第2章(7)

第2章(7) 黒騎士童歌


エフィータ達は、エラフィタ村に足を踏み入れた

エラフィタ村は規模は全く広くない小さな村だが、中央に大きな桜の木が生えており、これを目当てに観光に来る人もいる

そして、それを狙い、行商人がこぞってやってきて、よろずやをしている、まぁこんなきれいな桜が咲いているのだから、このもとで不正を行い多くの金を取ろうとする商人はそれほどいないだろう

エフィータ達は、村人たちから、情報を仕入れ―そのうち何割かは、ヴェルンが会話を盗み聞きしたのをちらほら―村の奥の方にある家に向かった



「…失礼しまーす…」

エフィータがおとなしい声で家に入る

ドアからは、若干軋む音が聞こえる

中では、2人の老婆が談笑をしてるところだった

「…もうっ、ソナちゃんったら、また昔の話を持ち出して~」

「クロエちゃん…あたしゃねぇ、あんたのことをうらやましく思ったもんだよ」

どうやら、話している老婆は、後ろで髪をまとめていて、白髪なのがソナと言い、団子にしてまとめていて、これまた白髪なのがクロエというらしい

談笑をしてると、ソナがエフィータのことを見つけて

「…おや?」

というと、クロエが微笑みながら

「あらあら、お客さん?どうぞこちらにいらっしゃって」

といい、ゆっくりと手招きをした

「あ…どうも…」

と言い、ゆっくりとエフィータが歩んだ

その後について行くように、ヴェルン、フィリム、ミリアと順に歩んでいく

テーブルのそばに付くと、クロエが申し訳なさそうに

「ごめんなさいねぇ…ここは私と旦那の2人だけだから、椅子も2人分しかないのですよ…」

「ああ…大丈夫です、それより…」

そうエフィータが言うと、目線をソナに合わせて、少し緊張しながら言った

「あの…あなたが、フィオーネ姫のばあやをしていた人ですか?」

そういうと、ソナさんは少しキョトンとした顔で

「ええ…あたしが、フィオーネ姫様のばあやをしていたものですじゃが…いったい、何ようですかな?」

「あの…あなたが姫さまに小さいころ歌っていた、わらべ歌を聞かせてほしいのですが…」

そういうと、ソナはしわだらけの顔を微笑みに変え

「ええ、いいですとも、いいですとも」

そういうと、ソナはクロエに目を合わせ

「それじゃ、クロエちゃん、合いの手をお願いしていいかの?」

そういうと、同じしわが目立つ顔をしているクロエさんもにっこり微笑み

「黒バラわらべ歌だね?お安いご用さ、それじゃ、行くよ…」

そういうと、クロエは軽く咳払いをした

そして、クロエが調子よく、最初の合いの手を入れた…

「よい よい よいっとな♪」

次に、ソナがゆっくりと歌いだした

「やみに潜んだ魔物を狩りに、黒バラの~騎士、立ち上がる~、見事魔物を討ちほろぼせば、しらゆり姫と~結ばれる~、騎士の帰りを待ちかねて~城中みんなで宴の準備♪」

「あ、ソーレ♪そーれから騎士様どうなったー?」

「北行く鳥よ~伝えておくれ~ルディアノで~待つしらゆり姫に、黒バラ散ったと伝えておくれ♪」

「北行く鳥よ~伝えておくれ~、黒バラ散ったと伝えておくれ~♪」

2人が最後の節を歌い終わると、ほっと胸をなでおろしたように息を吐いた

そして、ソナはゆっくりと口を動かした

「…と、こんな感じじゃが、満足してもらえましたかねぇ?」

「はい、とてもいい歌ですね、なんだか…どこか懐かしいというか…」

そうエフィータが言うと、ソナはゆっくり微笑んだ

しかし、すぐに笑みを消し、代わりに疑問の顔を出した

「…ところで、こんな歌をどうして、わざわざ聞きに来たんですかの?」

「いえ…少し、ルディアノという国があったらしく、それに興味があったんです」

「ほうほう、それでルディアノという国のありかを知りたかった、と」

そういうと、ソナは少しクスリと笑い、エフィータにこう言い返した

「ならば、ポイントは、北行く鳥よ、のフレーズですねぇ…歌に出てくる鳥と同じように、北に向かってみてはいかかですかの?」

