プロローグ(4)

プロローグ(4) 手伝い


階段を駆け下り、そそくさと長老の間に行く

そこには、長老オムイ様がいた

僕が入ってきたら、長老は席を立った

「御苦労じゃった、エフィータ…して、世界樹の様子はどうじゃったかな?」

「あ、はい!!星のオーラをささげたら、光り輝いておりました!!なんというか…葉の一枚一枚先まで輝いているような感じで…とても美しかったです」

「ほほう、そんなにも光り輝いておったか…これは、いよいよかもしれんな…

エフィータも知っていようが、われら天使の使命は、世界樹を育て、女神の果実を実らせること

守護天使たちが人間を守り、星のオーラを集めているのも、すべてはそのためなのじゃ」

そうか…星のオーラはそのためにあるのか…

イザヤールさんが集めて、星のオーラをささげに行く場面は何度か遭遇している

でも、その目的までは自分でもはっきりとはわからなかった

両親や別の先輩から「世界樹を育てるため」とだけは聞いていた、女神の果実の存在はわからなかった

「…さて、守護天使エフィータよ、自分のするべきことがもうわかったであろう」

「はい、ウォルロ村まで降りて、星のオーラを探してくる…ですね」

「そうじゃ、しかし今回はイザヤールは供をせぬぞ!!」

長老オムイ様が念を押すように言う

「承知しています、長老オムイ様」

「…よろしい、では準備が整ったら、下の階に行き、輝く星型の穴にこびこむがよい」

そう言い、長老はまた椅子に座った

「守護天使、エフィータよ、汝に星々の加護のあらんことを…」



星のオーラを集めに…しかも1人で地上に行かなければならない

緊張する…でも、やらなければいけないことなんだ…

行くしかない!!

(大丈夫…大丈夫…出来るさ、僕だって…)

そう自分に言い聞かせ、穴に飛び込んだ



星型の穴を抜け、雲を突き抜け、ウォルロ村にたどりついた

どこに降りようか迷ったが、村の中央にある橋掛け役の役目をしてるであろう小さな島に降り立った

そこに、2人の男の子が話している

「…しかし…不思議だよなぁ…」

「それって、例の天使像に書かれてる名前のことっスか?ニードさん」

どうやら、話しているもう1人の金髪の前あげの男の子はニードというらしい

「ああ、前は…イザ…なんとかって名前だったような気がするんだけど…今はエフィータになってるんだ」

守護天使が変わると、混乱しないようにその日のうちに住人の記憶と石像に書かれてる文字が書きかえられる

でも、ニードという男の子の記憶は完全に変えられなかったようだ

「そうっスかねぇ?前からエフィータでした「前からっていつからだよ!?ちゃんと覚えているのか?」

男の子が言い終わる前に、ニードが口をはさむ

「はい、えーっと…あれ?不思議っスねぇ…思い出せないス」

「だろう?村のみんなが変なんだよ、最近のことなのにみんなが「前からエフィータだった」とか「もともとそうだった」とかいうんだぜ?きっと、前からそうだったと思ってるんだ」

「うーん…じゃあ、天使様の力t「バーカ」

そう一言で男の子の言葉をニードが止めた

「ほんとにいると思うか?そんなおとぎ話の住人みたいなやつ、いるわけないだろ?天使がいるとか、そんなの信じてるのは石頭のリッカだけだってーの!!」

そう言って、男の子とニードの会話は終わった

これほどむかむかしたことはない、ニードに何かいたずらをしようと思った

でも、いまは守護天使としての役目を果たさなければならない、ぐっと我慢…ぐっと我慢…



にしても、誰が困ってるのかわからない

その辺を歩いていれば…と思っていたら

「ヴー…バウッ!!バウッ!!」

と、いきなり犬にほえられた、僕はびっくりして、少し後ろに下がってしまった

…そうだ、人間と違って、動物や魔物には僕らは「見えてしまう」んだった…

僕は怖いという気持ちを抑えて犬に近づき

「…よしよし、大丈夫だよ、僕は怖くないよ」

と、なるべくやさしく首をなでてあげた

犬は気持ちが良かったらしく、僕になついたらしい

そしたら、犬が急になでてた手からするりと抜けて、一本の木の前にとまり

「バウッ!!バウバウッ!!」

と鳴いた

僕が急いでその木を調べてみると、下に

サファイアが埋められた金の指輪を見つけた

「これを見つけてくれたんだね、えらいぞ…これは、落とした人にちゃんと返さなきゃね…」

そう言って、今度は背中をなでてあげた、犬は

「クゥ~ン…」

と、気持ち良さそうに鳴いていた



しかし、指輪は見つけたが、誰がなくしたかわからない

そう思ってた矢先、教会から誰かが鳴いてる声が聞こえた

僕は、窓から老婆を見つけ、その人がなぜ泣いてるか、開いてる窓から話を聞いた

「…おお、守護天使エフィータ様、どうか、形見の指輪が見つかりますよう、どうか、どうかお助けくださいませ…」

と、言っていたのが聞こえたので、急いで教会の扉から、そっと入って行った

途中、ギイ…と鈍いドアの音が鳴ったから、びっくりしたが、幸い誰も気づいていないようだった

僕は、そっとおばあさんがいる場所のそばまで行き、おばあさんの上着のポケットに指輪を忍ばせた

「…おんや、なんじゃろう?なんだか、上着が重くなったような…」

そう言い、ポケットを調べて、僕が入れた指輪を見て、びっくりしていた

「こ…これは…じーさまの指輪!!どういうことじゃ?さんざん探しても見つからなかったはずなのに…」

そうおばあさんは考えていたが、すぐわかったように

「…そうじゃ!!これぞエフィータ様の思し召し!!ありがとうございます、ありがとうございます、エフィータ様!!この恩は一生…いや、生まれ変わっても忘れはしませぬ!!」

