日比谷が学芸大附属高校を東大京大で抜かした衝撃 (東京学芸大学附属高校と日比谷高校の2010年度合格実績)

  

高校受験界に大衝撃東大・京大現役合格率2010

 

 日比谷高校学芸大附属高校を抜かし共学トップに

 学校改革が大成功で日比谷の躍進止まらず 高校受験の都内共学最難関校は日比谷高校へ(2010年3月 都立高校への道広報部)


 2010年度の各高校の大学入試結果が受験関係者や高校関係者に衝撃を与えています。日比谷高校が歴史的とも言える大復活を成し遂げ、東京大学・京都大学の合格者数を激増させたからです(合計44名)。いっぽう、同じ都内の共学校である東京学芸大学附属高校(世田谷区)の東京大学、京都大学合格者は過去最悪の数字を記録し、ついに日比谷高校の東大・京大の現役合格率が東京学芸大学附属高校を追い抜きました。

  

40年前の水準にまで奇跡的な大復活 学力トップ層にとって日比谷が魅力に

 小林秀雄、夏目漱石、谷崎潤一郎、横山大観、尾崎紅葉、幸田露伴、利根川進、丸山眞男…日比谷高校出身の膨大な著名人の中のほんの一部を挙げるだけで、現代日本を創り上げた偉人の多さにため息すら出てしまいます。「日本近現代史の縮図」とも言える日比谷高校は、1878年に東京府立第一中学校として創立した日本最高峰のエリート校です。しかし、圧倒的な日比谷の実績に、左翼系の人々から批判が高まり、「日比谷つぶし」と呼ばれた学校群制度が導入され、大きな低迷を余儀なくされていました。「平等」を目的に導入した制度によって、お金持ちしの子供しか難関大学に合格できない事態になってしまったのです。

 しかし、学区撤廃以後、真の意味で魅力ある進学校を目指して校内改革を進めていった結果、日比谷高校は奇跡的と言える躍進を続け、ついに40年前の水準にまで復活を果たしました。

 

面倒見良い学習指導で入学後飛躍的な学力向上 下位層でも早慶合格の底力

 日比谷高校の大復活の秘密は何でしょうか。日比谷を支える最大の力が教師陣の充実です。進学指導重点校は教員公募制によって各校が私学顔負けに独自の教員採用をおこなっていますが、日比谷高校は全都から最高レベルの教師を選抜して採用しています。日比谷で教えることを熱望する、大学での授業を兼任するほどのスーパー先生が集まっているのです。

 日比谷高校の面倒見の良さは有名です。東京の私立や国立の進学校の生徒だと、高1から大部分が予備校に通いますが、日比谷高校の場合は、「学校の授業と講習・補習で東大レベルは十分。」(日比谷の生徒談)というほど授業や校内講習が充実していますから、早期からの予備校通いが非常に少ないのです。

  日比谷高校から東京大学に現役合格したある女子生徒に話を聞きました。彼女は高校2年生まで塾に通わず、高校3年生の夏限定で「苦手な生物だけ」を塾で単科受講し、あとは全て学校の授業と講習で合格したといいます。日比谷高校の先生に添削依頼した際は、「どんなに大量の添削を依頼しても引き受けてくださり、翌日には真っ赤になるほど添削された答案が返ってきました。」

 驚きは日比谷高校の下位層の進学力で、通常、どの進学校でもトップ層は東大に合格しても、下位層はmarch(明治大・青山大・立教大・中央大・法政大)合格すら厳しく、落ちこぼれが相当数出てきてしまうものですが、日比谷高校は下位でも大部分が早慶上智大や国公立大学に現役合格しています。日比谷高校は、いわゆる「落ちこぼれ」が極めて少ないということになります。

 

筑駒、開成蹴り日比谷進学組が急増中 来年は学芸から日比谷に最難関が変わる

 こうした日比谷高校の完全復活は、高校受験での中学生の志望校選択に大きな影響を与えています。今年度入試だけで相当数の受験生が、筑波大学附属駒場高校や開成高校、東京学芸大学附属高校などを蹴って日比谷高校に進学したのです。

 来年度入試では、日比谷高校が東京学芸大学附属高校を東大・京大現役合格率で超えたため、学力トップ層の日比谷高校人気が過熱することが予想されます。入試難易度も逆転しそうです。つまり、日比谷高校が共学最難関高校に復活するということです。

