【おっかなびっくり、リオの休日】
第8話)不思議なサンタテレーザ教会のアート階段

《ブラジル旅行記|リオデジャネイロ・セントロ・コパカバーナ・ファベイラ・マラカナァン》

リオツールでもらったガイドブックには、某●球の○き方には書かれていない観光名所がたくさん載っていた。そんな中で気になったのが、サンタテレーザ教会下のアート階段である。ガイドブックによれば215段すべての階段が様々なセラミックのモザイクで埋め尽くされた美しい階段だという。

サンタテレーザ教会のアート階段 -リオ
サンタテレーザ教会のアート階段

これはぜひ行って見なければと思ったが、このサンタテレーザ教会、僕が強盗に襲われたあのカリオカ水道橋の近くにあるのが玉のキズ。ある日、僕は勇気を振り絞って出かけてみることにした。なるべく安全なよう、朝一で出かけた。強盗さんはきっと朝寝坊だろうと勝手に推測して。。。

マニュエルカルネイロ通りを丘の方に向かうとそのアート階段が見つかるはずなのだが、その通りは地図にも載っていない。やっと道の標識でその通りを発見する。あたりに他の通行人が歩いている瞬間を待って、一緒に通りを進む。決して一人にならない。そして、ちらちら後ろを振りかえり、怪しげな影が追いかけてこないか警戒しながら、、、

やがて左手にそのアート階段らしき石畳の階段が見えてきた。僕は近くによってみる。するとそこにボサボサ頭の怪しげな親父が座っていた。浮浪者のようにも見えるし芸術家のようにも見える。いい者か悪い者か、にわかに判断がつきがたい。

 ボサボサ頭:「ここには世界中のセラミックがちりばめられているのじゃ。」
 僕    :「はあ。」

 ボサボサ頭:「おまえさん、ジャパォンからじゃな。」
 僕    :「はい、そうですが。」

 ボサボサ頭:「そうか、ジャパォンのセラミックも2枚あるぞ。ぶつぶつぶつ、、
        オオザカ、、ぶつぶつぶつ、、」

ボサボサ頭が言っていることは僕にはよく分からなかったが、なんとなくこんな会話を交わしていた。ただ、あまり関わるとしつこそうなので僕は足早に階段へ向かった。幸いなことに地元の善良そうな市民も何人か通りかかっているのでそれほど危険ではないようだ。

階段は砕いた様々な色彩のモザイクで美しく埋め尽くされていた。そしてそのモザイクの中心部分には世界の様子が絵タイル画で描かれている。パリ、ロンドン、ニューヨーク。各地の景色を線描したタイルがあるかと思えば、中国の陶磁気の図案画が埋め込まれたものもあり、一段一段上っていくのがとても楽しい。危険といわれるこの地区になんでこんな魅力的な階段を作ってしまうのかよくわからないが、隠れた名所であることは間違いない。なんかちょっと得した気分だ。

ところで、ボサボサ頭の言っていた「ジャパォンの2枚のセラミック」ってどこにあるのだろう。まっいいかそんなの。

階段を7割程上ったあたりで、それまでの芸術的な模様の中に、ひときわ異様な雰囲気を放つ一枚のタイルが目に飛び込んできた。その一枚だけ地の色が真っ黒なのだ。僕はその一枚に近寄った。。。 そして大笑いしてしまった。

そのタイルは黒地に黄色いトラの顔が描かれていた。

  こっ、これは!

   そう!

    阪神タイガースのマークではないか~~。


よく見ると小さく日本語で「阪神タイガース」と書いてある。近くに同じようなタイルがもう一枚あった。ボサボサ頭が「、、オオザカ、、ぶつぶつぶつ、、」と言ったのはこのことだったのかぁ! しかしいったいいつから阪神は日本を代表するアートな存在になったというのか? いったい誰の発案でここに阪神のマークが埋め込まれたのだろうか? 誰かこの謎を解き明かしてもらいたいものだ。

階段の途中には魅力的な路地と繋がっていた。僕は2、3歩そちらに足を踏み入れてみる。すると、「ビー ケアフル!」と英語で地元の青年に呼び止められた。

 青年:「そっちにいっては危ない!この辺はドラッグエリアだ!!」

あ、危なかった。またヤバイことになってしまうところだった。階段をひととおり鑑賞した後、僕は逃げるようにその場を立ち去った。名所を巡るのも楽ではないね。

(続く)


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最終更新:2023年05月04日 22:22