【桂林(クイリン)・陽朔(ヤンシュオ)、山と川と田んぼの旅】
第5話)桂林・陽朔 B級グルメ事情
《中国旅行記|桂林|龍脊|陽朔|漓江》
あ中国といえば 世界にその名を轟かす美食大国。地方ごとに独自の名物があり、これを試さない手はない。桂林(クイリン)ならではと思えるモノ(ただしB級グルメ限定)を幾つか試してみたので、その感想を綴ってみる。
◆竹筒飯(チートンファン)
棚田地区で見かけた料理である。 チワン族が営む食堂の前に、炭でいぶされた竹筒が何本も釜戸の前に並べられていた。一体何だろうと近づいてみる。竹筒の表面は真っ黒に焦げてはいるが、ほのかに芳ばしい香りが漂う。
そしてふと脇を見ると「竹筒飯」の文字を発見。そうか! この竹の中で米を炊き込んでいるのだな。これは試してみるしかない。
注文して、席に座ると黒焦げの竹筒がポンと一本テーブルの上に無造作に置かれた。あわわ、こんな竹を丸ごと出されても困る。オイラはパンダじゃないから、このままかじるなんて芸当はできない。
狼狽する僕の後ろからナタを持った原住民ウエイターがやって来た。
ハッー!
とナタで竹筒を一刀両断。割れた竹の中から、ホカホカのおこわ飯が表れた。
角切り中華ハムと炊き込んだ餅米は、竹の風味に包まれ、これには思わず「好吃!!(ハオチー)」と言わざるをえない。
◆鶏翅包飯(チーシパオファン)
街の屋台で不思議なストリートフードを見つけた。看板には「鶏翅包飯(チーシ パオファン)」の文字が。「鶏の羽で包んだご飯」ということであるが、一体何だ、それは??
店先に並んでいるモノは、見た目はどこをどう見ても手羽先の炙り焼きである。この肉の中に米が詰め込まれていると言うのか? だとしたらとてつもない技法じゃないか!! じゃ、さっそくトライだ。一口ガブッとしてみると、あれれ、これは鶏の皮で巻かれたおにぎりかな?
鶏翅包飯(チーシパオファン)…ニセの鶏皮でご飯を手羽先状に包んだ炙り焼き
口のなかを支配しているのは肉の食感ではなく、米のそれである。鶏肉はコマ切れとなって、米のなかにほんの少しだけ存在を主張している。見た目はモロ手羽先なのにナゼ? と疑問は消えない。
そうか、わかった!この鶏皮はフェイクだ。
おそらく湯葉か何かで似せたのであろう。ニセの鶏皮でご飯と鶏肉を包んで、手羽先状に整形して炙り焼きにしていたのだ。
何とも手の凝ったものだが、そんなものまで屋台で楽しめてしまうところに、4000年の人民の歴史の深さを感じてしまうのであった。
◆烤榴蓮(カオ リウリェン)
桂林(クイリン)周辺は、意外にも南国風情が漂う地域であった。マンゴー、パイナップル、パパイヤなどを売る屋台が街中に立ち並ぶ様は、さながら東南アジアのようである。
その中で不思議な屋台を見つけた。売っているのはドリアンであるが、それもただ単に切り売りしているという訳ではない。
ドリアンの身を取り出しアルミホイルに包んで売っているのだ。そしてよく見ると、炭火をくべた七輪の上にそのホイル包のドリアンが並べられている。
えっ!! まさか!! 焼いているのか? あのドリアンを!!
だが、真実はそのまさかであった。屋台の看板には堂々と「烤榴蓮(カオ リウリェン)」と書かれていた。「烤(カオ)=焼く・炙る」+「榴蓮(リウリェン)=ドリアン」=まさしく「焼きドリアン」だ!!
そしてご丁寧にも「甜過 初恋的 (初恋の甘さ)」とキャッチコピーまで添えてあったからカルピス株式会社もびっくり。
それにしてもドリアンを焼くといったいどんな味がするのだ。もう僕の好奇心のバロメーターは抑えきれない。25元(¥約425)と屋台にしては相当高めの金額を払って、アルミホイールの縁を広げると、このフルーツ独特の異臭ともとれる匂いが鼻を刺激する。
そして恐る恐るホイルを開けると、中に入っていたのは、生であったときと比べたら10分の1に縮小したであろう、だだ白濁色のドロドロの物体であった。それをスプーンですくって食べる。するとあの濃厚な納豆味のクリームとでも形容すべき味覚が舌にまとわりつく。
が、体積が10分の1に縮んでしまったため、あっという間に食べきってしまう。ううん、期待が大きかった分、残念な結果に終わってしまったなぁ。ん、待てよ。期待の割りに結果は残念って、それって初恋と一緒じゃん。
「甜過 初恋的 (初恋の甘さ)」のコピー、言いえて妙である。
最終更新:2017年05月28日 20:03