【壱岐→対馬→釜山=島伝い国境越えの旅】
第2話)勝本の朝市

《壱岐・対馬・釜山 旅行記|郷ノ浦|勝本|厳原|日田勝|影島・ヨンド》

郷ノ浦で一泊し、昼から対馬に渡る予定をたてた。対馬行きの高速ジェット船は壱岐の東にある芦辺港から出港する。だがその芦辺港へは直行せず、島の北西にある勝本集落に立ち寄ってから行くことにした。

勝本には古くから伝わる朝市が今も続いている。島の公共交通を一手に引き受ける壱岐交通のバス時刻表を調べると、うまい具合に、①バス:郷ノ浦→勝本、②勝本朝市を小一時間ほど散策、③バス:勝本→芦辺港、④対馬行き高速船に乗船、とスケジュールが組めることが分かった。

勝本行きバスの乗客は、僕の他に観光客の老夫婦1組のみ。たった3人の乗客を乗せてバスは海岸沿いの島道を北上する。すると、

 「お客さん、あちらに見えるのは真珠の養殖筏ですよ。」

と、バス運転手が観光案内のアナウンスを始め出した。

壱岐・対馬・釜山 旅行記|壱岐交通のバス
壱岐交通のバス、運転手が観光案内のアナウンス?

「私はこの間まで観光タクシー部門で働いていたのですが、定期バスに異動になっちゃったんですけど、いついつ観光案内したくなっちゃうんですよねぇ。」

おお、観光タクシードライバーだったDNAはどっこいバス運転手となっても生きていた。

「本当は定期バスで観光案内しちゃいけないんですけどね。今日は地元のお客さんいないから特別です。」

しばしタダで道中のガイドを楽しませてもらったが、やがてとある停留所から、地元のお婆ちゃんが一人乗り込んできた。すると運転手はピタッとお喋りを遮り、何事もなかったかのように単なるバスドライバーに戻ってしまった。

何やら知らんが、規制で定期バスの運転手は余計なことを喋ってはいけないと言うことになってるのだろうか。観光立国を目指すなら、もう少しフレキシビリティがあってもいいんじゃないっすか、国のエライ人の皆さん!!

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勝本集落は、風情ある景観が残る趣のある集落だった。朝市の規模もさほど大きくはないが、地元民の社交場となっており、ほのぼのとした暮しを垣間見ることができる。

壱岐・対馬・釜山 旅行記|勝本の朝市
勝本の朝市は地元民との社交場

漁協に併設された観光案内書でパンフレットをもらうと、その昔朝鮮半島からの使者を迎えた朝鮮通信使接待所の跡があるとのこと。

で、そのあたりを目指し散策するも、それらしきモノが見当たらない。地元の人にパンフレット片手に聞いてみると、

 「どこだろう? ああ、あそこだよ。」

と教えてもらったところは、どう見てもただの小屋にしか見えない。ほんとに通信使接待所なんてあるのか、いやもうそろそろ芦辺港行きのバスに乗らないといけない。今回は見つからなかったけどまぁいいか、と思ったその瞬間、目の前にとある小さな公民館が現れた。

 あれれ、これパンフレットに載ってた建物と一緒じゃん。

壱岐・対馬・釜山 旅行記|朝鮮通信使接待所跡
今は公民館として一部が残る朝鮮通信使接待所跡

その昔、外国からの使者を迎えた施設は、今はただ公民館となって、地元の人ですらその栄光の過去を知られることなくひっそりと佇んでいた。

ここ壱岐で、朝鮮半島との繋がりは遠い遠い昔物語であるかのようだった。

(続く)


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最終更新:2016年08月24日 19:06