【おっかなびっくり、リオの休日】
第7話)路面電車とセントラルステーション

《ブラジル旅行記|リオデジャネイロ・セントロ・コパカバーナ・ファベイラ・マラカナァン》

リオにはセントロ地区からサンタテレーザの丘に向かって路面電車が残っているという。僕は電車ファンではないが、路面電車は大好きだ。軒先をかすめながらゴトゴトゆっくりと進むので、街中の人々の生活をのぞくのに大変都合がいい。

リオの路面電車
リオの路面電車

しかし、リオのこの電車。少々問題がある。なにせ始発駅が強盗に襲われたあのカリオカ水道橋の近くなのである。またヤツらに会ったらどうしようとビクビクしながら始発駅へ向かった。むろん、危険な土日は避けて出かけた。

近代的なビル群の外れに市電乗り場を見つけた。近づくと構内の外れに大変レトロな木造電車が展示されていた。おそらく創業時の物が展示保存されているのだろう。

「もうすぐ次の電車がくるからそこで待ってろ」と言われベンチに座っていると、まさかっ!という感じで、あの展示保存されていた小さな電車がガガガガッーと音を立てて動きだし、目の前に止まった・・・・何と現役の電車だったのだ!

さらに驚くべきことに、この市電には車体の壁がない!オープンカーというか、遊園地のお猿の電車を大きくしたようなガイコツスタイル!こんな電車がれっきとしたリオ市の交通機関なのである。

観光客をたくさん乗せて、電車はサンタテレーザの丘の狭い路地の坂道をノロノロ歩くように登っていく。オープンカーなので乗り降りが簡単にできる。というか地元のガキどもは走ってる電車に勝手に飛び乗っては降りていく。もちろん無賃乗車である。

路面電車はサンタテレーザの丘を登ってゆく-リオ
路面電車はサンタテレーザの丘を登ってゆく

結局この市電、お金を払って乗っていたのは観光客だけであった。

さて、電車関連でもう一つ気になるものがリオにある。98年のベルリン映画祭グランプリ作品のブラジル映画「セントラルステーション」の舞台になったと中央駅である。

あの映画で主人公の中年女性のノラは中央駅で代筆業を営んでいた。代筆業、すなわち字の書けない人のために手紙を口述筆記してあげる仕事である。

この中央駅もまたあまり治安のよくないところにある。僕は緊張して地下鉄の出口をエスカレーターで上がり駅へ向かった。エスカレーターは中央駅の南口構内に直結していて、予想に反してスムーズに辿りついてしまった。

映画では、たいへん猥雑な雰囲気が漂う中央駅であったが、意外なほど整然としているぞ。というか大変こざっぱりしている。これがあの「セントラルステーション」なのか。

たしか映画では、駅舎は重厚な造りの建築物だったと記憶していたが、実物は増築されていて、外見はただのコンクリート建築で、なんとも味気なく、写真を撮る気も起こらない。実際僕はがっかりした。

せめてノラのような代筆屋がいないかと、僕は捜してみた。しかしもはやそんな家業はどこにも見うけられなかった。「セントラルステーション」の世界はもはや残っていないようだ。

僕は足早に駅の構内を北口から出た。すると、、、何だこの悪臭は!!気付くと目の前の裏山は貧しい家々がびっしり貼りついたファベイラで、警官がガードする駅の入口を境に、北側駅前は貧民街の市場になっていた。

セントラルステーション北口裏に広がるファベイラ(貧民街)-リオ
セントラルステーション北口の裏山に広がるファベイラ(貧民街)

虚ろな目をした人たちが何人もたむろする怪しい雰囲気、、、ノラの時代の猥雑さはしっかり駅の外に息づいていた。。。

(続く)


もどる < 7 > つぎへ




最終更新:2016年08月24日 08:17