【そして牛を巡る冒険/奄美群島の旅】
第1話)天候異常あり

《旅行記|徳之島|闘牛|亀津|伊仙|奄美大島|名瀬|喜界島》

 「お客様にご案内申し上げます。本船は悪天候のため寄港地を変更いたします…」

 な、なに!! 寄港地を変更だと!!

5月の連休を利用し、僕は奄美の島々を巡る旅に出かけていた。東京からまず奄美大島に飛び、すぐさまその日の夕方フェリーに乗り次ぎ喜界島に向かっていた。その船内での突然のアナウンスであった。

徳之島・奄美大島・喜界島 旅行記|☆
奄美群島をつなぐフェリー

 「本船は喜界島・早町(ソウマチ)港に入港いたします。当初予定の湾(ワン)港には参りません…」

 そっ、それは困る!!

もともとの予定は喜界島の西側にある湾(ワン)港に夜8時半の到着を予定していた。そのため宿は港にほど近い湾(ワン)地区の民宿を予約していたのだが、寄港地が変更となると島内の移動手段を考えなくてはならない。

そもそも早町(ソウマチ)地区って、島のどこにあるのだ? 喜界島の港は、湾(ワン)地区一つしかないと聞いていたが…

すぐさまスマホで「早町港」と検索してみる。すると、あった、あった。島の東側にある港だ。でもこの港、「漁港」じゃないか!!

漁港だろうと何であろうと、ともかく船はどこかに接岸しなければならない。では島の東側から西側への横断移動はどうしたらよい? 僕は民宿に電話を入れた。

 「いや~、今日は用事があって迎えの車が出せないんですよ。タクシーを手配しましょうか?」

 と民宿のオーナーは詫びたが、この場でタクシーを手配してもらうことには抵抗があった。何か代わりの手段を船会社が提供してくれるのではないか、もちろん無料で。

 僕は、沖縄の西表(イリオモテ)島での交通システムを思い出した。

西表(イリオモテ)の場合、悪天候で船が島の北側の港に接岸できず、南側の港に入港すると、船会社が南側の港から北側地区までの送迎バスを手配してくれる。

 きっと似たようなサービスがここ喜界島にもあるに違いない!! と身勝手なポジティブシンキングに裏打ちされて、船会社の職員に聞いてみる。

 「湾(ワン)港まで、バスを手配してくれるんですよね?」

 「いや、そういう手配はしてないよ」

聞きたくない答えが帰ってきた。ではいったい島をタクシーで横断したら幾らかかるというのだ!

いや待て、悪天候で港が変更なんて離島では珍しくはないはず。きっと村役場が代替バスでも手配してくれているに違いない。

ひたすら自分にホジティブな思考を捨てきれないまま、薄暗い早町(ソウマチ)港に降り立った。

ところが、埠頭に見えるのは運送会社のミニバンとタクシーが数台のみ。その少ないタクシーにも人が乗り込んでいる。こっ、このままでは取り残されてしまうぅぅぅ。

慌ててダッシュし1台のタクシーをキープした。

喜界島 旅行記
薄暗い早町(ソウマチ)港の埠頭

 「お客さん、着きましたよ。」

島を横断したタクシーが宿の前に着く。僕はメーターを恐る恐るのぞき込んだ。想定外の痛い出費ではあったが、喜界島がさほど大きな島ではなかったため、べらぼうな金額にはならなくて助かった。

こうして僕の奄美群島の旅は、喜界島の島内GDPを\2040分だけ押し上げてスタートした。

(続く)


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最終更新:2016年08月24日 20:53