東名首都圏電気鉄道12000系電車
共通主要諸元
起動加速度 | 2.8km/h/s |
営業最高速度 | 160km/h |
設計最高速度 | 185km/h |
減速度 | 5.6km/h/s(通常) 6.2km/h/s(非常) |
全長 | 非貫通型先頭車:21,500mm その他:21,100mm |
車体長 | 非貫通型先頭車:21,160mm 貫通型先頭車:20,670mm 中間車:20,600mm |
全幅 | 2,915mm |
全高 | 貫通型先頭車:4,090mm その他:3,855mm |
パンタ折り畳み高さ | 4,080mm |
車体高 | 3,490mm |
軌間 | 1,067mm |
電気方式 | 直流1,500V 交流20,000V、50・60Hz |
歯車比 | 1:5.22 |
駆動装置 | WN平行カルダン歯車形たわみ軸継手方式 |
電動機 | かご型三相誘導電動機 |
制御装置 | PWMIGBT-VVVFインバータ制御 M-PC11(1C1M) |
ブレーキ方式 | 回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ 応荷重、遅れ込め制御、直通予備、救援、発電、耐雪、抑速ブレーキ付き |
保安装置 | ATS-SW2形・東鉄CS-ATC・ATC-IM・名阪形ATS・ATS-DM・EB・TE装置 |
製造メーカー | 川崎重工業、近畿車輛、日立製作所、日本車輛製造 |
概要
東海地方方面の特急に運用していた400系はリニューアル工事や接客設備(主に座席)の改良による延命を行ってきたが、1998年の時点で製造後30年以上を経過した車両が大半を占めており、老朽化と設備の陳腐化が隠せないレベルとなってきた。このため、1999年に「2000年度以降、経年35年を超えた400系から順次廃車」の方針が決定され、その経年35年を超えた400系の老朽取替用として製造された。10000系の後継車となる車両で、2001年3月3日のダイヤ改正から営業運転を開始した。
製造メーカーは川崎重工業、近畿車輛、日立製作所、日本車輛製造の計4社である。
2014年4月現在での東名首都圏電気鉄道・名阪電気鉄道両社の合計車両数は270両である。これはJR西日本・北越急行が保有する683系と同じ両数であり、JRを除いた私鉄が保有する特急形車両としては最多両数である。
10000系の後継車ではあるが、車両単位での10000系との混結は不可能である。一方、編成単位では10000系との相互連結が可能となっているため、これを活用して本形式が使用されているほとんどの列車で、10000系との共通運用が組まれている。
製造時期と投入列車によって番代区分がなされており、それぞれ0・2000・4000・8000番代の4区分となっている。
構造
各番代の共通事項に関してここで記し、増備ごとの変更点は次節で詳述する。
車体
車体は軽量アルミニウム合金製とし、妻構体を除く台枠および構体は中空トラス断面のダブルスキン構造を採用した。先頭車両は10000系に引き続き、連結時の編成間の移動を考慮した貫通型先頭車と非貫通型の2タイプとされた。本形式では多客期の増結や他線区への転用を考慮した結果、貫通型先頭車の割合が高くなっている。非貫通型先頭車の運転台は10000系に倣い、大型曲面1枚ガラスを使用した流線形としている。先頭部の連結器は10000系では格納式であったが、現場の作業員からの声を反映して固定式に変更した。これに伴い、連結器カバーはガイドを覆うだけの簡素なものとし、作業性を向上させている。前部標識灯は4基、後部標識灯は2基搭載となった。10000系では非貫通型先頭車と貫通型先頭車で前部標識灯の数に違いがあったが、本形式では全車両同一数となっている。搭載位置は腰部に前部標識灯2基と後部標識灯2基、先頭部上方に前部標識灯2基となっているが、このうち非貫通型先頭車の先頭部上方に搭載されている前部標識灯の位置を、10000系の運転室内から貫通型先頭車と同じ運転台直上に変更し、運転席右方の視野の狭さを改善している。また、非貫通型先頭車は灯具ガラス形状を変更し、前部標識灯と後部標識灯を一体化している。
車体長は21,160/20,670/20,600mm(非貫通型先頭車/貫通型先頭車/中間車)、車体幅は2,915mmである。床面高さは10000系の1,160mmから1,125mmと35mm低くされ、ホームとの段差縮小を図っている。車体断面は既存車両との整合性を考慮して10000系とほぼ同一としているが、ダブルスキン構造の車両ではアルミ押し出し形材を使用して屋根構体を構成するため、屋根断面形状を10000系のパンタグラフ艤装部のみ平面から全て同一とし、屋根高さを60mm下げている。曲線通過速度は10000系と同一の半径400mのカーブの場合で最大本則+20km/h、半径700mのカーブの場合で最大本則+25km/hとされている。前述の通り床面高さと屋根高さが下げられたことで10000系よりも低重心化されており、曲線通過速度の向上が可能であるが、10000系と共通運用されることから速度を抑えて運用している。
