【壱岐→対馬→釜山=島伝い国境越えの旅】
第3話)対馬、それは日本代表。
《壱岐・対馬・釜山
旅行記|郷ノ浦|勝本|厳原|日田勝|影島・ヨンド》
壱岐・芦辺港から僅か一時間、 高速ジェット船は対馬・厳原(イヅハラ)港に入港した。港近くの宿に荷を下ろし、自転車を借りる。あれれ、この自転車、カギがないじやないか。
「ああ、ここじゃ自転車を盗むような者はいないから大丈夫だよ。」
と係のおじさん。なんとも平和な空気が漂って嬉しい限りだ。
自転車に乗って街中を流す。厳原には石造りの防火壁が街中のあちこちに残り、優雅な風情をかもしだしている。その昔、外敵から大和の国を守る最前線だった対馬藩の城下町としての名残が随所に感じられる。
その一方、今は韓国からの観光客が急増しており、街にはハングル文字も溢れている。バスのアナウンスからスーパーの棚の表記まで日韓バイリンガルなのには驚いた。朝鮮半島との繋がりが希薄に感じられた壱岐とは大違いである。
「うわわ、何だこの巨大な店は」
突如目の前に現れた ド派手な店に僕は驚愕した。元はパチンコ店であったことが容易に想像できるその建物は、改装されて免税店となっていた。試しに中に入ろうとすると、「ココ、ガイコクジン ダケデス。」と韓国人従業員に入店を断られてしまった。
実際、街中を歩いている人を観察してると、グループで行動しているのはほとんど韓国人観光客であった。
ほんの少し街中を回っただけではあるが、この街の経済が韓国からの観光客に支えられていることが手に取るように分かる。
街で一番大きなショッピングセンターの2階は日本観光物産館となっていた。入ってみると、対馬の特産ばかりでなく、北海道から九州まで、日本全国の土産品が並んでいる。なんで対馬の観光物産が北海道なのか? 対馬に来たなら、対馬ならではの土産物が欲しくなるのではないかと思ったが、そうでないことに気がついた。
日本人は対馬に対馬らしさを求める。だが、この島のメインターゲットである韓国人にとって、対馬は日本なのだ。彼らが求めているのは対馬らしさではなく、日本らしさ。つまり対馬は日本代表なわけだ。だから京都土産や東京名物がここで売られていたとしても、それはみな本場日本のプロダクツとして全く違和感なく受け入れられる。
そして、その日本観光物産館、日本各地の土産物に加え、意外なものが棚に並べられていた。それはなんとHウス食品のカレールー。
確かにカレーは日本の国民食ともいえるポピュラーな存在なのだから、日本観光物産館に陳列されていたとしても、なんら不思議はない。 対馬は正しく素顔のままの日本代表商品をそろえているのであった。
最終更新:2016年08月24日 19:08