武蔵野鉄道100系電車
武蔵野鉄道100系電車は、昭和50年に足尾線全線開業に伴い登場した特急型電車である。
概要
昭和50年、当時の武蔵野開発鉄道は悲願であった中禅寺湖までの鉄道の延伸を果たした。100系電車は新橋~中禅寺湖間の観光輸送を主な目的としつつ、沿線のビジネス客、通勤客の利用も考慮して登場した武蔵野開発鉄道初めての特急型電車である。
コンセプト
- 観光輸送をに重点をおいた設計
奥日光という観光地への輸送に重きをおいた車輌であるので、居住性に重点をおいた。座席はシートピッチ1160mmのフルリクライニングシートを2+2配置にしたものを採用、横引きカーテン、デッキ仕切り扉の自動ドア、冷房およびロスナイ(三菱電機の熱交換型強制換気装置)の採用、便所、洗面台、売店兼車販準備室の設置などかなり気合の入った仕様になっている。これは、当時の国鉄特急グリーン車並みの(一部はそれを凌駕する)水準である。
- 動力性能も特急型にふさわしく
特急型車輌はその性質上高速性能を求められる。また足尾線内の急勾配にも対応できなければならない。
そのため足回りには湿式円筒案内型ダイレクトマウント台車を採用。軸ばねは寒冷地走行を考慮しゴム被覆付きコイルばねを採用。空気ばね台車である。製造時点では非常に滑らかな乗り心地を実現しており、後年に施工された体質改善工事に伴うヨーダンパの取り付けでその乗り心地に磨きがかかった。
主電動機は定格出力120kwのMT54型モーターに補極補償巻線を付加するなど改良を加えた日立製作所・東洋電機製造製ものをギア比3.50で全電動車方式で搭載、登坂性能の確保と高い静粛性、将来の高速化への対応を両立した。最高運転速度は当時は110Km/hで現在は140km/h(東名電鉄線内、自社線は130km/h)である。
制御方式は2000系電車で定評の高い抵抗バーニヤ制御に抑速発電ブレーキを付加したものを採用し下り勾配走行時の安全性と乗り心地を確保した。起動加速度は2.5km/h/s、減速度は常用4.0km/h/s、非常5.0km/sである。
これらの技術の採用により東武1720系や近鉄12200系の性能を凌駕し、のちに登場する近鉄21000系に肉薄する性能を実現している。
- デザインも特急・・
正面デザインは近鉄12200系電車に近似のものを採用した。設計に近畿車輛が大きく関わっている。
編成図
←太田
クモハ100-1 | モハ100-2 | モハ100-3 | モハ100-4 | モハ100-5 | クモハ100-6 |
ATS CONT PT | MG CP BT | CONT PT | MG CP BT | CONT PT | ATS MG CP BT |
クモハ100-1 | モハ100-2 | モハ100-3 | クモハ100-6 |
ATS CONT PT | MG CP BT PT | CONT PT | ATS MG CP BT |
クモハ100-7 | クモハ100-8 |
ATS CONT PT | ATS MG CP BT |
増備について
登場時は基本4両編成が6本、増結用2両編成が6本の計36両の陣容であった。近畿車両と武蔵野車輌製造が製造を担当した。乗客増加と停車駅の増加のため、更に4両編成が4本、2両編成が3本、6両固定編成が6本増備され、最終的に94両になった。
6両固定編成が誕生した時点で一部改番が実施されている。(旧クモハ100-4→新クモハ100-6、旧クモハ100-5→新クモハ100-7、旧クモハ100-6→新クモハ100-8。)
特急おくにっこう、あかぎ号でその俊足ぶりを生かして活躍した。団体臨時列車、修学旅行列車用車輌としても使用され、麻帆良線への乗り入れ実績もある。
近年の動向
10年単位で内装などの更新を受けつつ活躍しており、また、以下の通り省電力化のための界磁添加励磁制御化を含む全面的な体質改善工事を受けた。
平成6年から実施した体質改善工事については、界磁添加励磁制御化、増圧ブレーキと焼結合金制輪子やヨーダンパの採用に伴う130km/h運行への本対応、化粧板や座席、サニタリー設備、車いすスペースや車いす対応便所の設置など内装のリニューアル、空調機器の交換、車内にLED式旅客案内装置取り付ける、塗装完全剥離を伴う再塗装、腐食した鋼板の交換などを実施した。
老朽化のため平成25年12月までにすべての車両が定期運用から引退した。100系電車の引退により、定期運行のおくにっこう号すべてと500系指定運用のあかぎ号のスピードアップ(特に曲線区間)が実現した。
引退直前の時点ではクモハ100-1、モハ100-3、モハ100-5、クモハ100-7の各型式が喫煙車に指定されていた。
引退直前の時点ではクモハ100-1、モハ100-3、モハ100-5、クモハ100-7の各型式が喫煙車に指定されていた。
武蔵野鉄道の中でも現代に繋がる本格的な特急型電車として歴史的価値が高いため、現在は動態保存車として101-1~3・5・6の4両編成1本が残されている。
添付ファイル