プロローグ(3)

プロローグ(3) 世界樹


白い雲の中を、何の感触もなしに突き抜ける

目の前は真っ白

そして、雲を突き抜けると、そこは空中に浮く機械都市のような場所

そこが、僕らが住む場所…そう、天使界



神秘的な青白い星のような形をしている場所から、僕とイザヤールさんは戻ってきた

自分は、まだこれに慣れていないようで、いつも少しふらついてしまう

「いつものことだが…大丈夫か?エフィータ」

イザヤールさんに言われてしまった…

うう…自分の未熟さが自分でも少しいやだ…

「…さて、地上から戻ってきたら、長老オムイ様に報告するのが天使の習わし!オムイ様は長老の間にいるはずだ、私はこれから別の用事があるので、先に行かせてもらうぞ」

そう言って、イザヤールさんは行ってしまった…



1階の南側にある階段

そこを登り、さらに北に行くと、別の階段がある

そこを登ると、2階の中央にたどりつく

そこをまっすぐ進むと、長老の間だ

「よくぞまいった、イザヤールの弟子、エフィータよ」

初めて、オムイ様を目の前にした僕は、すごい緊張している…

がちがちで、何もできない

「ははは…そう硬くならなくてもよい」

長老オムイ様にそう言ってもらってくださっておかげか、ふっと体の緊張が解けた

「さて…わしがこの天使界の長、そして守護天使のまとめ役…いわゆる、代表というやつじゃな、長老オムイじゃ

守護天使として、地上での初めての役目、御苦労じゃったな…とはいえ、今まではイザヤールに同行してもらったのだったのう…」

思い出したように長老オムイ様が言う

そうだ…今日から正式は守護天使になったんだ、一人なんだ…

いま、初めてそう実感した

「じゃが!これからはそうではない!…どうじゃ?一人でも守護天使としての役目、果たしていけそうかな?」

「はい!自分の力を信じ、守護天使としての役目、きっと果たしてまいります!!」

「ほほう、エフィータはなかなかどうして自信家じゃ」

自信家なわけじゃない

こう言い切ることで、今までの自分に踏ん切りをつけたかったし

第一、これからは一人なんだ、誰にも甘えられない

でも…ちょっと言い過ぎたかな?

「結構結構、若いモンはそれくらいでなくてはな」

そう言われ、自分の言った言葉の重みが初めて分かった

やはり、少し言い過ぎたかもしれない…



「…さて、ではそんなエフィータに、次の役目を与えるとしよう

地上でお前は、人間たちの感謝の結晶…すなわち、星のオーラを手に入れたはずだな」

「はい…えーっと…この通り!」

僕は、自分がどこにしまったか少し忘れかけた星のオーラをカバンから取り出した

そういえば…天使界に帰るとき、急いでカバンにしまったんだっけ…

「…いいかな?次にお前がなすべきは、天使界の頂にある世界樹に、その星のオーラをささげることじゃ」

世界樹というのは、天使界のてっぺんにあるとても大きい木の事で

そこに星のオーラをささげると、美しい光景がみられる

…といっても、僕はまだ見たことがないけどね…

「樹はやがて育ち、その実を結ぶであろう…さあ、世界樹のもとへ向かうがよい」

そう言い、長老オムイ様は座席に座った

とにかく、急いで世界樹に向かわなければ…

そう思い、長老の間から右に曲がると、イザヤールさんとラフェットさんが話していた



「…まったく、驚いたわよ、エフィータがもう守護天使になるなんて!!あなた、よく許したものね?」

扉を少し開けて中を見てみると、どうやら僕のことを話してるらしい

「ちがうのだ、ラフェット、私はまだ早いと反対したのだ、それをオムイ様が…」

「あはは…そんなことだろうと思ったわ」

そう言い、ラフェットさんは本棚に向かう

「笑いごとではない!!…エフィータはまだ未熟だ、人間界で何かあったらどうする!!

…君は、エルギオスの悲劇のことを忘れたのか…?!」

そう言い終わった後、ラフェットさんは本棚から机に戻る

「…エルギオスの悲劇…忘れてはいないわよ…」

「なら、なぜッ…」

「天使界でッ!!…その話をすることはタブーになったのじゃなかったのかしら?」

「ぐッ…」

イザヤールさんが話していたエルギオスの悲劇…

僕はよく聞いたことがない

でも…聞いた話だと…

と、思い出していたら、扉に力がかかってしまい

「ガターン!!」

思いっきり倒れてしまった

「ウォルロ村の守護天使エフィータよッ!!いつからそこにいた?!」

イザヤールさんがすごく焦っている

「いや…あの…話の途中から…です…」

「何ッ!!…まぁ良い、それより、ウォルロ村の守護天使エフィータよ、オムイ様に会われたのならば、次になすことはわかってるはず、早く世界樹の樹に星のオーラを届けに行くがよい」

そう言い、イザヤールさんは僕を追いだすように部屋から出した

エルギオスの悲劇…それを語るのは後になりそうだ…



「オムイ様の命で、世界樹の樹に星のオーラをささげに行くのだな?」

「はい、オムイ様の命でここに参りました」

「よろしい、では通りなさい」

そう言い、警備をしてる人が道を開けてくれた

そこから階段を上っていると、世界樹のある場所にたどりつく

そこから、世界樹の樹の幹まで行くには、また階段を登らなければならない

階段…階段の連続で疲れたけど

やっとの思いで世界樹の樹にたどりついた

僕は、カバンに入れておいた星のオーラを世界樹にささげる…

すると、星のオーブは手から離れるように世界樹の樹に吸い込まれていった

はじめてみる神秘的なもの

吸い込まれた場所から、光が広がっていき

葉っぱの1枚1枚の先まで光り輝く

僕はしばらくそれを見ていたが

やがて光は消えてしまった



そのあと、イザヤールさんが世界樹の樹までやってきてくれた

「どうだ、ウォルロ村の守護天使エフィータよ、星のオーラをささげられた世界樹は実に美しいだろう」

「ハイっ!!なんというか…その…神秘的で、美しく、それから…」

「ははは…そうかそうか…人間たちからオーラを受け取り、世界樹にささげる…これこそがわれら天使の務め…」

イザヤールさんも、世界樹の樹を見つめる

「ウォルロ村の守護天使エフィータよ、お前の今後に期待しているぞ」

「ハイっ!!どこまでできるかわかりませんが…守護天使として、この役目、果たします!!」

「うむ、では長老オムイ様に報告してきてくるがよい」

そう言われ、大きくうなずいた自分は、走り出す

「おお、そうだ、ウォルロ村の守護天使エフィータよ」

いきなり呼び止められ、急ブレーキをかける

「ちょっと思ったのだが…いちいちウォルロ村の守護天使エフィータと呼ぶのは少し面倒だ、これからはときどきそう呼ぶことにしよう、それでよいな?」

「はぁ…いいですけど…」

「よろしい、それでこそわが弟子!天使は上級天使に逆らえ布が習わしだからな」

自分は、上級だろうが、下級だろうが、毎回言われるとこっちもどう反応すればいいかわからなくなってくる

…まぁ、これかこれできっかけを作れたからいいけど…ね

「さぁ、オムイ様のもとへ行き、無事に役目を果たしたことを報告するがよいぞ、エフィータよ」

「はい、では、行ってきます!!」

そう言い、長老の間まで駆け足でいく…

さぁ、次は何をすればいいのかわくわくする!!

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最終更新:2009年08月13日 20:46
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