側面窓はUVカットガラスを使用している。10000系では連続窓を採用していたが、本形式では座席2列毎の独立窓に変更している。このため、10000系との併結時に違和感が生じないよう、窓と窓の間を黒塗装で繋げて連続窓の様に見せている。なお、このUVカットガラスは8000番代以前はグレーに着色されたものを使用していたが、4000番代では近年一般的となったグリーンに着色されたものに変更されている。
主要機器
電動車(M車)は車両制御装置・空気圧縮機・蓄電池の直流電車相当の機器のみを搭載し、集電装置・変圧器・整流器の交直流対応設備が搭載された付随車(Tp車)の2両でユニットを組む、M-Tpユニット構成としている。このユニット構成は電動車の直流電車との機器の共通化が容易となる、整備時に特高圧機器と高低圧機器の混在によるトラブルを防止出来る、などのメリットを勘案して10000系から引き続き採用されたものである。この2両に加えて、ユニットを構成しない付随車(T車)を組み込むことで編成を構成している。10000系ではT車の空調装置の都合上、T車にユニット間に引き通す電気配線の設置スペースがなく、T車の連結位置はユニットの両端のみに限られていたが、本形式では空調装置の統一に伴って空調配管が簡略化され、これまで配管が通っていたスペースを使って電気配線の引き通しが可能となり、中間にT車を挟んだM-T-Tpという組成も可能となっている。
主変圧器(M-TM27)は走行風利用自冷式を採用し、1,200kVAの容量を備えている。
主整流器(M-PC12)は通商産業省資源エネルギー庁によって示された「高圧又は特高圧で受電する需要家の高調波ガイドライン」に対応するために、自励式PWMコンバータが採用されている。2群構成で並列運転を行っているが、故障時には1群を開放することで運転が可能である。4000番代では誘導障害対策として、フィルタ箱とアモルファスコアが追加されている。
車両制御装置は、IGBT素子を使用した3レベルPWMインバータM-PC11である。1基の装置中に主回路用VVVFインバータ4基と補助電源用CVCFインバータ1基を搭載し、主回路用インバータは1基で1台の主電動機を制御する1C1M制御を採用している。主回路用インバータは補助電源用インバータのバックアップも兼ねており、補助電源用インバータの故障時には主回路用インバータがCVCF制御されるようになっている。
空気圧縮機は2300系2000番代でも採用実績のある、除湿装置と一体化した低騒音型スクリュー式M-MH3098-M-RC1600を電動車・電動制御車に1基搭載している。
集電装置は0・2000・8000番代は10000系と同一の下枠交差式パンタグラフM-PS27Cを搭載している。4000番代は近年首都圏の降雪量が増加していることを鑑み、集電装置への着雪防止を考慮して3500系と同一のシングルアーム式パンタグラフM-PS28Dに変更されている。
空調機器は0・2000・8000番代は集中式のM-AU704Bを1両に1基搭載している。ロールフィルタ部に空気清浄機能を搭載し、送風機の制御段数を2段から3段に増加させてより細かな制御を可能としている。また、環境対策として冷媒をフロンから3種混合ガスに変更している。冷房能力は36,000kcal/hである。4000番代はM-AU704Bをベースに、室内熱交換器の容量アップによる冷房能力の向上、室内送風機の変更による低騒音化、構成部品の見直しによる装置の軽量化を図った、集中式のM-AU704Dに変更されている。冷房能力は39,000kcal/hである。
デッドセクション通過時は運転席の交直切替スイッチを操作することで主回路が切り替わる。室内照明は直流電源方式で、デッドセクション通過時には交直切替スイッチの操作と連動して蓄電池からの電力供給に切り替わるため、基本的に消灯しないようになっている。
台車
台車は軸梁式軽量ボルスタレス台車M-DT301(動力台車)・M-TR301(付随台車)を採用している。乗り心地改善のため、10000系のM-DT300・M-TR300から空気ばね中心間隔を30mm拡げた1,980mmとしたほか、床面高さを低減したことから側枠の形状を変更し枕ばね取り付け位置を20mm引き下げている。基礎ブレーキ装置はM-DT301がキャリパ式ディスクブレーキ、M-TR301が踏面ブレーキとディスクブレーキ(1軸2枚)の併用となっている。M-DT301の基礎ブレーキ装置は踏面ユニット式に変更することも可能であり、その場合160km/h運転が不可能となるため元番代に+1000して区別される。4000番代は台車形式は従来車と同一であるが、雪かき受部の強度アップのために側ばりばね棒の構成が変更されたほか、制輪子のワンタッチ交換化構造の採用、台車配管へのワンタッチカプラの採用によるメンテナンス性の改善が図られている。
