【海あり山ありエアコンなし-南インド・ケララの旅】
第2話)HOTELはレストラン?

《南インド ケララ 旅行記|トリヴァンドラム|アレッピー|クミリー・テッカディ|コーチン》

経由地のコロンボを出発したスリランカ航空便は、南インドの玄関口トリヴァンドラム空港への着陸体制に入った。乗客のほとんどは浅黒い顔立ちのインド人だ。

近年インドの地名は植民地時代の呼び名から現地語読みに変わってきている。ボンベイ→ムンバイ、マドラス→チェンナイなどの名称変更はすっかり定着した。トリヴァンドラムも現地名「Thiruvananthapuram」と呼ばれることになったのだが、果たしてこれ一体なんて読むのだ!

 「アテンションプリーズ。当機は間もなく、ティル、ティル…?? トゥル? ??」

着陸案内の機内アナウンスを始めたスッチーだったが「Thiruvananthapuram」の地名が読めず、機内は思わずインド人乗客爆笑の渦が巻き起こった。スッチーにも読めない地名があるのだ。

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ホテルに荷を下ろすと、早速トリヴァンドラム街中の散策に出かける。インドと言えばヒンズー教というイメージが強いが、ここ南インドのケララ州はちょっと様子が違う。ヒンズー寺院の他に、キリスト教会やイスラムのモスクも数多く点在するのは意外であった。

南インド・ケララ 旅行記|南インドでは様々な宗教が信仰され、共存している
南インドでは様々な宗教が信仰され、共存している

そしてもう一つ意外なのが、やたらとHOTELの数が大いことだ。それこそ食堂の数くらいHOTELの看板を掲げた店が多い。ケララ州はこの国一番の観光地ではあるが、それを差し引いてもHOTELの看板の数は尋常ではない。お前の店どう見てもただの大衆食堂だろ!どこに宿泊施設があるのだ?という面構えの店ですら、堂々とHOTELと名乗っている。これは一体どういう訳だ。

RESTAURANTと登録するよりHOTELと登録した方が事業税が安くなったりするとか、何かカラクリがあるのだろうか?

南インド・ケララ 旅行記|どう見てもただの大衆食堂だろ!という店がHOTELの看板を掲げている
どう見てもただの大衆食堂だろ!という店がHOTELの看板を掲げている

ことの真相は明らかでないが、ともかく南インドではHOTELと名のつくレストランで溢れかえっていた。

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では、そのHOTELと冠した食堂で本場のインド料理をいただくこととしよう。

近年日本ではちょっとした南インド料理のブームである。インド料理店が乱立し差別化をはかるためかもしないが、東インド料理や西インド料理をアピールする店は存在しないのに、なぜか南インド料理だけが独立してその存在感を示している。その本番の南インド料理とはどんなものであるのか?興味津々で僕は一軒のHOTELの門をくぐり、まずは人々の食事の様子を観察してみた。

南インド・ケララ 旅行記|現地の人々は、ともかくまずイドゥリやチャパティを細かく手でちぎる。
現地の人々は、ともかくまずイドゥリやチャパティを細かく手でちぎる。

インド料理といえば思い浮かぶのはナンであるが、南インドでナンを見かけることはほとんどない。イドゥリ(米粉で作ったパンケーキ)やチャパティ(小麦粉をこねてそのまま焼いたパン)にカレーをかけて、手掴みで食すのが南インドスタイルだ。

で、現地の人々は、ともかくまずイドゥリやチャパティを細かく手でちぎる。もちろん使うのは右手一本だ。

そんなに細かくしたら、イドゥリやチャパティそれぞれが持つ食感などなくなってしまうではないかと思うのだが、ともかく最初に細かく細かくしてしまう。そしてそのちぎった炭水化物の残骸にカレーをかけ、まるで建設現場でセンメントをこねるがごとく混ぜ合わせ、ドロドロの生コンクリート状態にしたモノを口に運ぶ。

なぜそんな食べ方をする。細かくちぎらず、それぞれの食材の食感や風味を大事にしてはどうかね、インドの諸君よ、と少し高飛車な気持ちになって手掴みの食事に挑戦した。

 熱ッチッチ、熱いぃ!!

カレーのかかったチャパティをちぎろうとして、僕は思わず声をあげてしまった。

素手でちぎろうとするとカレーが熱くてちぎれない。だから現地の人は先にチャパティをぐちゃぐちゃにちぎって、食べやすい大きさにしてから、熱いカレーをかける。

人々の食事作法には、理にかなったワケがあったのだが、そのワケは身をもって実践してみないと分からないものであった。

(続く)


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最終更新:2016年08月24日 10:55