかも知れない。スタープラチナの視力は顕微鏡並だ…何かが見えるはずだ」
さっきまでセイバーが食べていた料理を、スタープラチナで観察する。
「視えた!」
細かくてわかりずらい物の、確かにスタンドらしき物が視える。
「野郎…やはりスタンド使いだったか!」
承太郎はスタープラチナでセイバーを抱きかかえ、トニオのいる店の奥へと入っていく。
トニオはすぐに見つかった。奥は厨房となっていて、トニオは鍋でパスタを茹でている。
承太郎太郎は床にセイバーを下ろし、トニオを殴り倒すべく全速力で駆け出した。

872 名前: マロン名無しさん 2006/04/08(土) 22:30:49 ID:???
「そこで何をしている~~~ッ見タナァ~~~~ッ」
トニオがこちらに気付いた。先ほどとはうって変わって恐ろしい顔でこちらを睨んでいる。
トニオは近くにあった包丁をこちらに投げつけた。承太郎は気にせずに走る。スタープラチナの目は、
その包丁が当たらない事を見切っていた。
「オラァ!」
射程距離内に入り、スタープラチナの拳をトニオの顔面に叩き込む。まともに喰らい、トニオは更に店の奥へと吹き飛きとんで行く。
「ぶげぁッ!」
承太郎は追い討ちをかけるため、トニオの元へと向かう。
「な、何を、するんデスカァァーー!?」
起き上がり、口と鼻からだら血を流しながらトニオが叫ぶ。
「何をするかだと?それは俺のセリフだ!てめえ、料理に何を混ぜたッ。」
承太郎はトニオを吊るし上げ、詰問する。
「何って…害になるような物は何も…」
ただただ困惑した様子でトニオが言う。
「何を言ってやが…」
「承太郎!」
承太郎の声を遮り、セイバーが声を上げる。
トニオにも注意を向けつつ、何事かとそちらを向く。
そこには居たのは、先ほどまで苦しんでいたのが嘘のように元気な様子のセイバーだった。
「まるで体の底から魔力が溢れて来るようです!こんなに調子がいいのは久々です!」
心底嬉しそうに、そんな事をのたまう。
「…一体、どういう事だ?」
誰ともなしに呟く。
「ハイ…全て説明いたしマス…」
力なく言葉を返したのは、スタープラチナに吊るし上げられたトニオだった。    
          
                ※※※

873 名前: マロン名無しさん 2006/04/08(土) 22:31:35 ID:???
          ※※※

「だいたいの事情は分かった…」
話しを聞いてみると、やはりトニオはスタンド使いだった。だが、敵ではなく、純粋に客の事を想って
スタンドを使っていたようだ。セイバーの異常も、体の異常を治すというトニオのスタンド、パールジャムの能力で、
セイバーが魔力不足だったので、に魔力炉が活発化したためらしい。
「今回の事は私が悪かったデス…お詫びに、今日は一日無料でお食事を振る舞いたいと思います」
「本当ですか!? 承太郎、こう言っている事ですし、もう許してあげましょう」
結局食べてただけのセイバーが嬉しそうに言う。
「ああ…じゃあ早速、注文を頼むぜ」
いい加減承太郎も腹が空いていた。


その夜は、家族皆でレストラン・トラサルディーへ行きましたとさ。
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