【タイのくびれを行く/中南部の旅】
第3話)温泉バカ親父

《タイ旅行記|スラーターニー|ラノーン|チュンポン》

ようやくたどり着いたラノーンの街は、国境の街らしく見慣れぬビルマ語の看板もちらほらと見受けられる不思議な街だ。夕方一軒の安宿にチェックインすると程なく激しい雨が降ってきた。

 ゴロゴロ~。ガラガラガラ~。ドシャー。

雨は一晩中振り続け、翌朝も一向に止む気配を見せない。それどころか、ますます勢いを増して降ってくる。

熱帯の雨は、激しいスコールが一時間ほど降って、後は直ぐに晴れてしまうものとばかり思っていた。実際今までの経験はそうだったし、日本のように一日中どんよりと雨が降り続くことなどありえないと確信していた。

だが、ここラノーンの雨は様子が違う。いつまでたっても降り止まないのだ。

降り止まない激しい雨-タイ
降り止まない激しい雨

当初の予定では、今日はボートに乗ってミャンマーに一日入国してみるはずだった。だが、この雨ではそれも無理だ。ボートなんか乗ろうものなら難破すること間違いなし。

しかたなく傘をさしながらラノーンの街の散策となったのだが、露店は閉まってるは、市場は水浸しになってるは、と散々である。小雨の中動き回っていると、時折大粒の雨が激しく降ってきてやむを得ず軒下で勢いが収まるのをひたすら待つしかなくなる。なんか全然面白くな~い!

水浸しの市場-ラノーン・タイ
水浸しの市場

昼を過ぎても雨はシトシト降り続けた。結局どこにも行けず、辺りをふらふらすることしかできなかったが、こんな辺鄙な国境の街に意外に多くの西洋人ツーリストがふらふらしているのには驚かされる。街には「VISA RUN SERVICE」 を掲げた小さな旅行代理店がいくつもあった。ここからミャンマーに行って戻ってくれば、タイの観光ビザがもう30日合法的に延長される。

この街は長期滞在外国人旅行者のちょっとしたビザ延長基地になっているようだ。そしてこのような一時出入国を「VISA RUN」と英語で言うことを初めて知った。

もし自分が今日、タイ入国30日めにあたる旅行者だったら、この天気は致命的だ。明日になると不法滞在者の身となってしまうのだから。などと今の自分にはどーでもいいことに思いを巡らせたりして時間をつぶすが、ああ、退屈すぎる~。

いつまで経っても雨は止む気配すらしない。ミャンマ-国境越え以外にこの街にあるアトラクションは何だろう。僕はガイドブックをめくってみた。おや!何かしょぼい温泉があるようだ。んじゃ行ってみるか。

雨の中傘をさして、温泉に向かって歩いていった。無論この雨のなかを歩いてる大バカ者なんて僕以外誰もいない。街外れの橋を渡った川岸に温泉はあった。川は折からの大雨で茶色い濁流が激しい勢いで流れ、覗くと怖いくらいだ。川には人工の中州があり、そこに池が作られ、湯気を発てて温泉が湧いていた。

川沿いの温泉-ラノーン・タイ
川沿いの温泉

この雨の中に温泉に来るバカ者なんて僕の他にいるわけが、、、え”っ、いる! あそこで池に浸かってるのは猿ではない。ありゃ人間の親父だ。僕は近づいてみた。すると、タイ人の親父が、傘をさして温泉に入っている。そこまでして温泉に入りたいかぁ!マニアな親父め。

「気持ちいいすか?」 「おお、すげー気持ちいいよ」 と温泉バカ親父は、さしてる傘を自慢げに指差して笑った。おやや!その傘、柄の部分がはずされて、帽子のように頭からすっぽりかぶれるように改良してあるゾ。ハンズフリーで雨天の温泉を満喫しているのだ。恐るべしスーパー温泉バカ親父!

すると温泉親父は「これ60バーツな」と得意げに語りだす。え”っ、それ自家製じゃなくて市販品してるの? ということは、ここにはそれだけ多く温泉マニアが生息しているということか。これだからタイは侮れない。

温泉オヤジ-ラノーン・タイ-400x300
これが温泉バカ親父だ!

(続く)


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最終更新:2016年08月26日 21:14