【タイのくびれを行く/中南部の旅】
第7話)腑に落ちない旅の終焉

《タイ旅行記|スラーターニー|ラノーン|チュンポン》

中国寺院-スラーターニー
中国寺院-スラーターニー

スラーターニー2日め。今日は快晴とはいかないまでも、薄日はさしてるので、出歩くのに支障はない。この街の郊外にはモンキーセンターと隣町・チャイヤーのなんとか寺という2つ観光スポットがあるらしい。モンキーセンターは入場料が5人までで500バーツだという。ってことは一人で行っても500バーツなのであっさりそっちはあきらめて、チャイヤーにあるなんとか寺に行ってみることにした。

チャイヤーまでは例によってミニバスだ。この辺りのミニバスに時刻表などは存在しない。人が集まったらさあ出発と、顧客満足度0のシステムがまかり通っている。なので、ある程度の人数が集まるまで、ひたすら待たされることとなる。

待合室でミニバスを待っていると、ヒゲづら親父が声をかけてきた。

 「マーチャク ナイ クラップ?(お前はどこから来た)」

 「マーチャク トーキオ クラップ(東京から)」とタイ語で答えると、すると

 「オレ、日本に10年いた。仕事。」

と、たどたどしいけど日本語で返してきたのにはいささかびっくりした。

東南アジアではときどきこのように日本に出稼ぎに行ってた人に出くわす。無論不法滞在で建設現場などで働く場合が多いのだが、10年とは随分と長いなぁ。

 「日本は良かった。お前タバコある?」 

 「あるよ、ほら」と僕はタイのクロンチップを差し出した。すると、

 「ガハハ!なんだ、お前。日本人なのにこんなの吸ってるのか。」と思いっきりバカにされ、 「俺はパーラメントが好き。でも、タイ、売ってない。こんど来たら土産に買ってきて。」と初対面のくせに差し出したタバコにケチつけて、そのうえ高級銘柄をご指名してきた。ちょっと図々しいヤツだが、なんとなく愛嬌があって憎めない。しかしこのヒゲ親父、朝からぷらぷらして仕事は何をしてるんだろうか?

ともかくヒゲ親父とバカ話をして時間をつぶしているうちにミニバンの乗客が集まり、出発となった。ちっぽけなチャイヤーの街にバンが着くころ、雲行きは大変怪しくなっていた。街から寺まではバイクタクシーに乗り換えて行くのだが、少々不安である。

20バーツで話をつけてバイクの後ろにまたがりだしたとたん、雨がポツポツ降ってきた。「ちょっと待って」と停まるように言うが、「大丈夫問題ない。」と運ちゃんはスロットルを吹かす。しかし、ものの1分も経たないうちに大粒の雨が激しく地面を打ちつけ、辺りは一瞬にして豪雨にさらされた。さすがに強気の運ちゃんもこの雨には降参と近くの商店の軒先で雨宿りをする。

 どーして今度の旅は雨に祟られっぱなしなのだぁ!!!

幸いなことに雨はすぐに止んでくれた。熱帯の大地に打ち付けられた雨が蒸発してゆく甘い匂いが漂い心地よい。1~2時間ほど寺を散策して、バイタクでチャイヤーの街に戻り、スラーターニー行きの帰りのミニバスを待つ。すると

 「やぁ、また会ったね」

あれれ、朝のヒゲ親父ではないか。しかし何でここにいるんだろう?

 「オレ、運転手」

ああ、やっと合点がいった。この親父もまたスラーターニー=チャイヤー間のミニバスの運転手だったのだ。ぷらぷらしているように見えたが、彼的には遊んでいたわけではなく、仕事、つまり客待ちをしていたのだ。

ミニバン乗場-チャイヤー
チャイヤーのミニバス乗場

 「お前こんどいつタイ来る。タイ来たら買ってきてナ。」 と、またおねだりが始まった。

 「パーラメントでしょ。嫌だよ。」 と僕は牽制球を投げ返した。

すると、

 「タバコいらないよ。ビール、アサヒビールな。
 オレ大好き。1ケースお土産、よろしく。」

ヒゲ親父にどーして、ビール1ケースを買ってやらなきゃならないんだ?

なんだかよくわからないまま、タイのくびれ地帯の旅は終わってしまった。思えば雨と、オヤジ達としか出会えなかった変な旅だなぁ。

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雨に祟られっぱなしの旅だったが、おかげで「乾かない洗濯物は洗濯屋に出すのがお得」なことを覚えた旅でもあった。たった50バーツでパンツもシャツもソックスも、アイロン仕上げでキレイになるんだもの。

味をしめた僕は帰国間際に一泊したバンコクで、残りの洗濯物をランドリーに出した。こうすりゃ日本に帰ってから洗濯しなくて済むもの。田舎で50バーツだからバンコクでは少し高いかもしれないが、、、

ツーリストが頻繁に出入りする界隈にあるランドリーに入ると、何人もの店員が僕を囲み、洗濯袋から汚れたシャツやら下着を、まるで獲物に群がるハイエナのごとく電光石火の早業で取り出し、あっという間に洗濯カゴに入れてしまった。値段を聞いて洗濯してもらう量を決めようと思ったが時すでに遅し。

僕は、差し出された伝票の数字を見て目をむいた。

 240バーツだとぉ。

田舎の4倍以上ではないか、おいらの汚れ物にこんな高値をつけなくてもいいだろう!


まったく最後の最後まで、なんとも腑に落ちない今度の旅であった。

=FIN=


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最終更新:2016年08月26日 21:21