【壱岐→対馬→釜山=島伝い国境越えの旅】
第6話)海峡を越えた経済交流?
《壱岐・対馬・釜山
旅行記|郷ノ浦|勝本|厳原|日田勝|影島・ヨンド》
対馬の姉妹島・影島(ヨンド)でガイドブックに必ず登場する名所が太宗台(テジョンデ)公園である。
だが、その公園の入口近くにあるチャガルマダン海岸のことは日本ではあまり知られていない。 チャガルマダンとは小石の海岸という意味で、その砂利浜には獲れたての貝類を焼いて食べさせる屋台街があるという。
果たしてどんな所なのか、興味津々で目指す海岸に向かって進んで行くと、あった、あった。一つの浜が何軒ものテントで埋めつくされていた。
恐らく休日であれば大勢のプサン市民が海の幸を楽しみに訪れるのであろう。ところが今日は平日で天気もかなりグズついており、訪れる人もまばらだ。
いわばお客さんは僕一人という状態だから、あっちのテントからこっちのテントからすぐに声がかかる。気づくと、とある屋台のおばちゃんに捕まっていた。
国の内外を問わず、メニューに値段の書いてない海産物ほど頼むのに勇気を要する注文はない。ここの屋台もメニュー表なる人の心を落ち着かせるシロモノなどなく、恐る恐る値段を聞いてみると、セットで
大 50,000ウォン(約5,500円)
中 40,000ウォン(約4,400円)
小 30,000ウォン(約3,300円)
だという。普段の生活で500円ワンコインランチに慣れ親しんでいるオイラとしては、セット小 30,000ウォンにもかなりの抵抗感がある。
いや、ちょっと待て。今回の旅でおいらは「長崎しまとく通貨」のおかげで2000円分得していたことを思い出した。そうだ!その浮いた2000分円、壱岐で3500円の生ウニ丼を見送ったから使っていないままではないか。じゃ、その浮いた分をここで使ったことにしよう。
うん、これはある意味、海峡を越えた経済交流なのだ、そう言い換えるとなにか意義ある行為のように感じられる、と勝手に自分の決断に意味付けをし、セット小 30,000ウォン也を頼んだ。
すると屋台のおばちゃんはどこからか日本語のわかる人を連れてきて、その人が貝の焼き方のレクチャーをしてくれる。
ほほー、バターを落として焼くのか、へぇ焼けると勝手に身が殻から外れるのね、アンニョンハセヨ。
はい、お待ちどう。
やがて、おもむろに貝焼セットが運ばれてきた。そしてそのボリュームの多さに僕は驚愕した。
洗面器に山盛りのムール貝スープに加え、「早く焼いてちょうだ~い」とお盆にスタンバってる生ホタテちゃん。その数、なんとズラ~リ約20枚!!
これはもう今日1日で僕の年間ホタテ消費量を遥かに越えてしまっている。
こんなに食いきれな~い!!
と思ったのだが、炭火に炙られ、 ジューシーな煮汁がバターと溶けあい、貝殻の上でグツグツ踊り出すとあら不思議。何枚でも行けてしまう。
旨い、ムシャムシャ。
僕はこの日、貝類を貪り食うオニヒトデになった。
ああ満腹、ごちそうさま~。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
こうしてつかの間の海鮮天国を味わったものの、短い旅はその日の夜の博多行フェリーに乗り込むと終焉を迎えてしまった。
博多から釜山。飛行機ならわずか50分、LCCならたった4000円で飛べてしまう時代に、何日もかけて→壱岐→対馬→釜山と島伝いに旅をする。これは実はとても贅沢なことなのではないか、と洋上を行くフェリーの大浴場に浸かりながら思いを巡らす。この日韓フェリー・カメリア号にはゆったり足を伸ばせる展望風呂が付いているのだ。
そういえば、お風呂なんてどんな航空会社のファーストクラスにだってありはしない。ということは、今回の旅はファーストを超えた、超一流の旅だったとして幕を下ろそうか。
最終更新:2016年08月24日 19:19