1章(8) トロフィー
とりあえず、トロフィーをリベルトさんに見せてあげた
「おお!これこそ、私の宿王のトロフィー!!」
と、少々浮かれてた感じだったが、すぐに気が沈んだように淡々と話しだした
「…実は、私がこの村に来た時、封印したんですよ、セントシュタインの思いを断ち切るために…そして、リッカのために…」
僕は少し気になり
「あの…よろしければ、話してくれませんか?」
リベルトさんは、快く承諾してくれた
「…幼いころのリッカは、とても病弱でした、あの子のためを思って私はこの村に帰ってきたんです、それが死んだ妻の…あの子の母親の願いでもありました
私は母親を亡くしたリッカを連れ、この村に戻り、そのトロフィーを封印したのです、そんなトロフィーをあの子が見たら、なんて思うか…」
リベルトさんは今にも泣きだしそうだった
しかし、自分は真実を見せてやるべきだと心の底で思った
そして、リッカに…一歩を歩んでほしいと思った
「…リベルトさん、僕、このトロフィーをリッカさんに見せてきます」
そういい、リッカの家に入った
「トントン」
「リッカ…入るね」
ギイという扉がきしむ音が鳴り、扉が開いた
「…あれ?エフィータ、どうしたの?」
「リッカ…これ…」
「…?その手に持ってるトロフィーは…?」
僕は、リッカに持っていたトロフィーを渡した
「…これ…宿王と認めるって…セントシュタインの王様から、うちのお父さんに…?」
「…うん、らしいね」
「そんな…!?ルイーダさんの話は本当だったんだ…!!」
そう考え込むが、すぐに
「…でも、だったらどうしてお父さんは宿王の地位を捨ててまでウォルロ村に帰ってきたの?お父さんが何を考えてたのか私にはさっぱり分からないよ!!」
と言われた、その質問は、さすがの僕も答えられない
その時、階段から誰かが上がってくる音が聞こえた
「…そのことについては、わしから話そう」
リッカのおじいさんの声だ!!
「…おじいちゃん」
「リベルトから口止めされていたから、ずっと黙っていたが…もう話してもいいだろう」
そういうと、おじいさんは重苦しそうに話しだした
「リッカや…お前は自分が小さいころ病気がちだったことを覚えてるだろう?その体質は母親譲りのものじゃ、本来なら成長するに従って弱っていき、やがて死にいたる
実際、お前の母親も体が弱く、若くして亡くなっておるな」
「でも私は元気になったよ、体が弱かったことなんて忘れてたくらい」
と、リッカが言う
「それはこの村の滝の水…ウォルロの名水を飲んで育ったおかげじゃろう、ウォルロの名水は体を丈夫にし、病気を遠ざけるというからのう」
「じゃあ…じゃあお父さんがセントシュタインの宿屋を捨ててこの村に戻ってきたのって…?」
「…さよう、あいつは自分の夢よりも、娘を助ける道を選んだのじゃよ」
その言葉を聞いた瞬間、リッカの目から涙が少しずつ出てきた
「私が…お父さんの夢を…奪ったんだ…」
「…そう思わせたくなくて、あいつは口止めをしていたのじゃろうな、だが、今のお前なら、この事実を受け止めることができるとわしは信じておるぞ」
そう聞くと、リッカは涙をぬぐい
「…お父さんが時々見せていた遠くを見るような表情が、実はずっと気になっていたんだ…そっか…お父さんは私のために…」
そういうと、僕のほうを向いて
「…エフィータ、私、セントシュタインに行くことにするわ、私に何ができるかわからないけど…ルイーダさんの申し出を引き受けてみるよ!」
「うん、頑張ってね!!近くによったら、絶対行くから!!」
「もう、それを言うのは早いよ…もう…」
笑いながら、いや、少し涙が交じった声で僕に言った
そして、外にに急ぎ足で行った
僕が見送ると、廊下にはリベルトさんがいた
「あ…リベルトさん…」
周りにいたピンク色の球体が、サンディになる
「あれ?おっさん、来てたんだ」
「…ええ、話はすべて聞いていました、まさかリッカが私の夢を継いでくれるなんて…あの子も大きくなったものです…もう思い残すことはありません…」
そういうと、リベルトさんの体がすうと消えていく
「私がいなくても…きっとあの子は立派にやって行けるでしょう…」
そう言い終わると、もっと体が薄くなった
「…どうやら、お別れのようですね、本当にありがとうございました、守護天使様…」
そういうと、リベルトさんは消えてしまった
「…行っちゃったわね…」
そうサンディが言うと、僕のほうを向いて
「なかなかやるじゃん!こりゃあんたのこと、天使だって認めないわけにはいかないかー、約束通り、天の箱舟に乗せて天使界まで送ってあげるわ、感謝しなさいよ~」
そういうと、床を指差して
「…ところでさ、あんた天使だったら星のオーラを回収しないでいいの?そこに転がってるんですケド…」
「…え?どこ…?星のオーラ?」
「…へっ?!あんた…星のオーラ見えないの?見えなくなっちゃったの?!」
そういうと、呆れたように
「前言撤回したいんですケド…こんな奴信用していいのかな…?」
と、つぶやいたのが、僕にはきちんと聞こえてた
最終更新:2009年08月26日 22:00