【イラン、ここは本当に悪の枢軸国?】
第1話)いざ聖地ゴムへ。でも、、、

《イラン旅行記|ゴム|マライヤ|エスファハーン|テヘラン》

テヘランの南バスターミナル。野球場のように巨大な円形ターミナルには、髭づらのいかつい男とチャドルを被った女が無数に行き交う。意味不明のペルシャ語のアナウンスが響きわたり、あちこちからオンボロバスのエンジン音が唸りをあげ、地方へと出発してゆく。僕はテヘランから南へ130km程の街、ゴム行きのバスを探していた。

ゴムなる街に特別興味があったわけではない。ただ世界的観光地エスファハーンを目指すにあたって、そのまま行くのは面白くないので途中の街にも泊ってみようと思ったまでだ。ガイドブックを見るとその街がちょうど中間にあった。イスラム教シーア派の聖地とされる街だそうだ。なんとなく面白そうじゃん、ただそれだけの理由で僕はそこを目指すことにした。

ゴム行きのバスを見つけるのは容易ではない。なにしろテヘランの南バスターミナルには英語表記が一切ない。どこを見てもペルシャ語、ペルシャ語!僕にはへたくそな蛇やミミズの絵にしか見えない。

英語で「ゴム行きのバスはどこですか?」と尋ねても通じやしない。何人にも聞きまくって、やっと7番のバスであることが判明。「ゴム行きか?」と尋ねると、「そうだ、乗れ」とばかりに車掌は有無を言わさず僕のカバンを車体下の荷物入れに放り入れた。

「ゴム、ゴム、ゴム、ゴ~ム。」車掌は大声で乗客をかき集める。8割ほど客が埋まったところでオンボロバスはやっと出発した。だが出発しても何故かゆっくりとターミナル周辺を徐行する。車掌は扉から半身になって「ゴム、ゴム、ゴム、ゴ~ム。」と叫びながら、まだ客引きを続けているのだ。その甲斐があってか、徐行運転中にもそこそこ乗客を集めてしまい、ターミナルの外を一周し終えたころ、バスはほぼ満席となっていた。恐るべしペルシャ商人の商売根性!

ターミナルを出ると直ぐにバスはハイウエイを南に向かってかっ飛ばす。ゴムまでは2~3時間の道のりだ。車窓には潅木がまばらに生える台地が流れる。僕はいつしかウトウト浅い眠りに入ってしまった。まあいい。終点で降りればいいのだから。ゆっくり眠ろう。。。。

ふと肌寒さを感じて目を覚ます。バスは山間のドライブインに停車した。ここでトイレ休憩のようだ。出発から3時間が過ぎたが、そこはやはりイラン。予定どおりにことは進まない。僕はもう1~2時間バスに揺られ続けることを覚悟した。

出発の時と違ってここらあたりの風景は緑が豊かで、時折、黄色い花が一面絨毯のように咲いていて美しい。地図上でゴムの街は平野にあるように見受けられたが、実際は結構山がちなのだなぁ。来てみないとそういうことはわからないものだ、などとそのときは呑気に思ったりしていたのだが、、、さて、そろそろバスにも飽きた。早く着かないかなあ。僕は何気なく隣の乗客に話しかけてみた、

 「ゴム?」 

すると何やらその乗客があわてだした。いったい何が起きたのだ!そうこうしているうちにバスの乗客が全員ワイワイ騒ぎだす。ありゃ、僕、何かいけないことをしでかしてしまったのか?

やがて車掌が僕のところにやって来た。「ゴム」と冷たく言い放って、遥か後ろの方角を指差した。

 とっ、ということは、、、、しっ、しまったぁぁぁ。乗り過ごしたぁぁぁ。

このバスの終点はゴムではなかった。あわてて僕はガイドブックを取り出し「ここはどこだ」と聞いてみる。無論車掌は英語などわからない。こちらの意図を理解してもらうまでには随分と時間がかかったが、どうやらこのバスはマライヤなるところに行くバスとのこと。どこじゃいマライヤって?僕はガイドブックでマライヤなる街を探す。が、そんな街どこにもないぞ。気づくとバスは恐ろしく険しい山道を走っていた。あたりはもう薄暗い。

「マライヤにホテルはあるか?」尋ねてみたが車掌も他の乗客もみな首を横に振るばかり。まっ、まずい。ホテルもない見知らぬ街でいったいどうしたらいいのだ。このままではさびしい山奥のバスターミナルに放り出されてしまう。解決策が見出せないまま、バスは人気のないマライアのバスターミナルに滑り込もうとしていた。あわわいったいどうすりゃいいんだぁ!

(続く)


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最終更新:2016年08月27日 10:10