そう言い、おばあさんは涙を流した

自分はとてもうれしかった、「おじいさんとの思いで、大事にしてね…おばあさん」と、一瞬思ったが

おばあさんから出てきた、星のオーラを見たとき、回収しなければと思いすぐに取りに行った

さぁ、次はだれが…

と、教会から出たら、さっきまで聞こえなかったいびきが聞こえる

たぶん…馬小屋からだろう…

音を出さないように、そっと馬小屋の中に入った



「うぅん…早く馬小屋を掃除しねぇと…でも眠くて…もう体が動かねぇ…」

そう言い、馬小屋にいたおじさんは寝てしまった…

ああ…こういうのも、手助けの一つがと自分に言い聞かせ、落ちている馬の糞や、ほし草などを集めてゴミ袋に入れた

それにしても…におう

馬の糞が臭いのか、それとも臭くはないが、長い間掃除はしていないのか、とてもにおう

でも、だいたいの掃除は終わった

その時、馬小屋のおじさんは目を覚ました

「ううん…いけねぇ!!いつのまにか寝ちまった!!」

そう言い、掃除用具を手にするが、目の前には、僕が一生懸命掃除したきれいな―自分で言うのもなんだけどね―馬小屋が目の前に広がっていた

「…あれ?馬小屋掃除してたのに…なんでかたづいてるんだ?」

おじさんは、悩んでいたがすぐに

「そうかっ!これは守護天使様がおれのことを助けてくれたんだな!!あんがとー、エフィータ様!!おれ、うんと頑張って、必ず新しい馬を手に入れるよ!!」

そう言い、男は…また眠った…

いったい、いつぐらいになるのだろう?

そう思ったいたが、ちゃんと男の体から星のオーラは出てきた

それをちゃんととり、足早に馬小屋を後にした



馬小屋の掃除が思う以上にかかってしまったから、外はすっかり夜になっていた

早く帰らなければ…と、降りた場所に戻ろうとしたら、橋のところにイザヤールさんが立っていた

自分はびっくりして

「い…イザヤールさん?!」

と叫んでしまった

「何を驚いている」

と、冷静を保っている

「ところで、エフィータよ、しっかりと役目に励んでいるようだな」

「あ、はい、ちゃんと役目は守っています」

「そうか…どうした?私がこの村に来るのは、もういらぬお世話かな?」

そういうが、自分は首を思わず横に振っていた

「ハハハ…まぁ、私が見込んだ弟子だからな、ちゃんとできるだろう、私か?なに、これから世界中を回るつもりで、たまたま最初にこのウォルロ村に立ち寄ったまでのことだ」

「そう…ですか」

「…ところで、エフィータよ、実はまだ、お前に教えることが残っていたのだ」

「え?何ですか?」

すこし、顔を近づけてしまう自分

「まぁ少し落ち着け、生きてる人間を助けるのも天使の使命だが、もうひとつ、死してまだ地上をさまよっている魂を救うことも天使たる使命!

…この村の何処からか救いを求める魂の声がお前にも聞こえるであろう」

確かに…少しだけ違和感がある

なんか…こう…嫌な雰囲気が…

僕は、イザヤールさんの話を一通り聞き、その魂を見つけに行った



死した魂は、意外と早く見つかった

どうやら、村人からの話を聞くと、力自慢の旅人のようだ

しかし、泣いているようだ…

「…なんで…なんでみんな俺のことを無視するんだ?…ん?あんた…おれが見えるのか?!」

一瞬だけ、ほっとしたようだったが、自分の姿を見て、天使だと気がついたのか

「…あれ?あ、あんた…もしかして、天使様…なのか?」

「…そう、僕は天使、あなたを成仏させに来ました…」

言いにくいせりふだったが、言わなければ永遠にこの問題は解決しない、そう思い話した

「…そうか、もしかしたらと思ったが、おれは…とっくに…」

男は、一瞬沈んだような顔をしたが、すぐに

「…ありがとう、天使様、おかげで自分が死んでることに気づけたよ…誰にも気づいてもらえないのはほんとにつらかった…だから、もう逝くことにするよ…」

そう言い、男の体はどんどん薄くなっていき

消えてしまった

男がいた場所には、今までとは比べ物にならないような輝きを持つ、星のオーラがぽつんと残っていた



一通り終わった後、イザヤールさんが僕のもとにやってきた

「よくやった、エフィータよ」

そういうと、イザヤールさんは空を見つめ

「あの者も、悔いなく天に召されただろう…魂が出すオーラはひときわ大きく輝いている」

僕は、もう1度星のオーラに目を向けた

「…どうだ?一度天使界に帰るか?」

「はい、もうくたくたで…」

「ハハハ、ではもどると…ん!?」

イザヤールさんが空に目を向ける、僕もつられて目を空に向ける

すると、空には金色に輝く蒸気機関車が走っていた

「天の箱舟…近頃やけにあわただしいな…」

そう呟いたら、僕のほうに目を向けて

「気が変わった、エフィータよ、やはり私も天使界まで同行させてもらうぞ」

そう言い、イザヤールさんは翼をはばたかせた

自分も、同じように羽を伸ばし空に飛んで行く…

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最終更新:2009年08月14日 21:07
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