その他装備
番代区分別概説
0番代
特急「かがやき」で使用されている400系の置き換えを目的に製造した。品川第一車両所に6両編成(W31~36)6本(36両)、3両編成(V31~36)6本(18両)の計54両が在籍する。編成記号は静岡総合車両所所属車がT(ThunderbirdのT)、品川第一車両所所属車がW(White WingのW)となっている。 2001年(平成13年)3月3日ダイヤ改正に向け、全ての「スーパーかがやき」を置き換える形で基本編成4本、付属編成4本を投入した。翌2002年には30000・50000系の運用に余裕を持たせる目的で基本・付属編成を2本ずつ追加導入した。
主要諸元
編成 | 3両・6両 |
編成定員 | 536名(9両編成時) |
編成重量 | 347.3t(9両編成時) |
出力 | 245kW / 基(WMT105) |
2000番代
「しらさぎ」用編成
池袋・新宿方面から浜松・名古屋を結ぶ特急「しらさぎ」の新設に当たって製造された。5両編成(基本編成、S01~12)12本60両、3両編成(付属編成、S21~29)9本27両の計87両が静岡総合車両所に在籍する。編成記号はS(ShirasagiのS)。
車体側面には「SHIRASAGI」のエンブレムを配している。投入当初は「サンダーバード」での使用計画もあったことからエンブレムの上部に小さく「Shirasagi Thunderbird」と表記したが、実際には基本編成の両数の問題から「サンダーバード」としては使用されず、「しらさぎ」としての運用のみであったため、2003年10月以降順次消されている。
客室窓の下部の帯は「サンダーバード」用T編成のブルー一色と異なり上側をブルー、下側を・オレンジとし「サンダーバード」用のものより若干帯が太い。オレンジの帯について東名首都圏電気鉄道では、「『サンダーバード』との誤乗を防ぐために入れた」「池袋・新宿に直通するイメージを表す」としている。
2015年3月21日のダイヤ改正で静岡~名古屋間の特急「はくつる」が「サンダーバード」に統合される形で廃止され、それに伴って「しらさぎ」が捻出された旧「はくつる」編成の10000・12000系6両編成による運転となったため、同年3月20日限りで運用を離脱した。今後は交流機器を使用停止として形式も27000系に変更した上で、5両編成を6両編成と4両編成に組み替えて特急「澪」や「なのは」で使用されている500系を置き換える予定となっている。
「サンダーバード」増結用編成
2005年(平成17年)に製造された「サンダーバード」増結用編成。3両編成4本(R10~13)計12両が在籍している。編成記号はR(Reserved Train(=団体列車)のR)。増結編成であるため、T編成との整合性を取るためにS編成とは編成の向きを逆にしている。車両番号はS編成からの連番になっている。全車が近畿車輛で製造された。
ドア位置を変更することで、6号車(9号車)東京方と7号車(10号車)静岡方でこれまで不便だった乗降をスムーズにしている。車体側面の帯色はT編成と同一である。
主要諸元
編成両数 | 3両・5両 |
編成定員 | 466名(8両編成時) |
編成重量 | 310.9t(8両編成時) |
出力 | 245kW / 基(WMT105) |
4000番代
2008年1月時点で平均経年32年と、老朽化の進む特急「かがやき」用の400・485系を2011年春ごろまでに置き換えるために投入されたグループ。「サンダーバード」用新型車両として平成23年春までに9両編成12本(108両)が投入されることが発表されている。
8000番代
名阪電気鉄道が保有する。特急「はくつる」の増発のために製造した。2005年3月1日に営業運転を開始した。ノックダウン生産であり、新潟トランシス製(車体は川崎重工製)となっている。基本編成6両(N03編成)、付属編成3両(N13編成)が各1本、計9両が在籍する。
書類上の在籍は名阪電気鉄道であるが、保守整備は10000系と同様に東名首都圏電気鉄道に委託しており、静岡総合車両所で一括して整備している。付属編成の先頭車は0番代、2000番代と同様に貫通構造である。最高速度も0番台、2000番代と同様に160km/hである。フロンガスを使わない冷房装置の採用や、騒音、高周波対策の実施など、環境への配慮もなされている。また、先頭車のヘッドライトがHIDランプに変更されている。
付属編成の乗降扉位置は既存編成との整合性を取るため変更せず、6号車と7号車の間には乗務員用の扉しかない。基本編成の3号車と4号車の間にも乗降扉は設けられておらず、屑物入れと自販機用のスペースになっている。
主要諸元
編成 | 3両・6両 |
編成定員 | 536名(9両編成時) |
編成重量 | 347.3t(9両編成時) |
出力 | 245kW / 基(WMT105) |