【バルカン三国縦断記】
第8話)1日に3度も国境を越えるわけ

《バルカン三国旅行記|セルビア|ボスニア・ヘルツェゴビナ|クロアチア|》

ボスニアのモスタルから今度は隣国クロアチアのドゥブロヴニクに向かう。

バスは一時間程で国境に到着。セルビアとボスニアの出入国と同じく、ボスニア=クロアチア国境も乗客全員のパスポートを運転手がまとめて係員に提出するだけで、一人一人の照合は一切なし。

一体どんなチェックをしているというのか。せいぜい客の人数とパスポートの冊数が合っているかぐらいしか確認のしようがないだろう。

そんなユルユルのチェックだから、ボスニア入国時に押された日付が識別できないスタンプでも、あっさりと出国できてしまった。

内陸のボスニアから海辺に近いクロアチア領に入ると、一気に太陽の光が増えてきた。アドリア海の明るい空気が漂っているのを感じる。そして車窓を流れる風景は、ボスニアでは至る所で見かけたイスラムの尖塔を一切見かけなくなり、十字架の目立つキリスト教世界に染まっていった。

バルカン三国旅行記|クロアチアの海
クロアチアの海

やがて海が見えてきた。それにしてもクロアチアの地図を見ているとえげつない地形だなぁと感じてしまう。アドリア海沿いの海岸線に沿ったオイしいところだけを自国の領土としているのだ。

バスは海岸線に沿って東に進んで行く。しばらく走ると料金所が現れた。運転手は速度を緩め、乗客に告げた。

  「ボスニアだ、パスポートを出して」

えっ、なぜパスポート? えっ、何でまたボスニア?  戻ってどうする<

そうではなかった、ボスニアにも意地がある。わずか10キロほどではあるがアドリア海沿いの海岸の一部はボスニア領となっていた。そして地図をよく見てみると、ドゥブロヴニクは、ボスニア領で分断されたクロアチアの飛び地となっていた。つまり一旦ボスニア領を通過し、再びクロアチア領に入国するのだ。

バルカン三国旅行記
またボスニア領に入る

結局1日で3回国境を越えることになる。なんでこんな効率の悪い道をバスのルートにするのか理解に苦しむ。適切に道を選べば、モスタルからドゥブロヴニクまでの国境越えは一回で済むはずなのに、、、

バルカン三国旅行記
ボスニアのモスタルからクロアチアのドゥブロヴニクまで、3回国境を超える

バスは、ボスニア領内にあるリゾートホテルの駐車場に止まった。時刻はそろそろお昼どき。ここで少し長めのトイレ休憩となる。バスの運転手はカフェテリアでランチをとるようだ。

  ん、待てよ。ここはボスニア領だ。余ったボスニア・マルカが使えるじゃん!!

当たり前のことに気付いて、僕は少し興奮した。面倒なボスニア再入国ではあるが、ボスニアは物価が安いのだ。 ん、物価が安い?

   あ、そうか! 解った!

僕は突如、なぜバスが1日に3度も国境を越える面倒なルートを選んだのか、その謎が解った。

それはバスの運転手が物価の安いボスニアでランチを取りたかったからだ。このルートを取れば、丁度昼どきボスニア領に入る。そこでランチを済ませば安上がりというわけだ。

 つまり昼食手当がわり。

1日に3度も国境を越えるにはそれなりのわけがあったのだった。

(続く)


もどる < 8 > つぎへ


海外格安航空券 ※最高10000ポイントですよ!


最終更新:2016年11月06日 08:34