【お気楽ウズベキスタン旅行】
第4話)日本語を勉強するわけ
《ウズベキスタン旅行記|タシケント|サマルカンド|シャフリサーブス》
サマルカンドは大変居心地がよろしい。ここを拠点に近郊のシャフリサーブスやウルグット市場にも日帰りで行ける。一度一箇所に腰を落ち着けると短い旅行期間では他のところに移動するのがかったるくなる。まして今回は5月3日にここサマルカンドでS木さんやU飼ちんと集合ということになっていたので、結局4連泊してしまった。
仲間と落ち合う前日の5月2日、僕は旧市街の東にあるアミール廟を訪れた後、なんとな~く新市街の方へと歩みを進めた。大通りを渡るとなにやら大勢の若者が集まる建物の一角があった。そして若者の一人が恐ろしく正確な日本語で声をかけてきた。
「日本の方ですか?」
「そうですが、随分日本語が上手ですね」
「私たちは学生で日本語を勉強しています。今日は日本の方との交流会があります。
ぜひあなたも参加してください。」
「???」
なんだかよく分からないけど、ともかく建物の中に入ってみる。なんのことはない、そこはサマルカンド外語大学であった。
ホールに通されると既に50人ほどの学生たちが集まっていて、演壇には10脚ほどのイスが学生たちの方に向かって設置されている。
「もうすぐ日本の方があそこに座られます。ほら来ましたよ」
見るとツアーの旗を掲げた添乗員にくっついて日本人ご一行様が現れた。うむむ。 待てよ、あの人たち見たことある気がする。あ、同じ飛行機に乗っていた○遊ツアーの人たちじゃないか。向こうは向こうで、「なんで学生側の席にお前がいるの?」といぶかしげな顔をしていたが、まあそんなことはどうでもよい。ようするにこの大学では旅行会社とタイアップして、学生にナマの日本語体験機会を提供していたということだ。
交流会の仕組みはこうだ。まず5人ほどの学生が一人5分程度のスピーチを日本語で行う。一人のスピーチが終わると日本人旅行者たちが質問。質疑応答が始まるというスタイルだ。ウズベキスタンの医療事情、サマルカンド伝統のお茶の入れ方、などなど学生たちはそれぞれのテーマを見事な日本語で披露する。さすがに1・2 年生はまだスピーチをする程のレベルには達していないが、3・4年生になると、日本人の質問をその場で1・2年生のためにウズベク語に訳したりしているのだから驚きである。
それにしてもたった3~4年で外国語がそんなに身に付いてしまうものなのだろうか?僕は思わず質問してしまった。
「皆さんは大学に入る前に日本語を習ったことはありますか?」
「いえ、ありません。」
「では日本語学科に入ってからそんなに日本語を身につけたのですね。」
「いえ日本語学科ではありません。私たちは英語学科の学生です。日本語は
第二外国語です。」
えっ、第二外国語!それでこんなに身についてしまうのかいな。おいらも学生時代に第二外国語とやらをたしなんだはずだが、習得具合といったら、彼らの100分の1にも及ばない。どーして人間の知能指数にそんなに開きがあるかいな。
僕やツアーの皆さんはしきりに関心するばかり。そしてツアーの一人が質問した。
「なぜ皆さんは日本語を勉強しようと思ったのですか?」
落ちぶれたとはいえわが国は世界第二位の経済大国である。優れた技術立国でもある。そういう進んだ面を学びたいといったことなのだろうと僕は思った。すると一人の女子学生が答えた。
「はい、私は日本の漫画が好きだからです。なかでもセーラームーンが大好きです 。」
セーラームーンだと! 彼らの熱い勉学に対するモチベーションがそんなところにあったとは、講談社「なかよし」の編集者も作者・武内直子も夢にも思わなかったに違いない!
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最終更新:2016年08月27日 09:33