【タイのくびれを行く/中南部の旅】
第6話)タイの屋台ずし

《タイ旅行記|スラーターニー|ラノーン|チュンポン》

ラノーン、チュンポンと雨にたたられっぱなしだった僕。そろそろ見切りをつけて振り出しのスラータニーへ戻るとするか。チュンポン=スラータニー間も快適なミニバスが頻発しているので移動は楽だ。

朝チュンポンを出たころは相変わらず小雨だったが、スラータニーへ南下するにつれ徐々に晴れ間が増えてきた。昼過ぎには今回初めて曇りと呼べる天気に変わった。やった!傘なしで出歩けるぞ。

スラータニーはそこそこ大きな街だから屋台街も充実している。昼過ぎからちらほらと開店準備が始まった屋台街は、夕方になると喧騒の渦に巻き込まれ大賑わいとなった。これこれ、この雰囲気。これがないとタイに来たって実感が沸きません。

スラーターニーの屋台街2 スラーターニーの屋台街4
スラーターニーの屋台街3 スラーターニーの屋台街1
スラータニーの屋台街

さて、タイには何度か来てるし、いわゆる屋台の食べ物も一通り食べたつもりでいたのだが、まだまだタイ屋台は奥が深い。こんな地方都市ではあるが、伝統的なタイ料理ばかりでなく、ニューウェーブな屋台も出現し始めている。

タイはフルーツ王国である。南国フルーツをその場で絞るジュース屋台は定番であるが、昨今は健康ブームを反映してか、そこに野菜ジュースもメニューに加わっている。ヴェジタブルミックスジュースを一杯頼んでみた。ニンジン、トマトをジューサーにぶち込むまでは普通であるが、そこで一言

 「カーも入れる?」

あわわ、「カー」って何だっけ。とっさに乏しいタイ語の語彙を脳みそのシワから引き出してみるが思いつかない。「カーって何?」と聞きかえすのもカッコ悪いので「OK。入れて。」と答えたのだが、カー、それは生姜であった。

いったいどんな味になるのだろうと危惧しつつ、一口すすってみた。意外や意外。疲れた体に生姜の苦味が効いてとても美味しい。まだまだ知らない味というのはあるものだ。

しかし、ニューウェーブ屋台の究極はなんといってもすし屋台だろう。タイ文字で「ชูโม่ชัง」(すもうさん)と書かれた屋台を見つけた。看板のシンボルマークの図案はもちろん相撲取り。日本はタイではカッコイイことのシンボルなのだ。雰囲気を最大限に醸し出すため、看板には店の名前が日本語でも書かれていた。しかしそのへたくそな日本語はどう読んでも「すさもん」としか読めない。これをどうやって「すもうさん」と読めばいいのだぁ。

すし屋台
屋台の寿司屋。屋号は「ชูโม่ชัง(すもうさん)」なのだが、、、

店は若い夫婦が切り盛りしていた。よし、ちょっと若旦那に意地悪な質問をしてやるか。

 「このお店は『すもうさん』っていうんでしょ。」
 「そうだよ」
 「でも、この日本語、『すもうさん』じゃないよ。」

 「うん、知ってる。でも問題ない。」

おおっと、ここはマイペンライの国。ちょっとした表記の間違いなど、細かいことはどーでもいいのであった。文字さえ日本語なら、要は雰囲気でOKなのである。

若旦那は手ぬぐいを頭に鉢巻をして威勢良くすしを握る。握る?いや、握ってないぞ。よく見ると予め握られたスシメシがタッパーに仕込んであった。きっとどこかで安く買い付けた中古のスシロボットにでも握らせたのだろう。ともかく仕込んだ寿司メシに具を載せるだけなのだ。

そしてその具といったら、、、得体の知れない魚の卵を、いかにも発ガン物質いっぱいの着色料で赤や緑に染めましたって雰囲気の怪しい食材ばかり。具材に刺身なんて期待してはいけない。そんなもの熱帯の屋台で出せるわけがないじゃん。

それでも具を載せるだけなのに、仕草だけはなんとなく日本の寿司職人っぽい気分を出しているあたりはさすがである。そそて1カン5バーツと、その米の量から見たらタイではずいぶん割高な値段であるにもかかわらず、結構売れているから驚く。

とはいえ、こちらは寿司の本場から来た身。そんな得体の知れないスシもどきより、本場のタイ料理の方が100万倍魅力的である。僕はすし屋台を離れ、別の美味しそうなにおいに誘われ、ふらふら夜の屋台街をさまよい歩いていった。

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夕食を終えたところで一つ疑問が沸いてきた。タイの米といったらパサパサのお米だ。その米であのスシ屋台はどうやって「握り」を作っているのだろうか。このなぞは引っかかる。夜10時過ぎ、僕は閉店間際の「すもうちゃん」に駆け込んだ。店は本当に繁盛していたみたいで、もはや数カンしか売れ残っていない。僕は怪しい緑と赤のイクラもどきの乗った軍艦巻きをテイクアウトした。そして宿に戻って恐る恐るそれを口にした。果たしてパサパサのタイ米のスシの味はいかに、、、、、

  ううう、何だこの食感。

   こ、こ、このねっとり感は。  

     も、もち米じゃないかぁ!

日本人のイマジネーションを軽やかに飛び越えたシュールなお寿司が、タイの屋台にはあった。

シュールな屋台の寿司c
あまりのシュールさにピンボケしてしまった!

(続く)


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最終更新:2016年08月26日 21:20