プロローグ(1)守護天使
「ねえ?誰かいるの?」
…
「いるのだったら、姿を見せてよ…何か言ってよ…」
…下界から、そんな声が聞こえる…
僕はそばにいるのに、人間はそれに気づかない…
それはそれで、人助けはしやすいけど、人間の友達がいない
そう思うと、少し内心がもやもやする
そう見てると、いつぐらいからあの世界を守ってきたのだろう…
図書館に行って調べようかな…なんて思ったりする
僕たちは、下界では昔から「天使」と呼ばれていた
ずっと…ずっと前から…
いつも通りの朝がやってきた
とある家を見てると、青い小鳥が2羽地面をぺたぺたと小さな足で歩いている
すると、木の扉は「バタン!」と扉があき、青い鳥は、その青い羽をはばたかせ、大空に舞い上がった
みすぼらしいと言っては失礼だし、かといって新築ってほどではないので言葉を選ぶのが難しいけど、そんな風な家の中から、青い服を着た小さな男の子が、子犬を追いかけている
その男の子は道の途中で止まり、金髪の青年に手を振る
その青年は、馬をやさしくなでており、手を振ってる少年に青年も気づき手を振り返す
それの少し後に、犬が小屋の前に来て、犬が吠える
その犬を、先ほどまで馬をなでたその手で同じように犬をなでる
犬が吠えた後、馬もなく、まるで動物同士であいさつするように
そのあと、目を移すと、別の…なんというか、金髪で前髪をあげている少年と、青色のバンダナをかぶった女の人が話しているのを見ている
また別の場所を見ると、太った中年くらいの男性が、川辺で釣りをしている…
それが、この村の「普通」なのだ
そんな風な景色を、守るのが僕の仕事だ
この村を守れることが、僕は幸せだ
だって、こんなに平和が似合う村がほかにあるだろうか?
ずっと、この景色を見ていた…
「エフィータ、何をぼーっとしてるんだ?」
僕の師匠、イザヤールさんに怒られてしまった…
僕は、1つのことに集中してしまうと、ほかのことが手につかなくなる
それは、イザヤールさんもわかってる、だから怒ってくれたのかな…
さっきは、この村を守ることが僕の仕事といったけど、実は僕は今日までイザヤールさんに使える「見習い天使」として活動してきた
しかし、なぜかイザヤールさんは急にこの村の守護天使をやめ、今日から僕がその任を継ぐことになる
何故イザヤールさんはやめたのかわからないけど…イザヤールさんに信頼されていると思うと、僕もついついほほが緩んでしまう
「さて、天使エフィータよ、ここ数日間よく頑張ったな、私の代わりにこの村の守護天使を任せた時は少々不安だった、だがお前の働きにより、村人も魔物の恐怖はなく、安心して暮らしてるようだ。
立派に役目を引き継いでくれ…このイザヤール、師としてこれ以上の喜びはない」
そう言われると、さらにほほが緩んでしまう、喜びというか、うれしいというか…とにかく最高の気分だ!!
「ありがとうございます!!イザヤールさん!!僕もこの村の守護天使として、日々精進していきます!!」
「…うむ、それでこそ、わが弟子、これからはウォルロ村の守護天使、エフィータと呼ばせてもらうぞ」
ウォルロ村の守護天使エフィータ…こう呼ばれちゃ、悪い気分にはならない…でも、師匠のイザヤールさんに言われると、ちょっと内心もやもやする、うれしいのか…それとも前任の守護天使がそばにいるから素直に喜べないのか?うーん…少しわからない…
「…ん?!ウォルロ村の守護天使、エフィータよ、あれを見てくれ」
イザヤールさんに言われ、指さされた場所を見てみると、老人と、オレンジのバンダナを巻いた少女が一緒に歩いている
「フウ…フウ…年はとりたくないものじゃ…すまんのお、リッカ、苦労をかけて…」
どうやら、バンダナを巻いた女の子の名は「リッカ」というらしい
「頑張って、おじいちゃん、ウォルロ村まであと少しだよ!!」
そう言って、そばにいる老人をリッカは励ます
すると、すぐ近くの茂みから、スライム2匹とズッキーニャがいきなり飛び出してきた!!
魔物の群れは、リッカと老人を見つけると、すぐに岩陰に隠れた
でも、2人はまだ魔物に気づいていない…
すると、ズッキーニャはそれがわかったのか、持っているやりを両手で持った…
(リッカと老人を…襲う気なのか?!)
イザヤールさんも同じことを思ったのか、すぐに
「これはいかん!!あのままでは魔物に襲われてしまうだろう…
さあっ!ウォルロ村の守護天使、エフィータよ、われらの使命を果たす時だ!!」
そう言い終わるか言い終わらないかの前に、天使の羽を大きくはばたかせ、イザヤールさんは魔物の群れに飛んで行った
僕も、それを追うように飛んで行った…
魔物の背後に回り込む
しかし、降りるときに少し音が鳴ったため、魔物の群れは気付いたみたいだ…
…僕の、「正式な」守護天使としての最初の役割…今果たす!!
最終更新:2009年08月12日 20:45