【バルカン三国縦断記】
第7話)世界遺産の橋からダイプ

《バルカン三国旅行記|セルビア|ボスニア・ヘルツェゴビナ|クロアチア|》

サラエヴォからバスで約4時間、昼過ぎにボスニア南部の街モスタルに到着した。この街は世界遺産である古い石造りの橋スターリ・モストで有名だ。

16世紀に建造されたその橋は、ネレトヴァ川を挟んで東側がイスラム教徒、西側がキリスト教徒の居住区となっているモスタルの街を繋いでいた。ボスニア紛争で破壊されてしまったが、復元され、再び2つの文化を繋ぎ始めると、また世界中から観光客が集まるようになった。

バルカン三国旅行記|世界遺産の橋スターリ・モスト
世界遺産の橋スターリ・モスト

高さ22メートルを誇る美しいアーチ状の橋は、夏場になると地元の若者たちがその勇気を示す証として、川に向かって飛び込むことでも知られている。

 おやおや、なんだあの人だかりは。

世界遺産の橋の下流から近づいて行くと、橋の上に大勢の人々が立ち止まっているのが確認できた。そして河原でもたくさんの人々が橋の上の方を注視している。そう、まさに今1人の若者がネレトヴァ川に向かってダイブしようとしていたのだった。

バルカン三国旅行記|若者がネレトヴァ川に向かってダイブしようとしていた
若者がネレトヴァ川に向かってダイブしようとしていた

だが22メートルという高さはビルの7~8階に相当する高さだ。生身の人間がそう簡単に飛び込める高さではない。阪神ファンが道頓堀川に飛び込むのとは全く次元が違うのだ。

挑戦者は橋の手すりをしっかりと握りしめ心を整える。恐怖心と戦いながら着地点である川面を見つめ、そして覚悟を決め、いざジャンプ、と思いきや、まだ心の準備が整わないのか、強く手すりを握りしめる。

いつ飛び込むのかと、群衆は固唾を呑んで見守っていた。

こんな決定的な場面はない、僕は慌てて河原に向かって走りだした。そしてスマホのカメラを起動させ、被写体に焦点を合わせたその時であった。

  「俺は彼のマネージャーだ。写真を撮るなら金を払え」

と、怪しげな男が声をかけてきた。マネージャー!! マネージャーならなぜ今、決死のダイビングに挑む戦士のそばにいない!! そもそも、こんな河原で見物客のようなラフな格好したマネージャーなんているものか。

うざい自称マネジャーの攻撃をかわすため、とっさに僕は「金はダイブした後に払う」と返答した。


と、僕が金を払うと言った声が橋の上の男に届いたのだろうか。ついに男はダイブした。

晴れ渡たる青空のもと、石造りの美しいアーチ橋から男は一気に川へと飛び込んでいった。そして約2秒間ではあるが、迫力あるダイプ映像をバッチリとスマホのビデオに収めることに成功した。

ついに男はダイブした

すると、例のマネージャーがノコノコ現れた。

  「1マルカ(¥61.7)だよ」

いかにも偽マネージャーの小遣い稼ぎにふさわしい少額の要求に思わず吹き出してしまった。

そして勇敢なダイビングを見届けた後、改めて橋の上を渡ってみた。ガイドブックによると観光客でも地元のダイビング協会に金を払うと、橋の上からのダイビングに挑戦できるというのだが、、、

僕は橋の上からそっと下の川面をのぞいた。

 怖すぎ!

思わず足がすくんで動けない。

オイラは嫌だ。こんな所から飛び込むのは。まったく金を払って飛び込むヤツの気が知れない。いやお金を貰ったって嫌だ、こんな怖いこと!!   

  んっ、

ここでフト僕は妙な事を思い知った。世界中でバンジージャンプに挑戦する(させられる?)お笑いタレント・IモトAヤコ。---あの女、めちゃくちゃに偉大じゃん!!

(続く)


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最終更新:2016年11月18日 00:13