 既に、日比谷高校第一志望の受験生の平均併願先は、早稲田高等学院、早稲田実業、慶應義塾、慶應志木、慶應義塾女子高校、海城高校、渋谷幕張高校などかなりレベルが高くなっています。前述の通り、日比谷高校は学年下位層でも大学受験で早稲田大や慶応大に現役合格していますから、早慶附属は日比谷の第二志望化しつつあるのです。

 

将来は日比谷高校から東大80名超えも 学芸大附属高校は日比谷の併願校化へ

 日比谷高校の入学者平均偏差値は年々上がり、学芸大附属高校の中学入試と高校入試は低迷しているため、2010年の日比谷の大躍進と学芸大学附属の低迷を3年前に予想している受験関係者も実は何人かいました。3~4年前から既に「将来を見据えるなら、学芸大附属より日比谷が良い」というのが一部の塾では言われていたのです(もっとも、3~4年前の合格実績からすれば、日比谷と学芸大附属が逆転するなんて想像すらしてなかった人が大半でしょうが…)。

 特に今年は、東京学芸大学附属高校が第二志望で日比谷高校が第一志望という受験生が非常に多く見られました。その証拠に、2010年度の学芸大附属の高校入試では、神奈川県に拠点を置く某大手塾の生徒だけで、募集人数の約5割を占めるという状況が起きてしまいました。東京在住の学力トップ層は学芸大附属より日比谷を第一志望に選んだ結果、東京都出身の合格者が激減し神奈川出身の合格者が激増。学芸大附属は「神奈川の高校化」してしまったのです。

 東京学芸大学附属高校は今後大変苦しくなってくるでしょう。というのも、もともと学芸大附属高校は「国立」ですから、教育実習生の授業練習や授業研究のための実験校・研究校です。進学校としての体制が皆無であって、浪人率が非常に高く、予備校に頼らざるを得ないにもかかわらず、学芸大附属がそれなりの進学校としていられたのは、都立高校に学校群制度が導入されたことによって、志望する都立高校に入学することができなくなり、やむを得ず回避した層が学芸大附属に流れたからです。日比谷が復活し、学芸と合格実績で逆転した今、あえて学芸大附属を選ぶ理由がなくなってきたといえます。

 さらに、最近の高校受験生の傾向として、中高一貫校の高校入学よりも、附属中学を持たない全員一斉スタートの学校という志向があります。学芸大学附属高校は附属中学を複数持つ実質的な中高一貫校ですから、内部生という存在のない日比谷高校と比べた場合、日比谷の方が高校生活を送る上で理想的な環境だと考える受験生が大半なのです。

 以上から、今後も日比谷高校人気はますます高まり、大学合格実績は多少の増減はありながらもV字復活が続くでしょう。今の日比谷高校は、高校受験生にとってあらゆる点で最高レベルの環境であって、それはたとえ開成高校や筑波大学附属駒場高校であっても、かなわないのです。学芸大学附属高校は、日比谷高校の併願校化が一気に進みそうです。

 日比谷高校は最終的にどこまで東大合格者を伸ばすでしょうか。かつて日比谷高校の東大合格者が1~3名程度だった時代、改革をしたって、2桁に戻ることはないという冷やかな意見が多くを占めていました。それでも日比谷高校は懸命に努力をして、2005年に2桁にまで復活させました。日比谷の高い学校力に気がついた一部受験関係者は、「将来的には学芸大附属を抜かすのでは」という見方をする人も出てきましたが、大半は「そこまで伸びるはずがない。しょせんは都立なんだから、10人を維持するのがやっと」という意見が占めていました。2010年、日比谷高校は2度目の「奇跡」を起こしました。ここまで復活を果たした学校は日本中存在しません。

 日比谷高校は将来的に、東大50人を突破して、80人を超えるでしょう。「そんなにいくはずがない」と思う人も大勢いるかと思います。しかし、東京の高校受験に、あの1967年の学校群制度導入時以来の大異変が起きていることは確かです。10年前、東大・京大1~3名にまで落ち込んでいた日比谷高校が10年後に学芸大附属を抜かすと誰が想像したでしょうか。

 世間ではまだまだ、中高一貫校に進学しなければ東大合格は無理という見方が根強く残っています。日比谷高校が起こす本当の「奇跡」は、まだまだこれからです。

 

 

最終更新:2010年03月29日 00:52