【イラン、ここは本当に悪の枢軸国?】
第5話)イランのネーちゃんとランデブー?

《イラン旅行記|ゴム|マライヤ|エスファハーン|テヘラン》

エスファハーン2日めの朝、ホテルで朝食を済ますと一旦部屋に戻って用をたしてた。すると、トントンと部屋の扉をノックする音。ちょっと待って!僕はあわててパンツを履いて扉を開ける。

 「どなたですか?」

すると扉の前には黒いチャドルを被った若いネーちゃんが立っているではないか!いったい何の用だろう。まあ夜ではないので、そういうお誘いでないのは解るが、戒律の厳しいイランで、僕はまだ一度もイラン女性と話したことがなかった。向こうからやってくるなんて異例中の異例だ?

 「あなたは日本人ですね」

すると、これまた見事な日本語で返事がきたので2度びっくり。

 「私はMと申します。日本に4年住んでいました。今里帰りしているのですが、
 日本語を忘れたくないので今日ガイドさせてください。」

おお、なんとも都合のいい話が飛び込んできた。というか都合が良過ぎてなにか裏がありそうな気がしないでもないが、ま、いいか、などと考えるより早く「お願いします」と答えていた。

昨日エマーム広場に行ったので、今日は昼過ぎまでザーヤンデ川の方を案内してもらうことにした。ザーヤンデ川の高原の水は澄んでいる。そこにはクラシカルなアーチ橋が4つほど架かっており、それぞれの橋がそれぞれに赴きのあるデザインで大変美しい。

 「イランではどちらに行かれましたか?」

川沿いを歩きながらMさんが尋ねる。

 「エスファハーンの後はテヘランに戻って、それから帰国するのだけど?」
 「え、シーラーズには行かないのですか?カスピ海にも?」

 「駆け足の旅行は好きではないのです。」
 「もったいないわ。イランは海もきれいなのよ。海水浴だってできるのよ。」

イランで海水浴とは意外であった。

 「でも女性は海水浴できないでしょう。あなたみたいに顔を隠さなきゃいけないから、
 水着なんてもっての他じゃないですか!」
 「そんなことないのよ。ビーチは男女別にあるから。」

なんとイランのビーチは男湯女湯ならぬ、男浜女浜に分かれているのだという。

 「私このベール嫌い。本等はこんなの外していたいのよ。ほら周りにカップルいっぱい
 いるでしょ。」

なるほど川沿いの遊歩道はカップルだらけだった。

 「女性はみんな外したいと思ってるの。でも今の政府は宗教に寄りすぎでダメ。革命前は
 ビーチだって男女一緒だったんだから」

と彼女はため息をついた。海外経験で外国の自由な空気を知ってしまった彼女に、祖国は相当窮屈に感じられるようだ。

 「じゃあそろそろランチにしませんか?友達も呼ぶのでみんなで食べましょう?」
 「いいですよ。友達って誰ですか?」
 「パソコンスクールの先生です。」

パ、パソコンスクール!!そんなものまであるのか。ともかくそこへ行くことになった。

パソコンスクールは昨日訪れたエマーム広場脇の雑居ビルの最上階にあった。「ウエルカム!」とパソコンスクールの若い2人の先生は僕を歓迎してくれた。パソコンはたった2台しかないが、彼らは得意げにパソコンのスペックを自慢する。

 「日本人か。そうか、実はなエンリケのビデオがあるんだ。ネットでダウンロードしたんだ。」
 「エンリケ?」
 「そうさ、エンリケさ。日本人はエンリケが大好きだろう。」

なんだエンリケって。まあいい。彼らご自慢のビデオを見せてもらおう。パソコンソフトを立ち上げると東洋人歌手が大観衆の前でまさにステージにあがろうとしていた。さあエンリケなる大歌手の歌が始まるぞ。でもいったい誰だ、こいつは。

すると字幕スーパーが流れ出した。ありゃりゃ全部漢字じゃん。歌だって、これ中国語だろう。どうやらこれは香港あたりのエンリケ某なるアイドル歌手に違いない。

 「エンリケって香港人じゃないの?」
 「え、そうなの。俺たちエンリケってずーと日本のスターだと思っていた。なーんだあはは。」

まあ日本人だって大学出ててもイランとイラクの区別がわからない輩はいっぱいいる。彼らが日本人と香港人が区別できなくても責められまい。

パソコンスクールを後にしてエマーム広場にあるトラディショナルなイラン料理屋でランチを楽しんだ。エマーム広場は昨日一日いたというのに、このレストランは英語の案内が出てなかったせいか、昨日はまったく気がつかなかったが、とてもいい雰囲気の店だ。

ともかくイランに来て以来会う人会う人いい人たちばかり。イラン人がこんなにピースフルな人たちだったとは予想外だった。

(続く)


もどる < 5 > つぎへ


海外格安航空券 ※最高10000ポイントですよ!


最終更新:2016年08月27日 10:11