「はい、わかりました、行ってみます!!」

「気をつけて、行きなさいよ」

そういうと、ゆっくりとほほ笑んだ

その笑顔に、少し癒されたが、すぐにフィリムが僕の肩をたたいた

「ねぇ、エフィータ、外で何かあるよ?行ってみよ!!」

そういうと、そそくさと外に出て行ってしまった

エフィータ達は、フィリムのことと、何が起こってるのか気になったらしく、すぐに外にかけて行った



エフィータが外に出ると、村の入口から、男性の叫び声が響いた

「だ…誰かぁっ!!助けてくれぇぇ!!」

「おい…エフィータ、これは何かただことじゃない気がするぞ…早く行ってみようぜ!!」

そういうと、ヴェルンはダッシュで行ってしまった

エフィータとミリアも、なるべく速足で入口に向かった

エフィータとミリアが入口に付くと、そこにはレオコーンが村人に迫っているのが見えた

「うひゃあ!!来たぁッ!!」

そう男性が言うが、馬に乗っていないレオコーンも意外と早い、すぐに追いついてしまった

「うひゃあ!!助けてー!!」

「木こりよ…何故逃げる?私は話を聞きたかっただけだ、お前には何もしない、安心しろ」

そういうと、木こりは疑いの目を向けて、こう言い放った

「う…ウソこくでねぇ!!オラ、森の中であんたのことを探してる女の魔物に出会っただ!!真っ赤な目を光らせながら、我がしもべ、黒い騎士を見なかったか…ってよ!!」

そういうと、木こりの目はだんだん蒼白になっていき、最後には

「あんた…あの魔物のしもべなんだろッ?!」

と、鋭く言い放った

「この私が魔物のしもべだと…?何をばかなことを…ッ!!」

そういうと、レオコーンはエフィータに気付いたようで、すぐにエフィータのそばに寄った

「そなたは確か…エフィータと申したな、なぜこのような場所にいるのだ?」

「えーっと、貴方とためにルディアノ王国の手がかりを探していたんです」

「そうか…ルディアノ王国の手がかりを…こんな私のために、すまない…それで…何がわかったのだ?」

そういうと、ヴェルンがエフィータのそばに寄ってきた、大方、「2度も放り投げたのが何か癪だった」というものだろう、少し汚い言葉で言った

「…あんた、黒バラの騎士って言われてたんだろ?」

「…ああ、確かに私はルディアノでそう呼ばれていた、だがそなたらが何故それを…?」

「それがな…あんたのことが、わらべ歌になっていたんだよ!!」

そういうと、びっくりしたようで、レオコーンが足を少し後ずさりをして

「何ッ?!私のことが…わらべ歌になっていた…だと…?!」

さすがに、わらべ歌になっていたことは、当の本人全く知らなかったようだ

「…どういうことだ…?私がおとぎ話の住人だとでもいうのか…?」

そう困惑してると、先に行ってたはずのフィリムがヴェルンの後ろに回り込み、ヴェルンを抑えた

少し呼吸をしてから、エフィータは話した

「…あの、あのわらべ歌ですが…「北行く鳥」というフレーズがあったんですよ…」

「北行く鳥…わらべ歌に合った手掛かりは…それだけか…」

そういうと、レオコーンは少し考え、すぐに門のほうに歩きだした

「よかろう、ならば北行く鳥を追うとしよう…真実をつかむために…」

そうぽつりと言ってるような雰囲気だった



ヴェルンが不満げにフィリムを見つめる、フィリムはその視線を知らんぷりしている

ちょっとしたいざこざが起きないか、ミリアもはらはらしながら見守っている

エフィータも、少しはらはらしてるが、それよりも

北行く鳥…ただそれだけしかないフレーズを頼りに

ただただ来たに足を向かわせるだけだった…

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最終更新:2009年12月01日 20:27
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