第2章(5)

第2章(5) 黒騎士の真実


湖に、唸り声だけが響く

それを、静寂がかぶさり、不気味さを増す

しばらく唸り声が鳴っていたが、だんだん小さくなっていき、荒い息使いのみになった

両手を地面につけ、大きく肩で息をしている黒騎士のそばにより、エフィータは話を聞いた

「…あの…ミリアって誰ですか…?」

黒騎士に「ミリア」という単語を言ってしまったらまた唸りだすのではと、エフィータは考えたが、その心配はなく、黒騎士はゆっくりと立ち上がり、湖に体を向け淡々と話しだした

「…ミリア姫は…私の祖国、ルディアノ王国の姫、私はミリア姫と婚礼を誓った仲だった」

そう話しだしたら、サンディが妖精になって出てきた

「で、ミリア姫とフィオーネ姫を見間違えちゃったってワケ?どんだけにてたのよ、フィオーネ姫とメリア姫は~、元カノの顔くらいちゃんと覚えときなさいって!!」

「…ふっ、まぁ確かに間違えたのは恥ずかしいことだがな…」

サンディは何度かうなずいたが、すぐに目をハッと開き

「…って…なんでアタシの声が聞こえるのぉ?!」

と言い、後ろに少し下がった

「そういえば、私の名を教えてなかったな、私の名はレオコーンという…私は、深い眠りについていた…そしてあの大地震と共に、何かから解き放たれるようにこの見知らぬ土地で目覚めたのだ…」

少し、余韻を持たせ、声のトーンを下げて、レオコーンはまた話した

「…しかし、その時…私は何者かわからないほど記憶を失っていた…そんな折、あの異国の姫を見かけ…自分のこととメリア姫のことを思い出したのだ」

「そう…だったんですか…」

そうエフィータが答えると、下を向いていた顔を上げ、からだをエフィータのほうにむけて話を続けた

「しかし、私は間違いをしていた、あの姫にはルディアノ家に代々伝わる首飾りをしていなかった…結局、またメリア姫と会えなかったのだ…」

そういうと、黒騎士は今度は湖を背に向け

「私は…自分の過ちを正すため、今一度あの城に行かねばならぬな…」

「あ…あの…」

そうエフィータが言うと、サンディが耳をつねった

「いったー…なんだよ?!」

「何だよじゃないでしょ?あんなのにかかわったら、かえってややこしくなるだけだって!!」

「ややこしくなる?…まぁ、それもそうだな、ではそなたらの方から城のものに伝えてくれないか?もうあの白には近づかない…と」

エフィータは顔を少し下にやり、考えたそぶりをし、微笑みを浮かべ

「…わかりました、お城の方にはそう伝えておきます」

「すまぬな…ルディアノの方ではきっと本当のメリア姫が帰りを待ってるはず…私はルディアノへ向かってみよう…」

そういうと、馬に手を触れた、馬についていた黒い装備がガチャンという鈍い金属音とともに、草むらに叩きつけられる

馬は自由を手に入れた喜びか、低くいななき、どこかに走って行った

黒騎士は、それを見送ると、己の足で一歩一歩踏みしめ、湖を出て行った

湖の草の上に無造作に置かれた黒い馬具がぽつりとおかれたその湖を、再び静寂が包みこんだ



「…ほう…では黒騎士は記憶をなくし、フィオーネを婚約者と見間違えただけで、奴はルディアノという国を探すためもうこの城には近づかない…とな?」

王様の前で、エフィータは何も隠さず話したが、あの3人はやはり王様が怖いのか、王様の間の前でこそこそと隠れている

エフィータは多少困り顔で

「は…はい…確かにそう…」

というと、王様の怒りはMAXに達したのか、そばに合った玉座より少し高い金色の小さな机に手を握りこぶしにして叩きつけた

「お主はその言葉を信じてかえってきたのかッ!!そんなものは口から出まかせに決まっておるだろう!!」

そういうと、王様はその机の上に置いてあった水が入っているガラスのコップを持ち、一気に中の水を飲み干した

「お父様…っ!?何故そこまであの騎士のことを悪く言うのです?!」

フィオーネ姫がそういうと、王様はツンとした表情で言い放った

「ふんっ!!あの騎士の言うことは何かと信用できん、そもそもルディアノという国などわしはこれっぽっちも聞いたことがない!!やつはでたらめを言ってるんじゃ!!」

そういうと、目を見開き、エフィータの方に顔を向けた

「よいかエフィータ?奴はフィオーネを狙っていずれまたこの城を狙ってくるハラづもりよ、黒騎士の息の根を止めるまではお主への褒美もお預けじゃ!!」

そういうと、王様は大きな鼻息を出した、どうやらスッキリしたらしい

…王様の間の入口の方から「ええ~?!」という声が聞こえたが、すぐに収まった、どうやら別にいた2人が言った奴の口をふさいだみたいだ

「…なぜ、なぜ信じてあげられないの…?本当に国に帰れず、困ってるかもしれないのに…」

フィオーネ姫が、王様に疑問を問いかける

今度は、先ほどの言葉ですっきりしたおかげか、王様はゆっくりとした口調で話した

「フィオーネ…すべてお前のことを想って言ってることだ、聞き分けなさい」

そう言い、姫はうつむいたが、すぐに何かを思い出したように走り出した

「お…おいっ、フィオーネ…!?」

王様も、今起こったことに、驚きを隠せなかったようだった



扉を出ると、姫様とヴェルンがぶつかっていた

「いっ…あ、すみません」

「あ、いや…大丈夫…」

ヴェルンが珍しく引き気味だ、大方フィオーネ姫に一目ぼれというところだろう

すると、フィオーネ姫はエフィータに気がついたようで、すぐに会話に入った

「あ、エフィータ様、私…少しお話したいことがあります」

「話…って言いますと…?」

「その…ここでは言えませんので、扉を出て東にある、私の部屋まで来てください、ルディアノ王国のことなのです…」

「ル…ルディアノのことですか…?!」

そうエフィータが言うと、姫は浅くうなずき、扉の前まで駆けだした

扉の前で足を止めると、エフィータの方に顔だけ向けて

「私は、先に待っておきます、それでは…」

と言い、走って行ってしまった

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最終更新:2009年12月01日 20:22
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