戦国BASARA/エロパロ保管庫

官兵衛×鶴姫8

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momo

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 またたく間に、彼を取り巻く気配が怜悧なものへと変異する。
 官兵衛の手が、鶴姫のはだけた着物を戻し、袴の帯を締めた。そして立たせ、転がしていた鎧胴を再び身に
つけさせる。
 そうしてまるで何もなかったかのように全てを整い終え、鶴姫を腕の中から解放した。
「すまぬ。惑わせただけであったな」
「……え?」
 力をまだ失わされていないのだと、その言葉で分かった。
 状況についていけず、鶴姫はぽかんと官兵衛を見上げた。
「戦はこちらに任せ、社に篭もり、備えを固めよ。毛利のことだ、どんな詭計を用いてお主を得ようとしても
おかしくはない」
 冷静な助言が、更に困惑を見舞わせてくる。
「でも」
 軍門に下ると、まだはっきり答えていない。同盟が成ったとは到底言いがたい状況であり、彼の目的はどちらも
達成していない。
 なのに、ここにきて自分を無傷で帰す意味が分からない。
 それを理解した上でなお、鶴姫が降伏を受け入れたと愚かにも思い込んだような物言いに、思わず鶴は問うた。
「どうしてあなたが戦おうとしてるんですか」
「言ったろう。この海をドーン☆と守るのは、小生の役目だ」
 口調を真似て、官兵衛が笑う
 その腕が伸ばされる。華奢な顔の輪郭に沿って、まだ赤い頬を大きな手のひらが一度だけ名残惜しげに包んだ。
「慕う者の命を惜しむのであれば、機に乗じて小生の背を討とうと思うな。その時は容赦できぬ」
 控える家臣へと視線を走らせ、官兵衛の手が鶴姫の背を押す。
「味方の元へ戻してやれ」
「承知。その間に殿はとっとと熱を冷まして下さいよ。良かったですね、幽閉時に鍛えた神速の早漏っぷりが
役立つ時が来て」
「小生、本当に泣くぞ」
 半眼でぼやく官兵衛に減らず口を叩くことを忘れず、少女の身を預けられた家臣は、さっさと甲板へと連れ出した。
 清々しい潮風が、一気に鶴姫の全身を撫でた。身体に燻っていたわずかな熱まで、冷やして消し去っていく。
 周りを見回す。
 来た時と同じ船とは思えぬ光景が広がっていた。
 先刻まで嵐の後遺症で疲労困憊していたはずの面々が、ある者は弓を、ある者は刀を手に、確かな足取りで
船上に立っている。実戦に明け暮れ、研ぎ澄ませてきた者たちが放つ戦場の空気が、商船に過ぎぬはずのその船を
軍艦へと変質させていた。
 更に、いつの間にか鶴姫たちを島から運んできた船団を取り囲むように、周辺に粛々と軍船が姿を現している。
 その中で、追い詰められた舳先にて、囲む敵兵と睨み合っていた鶴姫の兵士たちが、主君の無事な姿を目にして
声を上げた。
「ご無事でしたか、姫様!」
 解放された彼らが、駆け寄ってくる。
「あ、えっと……うん」
 どう応えていいか分からず、鶴姫は曖昧にうなずいた。
 辱められたことに対しては、不思議なほど辛くなかった。むしろ、結局何も失わずに彼らの元に無事に戻って
来られた不可解さの方が、腑に落ちなさを残す。
 しかしそれをどうすることもできぬ内に、一団は小早へと戻され、追い出されるように帰された。
 離れていく内、官兵衛の船を睨んでいた兵の一人が、己が不甲斐なさを呪うように歯噛みする。
「申し訳ありません、姫様。姫様を守るための我らの命であるのに、一方的な和議を結ばせてしまう道具に使われて
しまうなど……。まさか毛利や長曾我部より先に、あの黒田が現れるとは」
「あの?」
「豊臣秀吉の下にいた武将です。知略に長けた男と有名でしたが、内紛によって九州に追いやられたとか。それきり
死んだとばかり思っておりました」


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