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『Forest of Doom』 Play Report 第二回(K)

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『Forest of Doom』Play ReportⅡ written by かいや


”トラップスミス”というゴブリン部族を滅ぼしたワイルドエルフの一族があった。
 ゴブリンを滅ぼす時に特に活躍したのが、部族の戦士”黒羽の”エアストスと、客人として逗留していたグレイエルフのコルだった。

 煩わしいゴブリン達を滅ぼし、里には平和が訪れた。
 だが、その平和に潜んだ影が、徐々に里を蝕んでいった。
 クローンと呼ばれる地下で育てられた植物人間が売りに来る茸に常習性があったのだ。
 戦士達の半数が、キノコを燻した煙を吸うだけの怠惰な生活に溺れていた。

 最初にそれに気付いたコルは、”客人”であったが為忠告を出すのが遅かった。
 ある日、忠告を受けたエアストスは、茸を売りに来ていたクローンに斬りかかった。
 それは当然、里の長老達が関わる事件となり---結果、里に蔓延する”麻薬”に気付くことになった。

 彼ら二人が、ダークウッドの森の中にあるという、茸の栽培所と売人を捜す任務を与えられたのは、その日のうちだった・・・。


***********************************
【新しい仲間たち】
 ジャンゴとドクを失った私たちは、酷い状態だった。
 エドとアスバルは、蜂に刺された所がずぅっとしびれているらしくて、いつもの動きが出来る状態じゃなかったし、私も奇跡のほとんどが残っていない状態だった。

 私たちは”前へ”進む為に、休むことにした。
 「道の上はわしが管理しているから安全じゃ」っていうヤズトモロの言葉を信じて、道の真ん中で順番に眠った。
 幸いなことに、私たちは無事に休むことができ、みんなが目覚めた時にはエドとアスバルの痺れも少しだけだけど、良くなっているようだった。


 大鷹の落下地点を目指し、私たち3人は進んだ。
 暫く進むと、アスバルがピタッと止まった。「静かに」と身振りだけで合図されたから、立ち止まって辺りを見回してみた。
 私には全く判らなかったけど、エドが見付けて教えてくれた。
 正体は良く判らなかったけど、人の二倍は高い位置から本体の先が覗いていたし、木々の間から触手が何本も見えていた。(*1)
 ”それ”は、何かを食べているようだった。
 私たちにとって運が悪かったのは、それが食べているものが件の大鷹だったてことだった。

 生き物である以上、お腹が一杯になれば巣穴に移動するだろうとアスバルが言ったので、私たちはそれの食事が終わるまで待つことにした。


 ---ふと、アスバルとエドが注目する方向を変えた。
 あんまりに自然だったから、私は二人の動きも、二人を注目させた人たちの動きにも全く気付かなかった。

 「もしかして困っているのか?」と、森の木々から姿を現したワイルドエルフは言った。
 彼は、背丈ほどもある剣を、黒い羽で飾っている戦士だった。

 「アティアグに3人で挑むつもりなら私は止めないけど、まぁお薦めはしないな」と、森の緑より印象的な翠玉の瞳を持ったグレイエルフは言った。
 彼は武器の類は身に付けていなかったけど、丁寧な刺繍が施された上着に呪文構成要素ポーチを取り付けていたから魔法使いだろうって思った。

 「アティアグ? あれ、アティアグって言うの?」
 「えっと、僕たちアレが食べているものの方に用があるんだけど、どうにかしてどかす方法を知りませんか?」
 きょとんとした声を上げた私のフォローをするように、エドがエルフ達二人に問いかけた。

 グレイエルフの方の眉が若干寄った---人間達は変わったものに興味を持つんだなって言いたそうな顔をしていたけど、口から出た言葉は、ちゃんと私たちの疑問に答えてくれるものだった。
 「アティアグは腐肉を好んで食べる異形だよ。暫く放っておけば、満腹になって巣穴に戻るだろうね。 ・・・その時に”食べ物”を持ち帰るかどうかは、アティアグ次第だろうけど」

 「戦って勝てる相手か?」アスバルが低く問いかける。
 「・・・お薦めはしないって言ったよ?」グレイエルフの答えに、私たちは溜息をついて、そして、その場から少し離れることを決めた。
 自己紹介をするにしても、今後のコトを話し合うにしても、大型の異形の側はやっぱり恐いもんね。


 私たちはまず自分たちの名前を名乗った。
 エルフ達二人はそれに応えて、とある茸を探しにこの森に来た「エアストス」と「コル」だと名乗った。
 ワイルドエルフの方が、エアストス。部族の勇敢な戦士。
 グレイエルフの方が、コル。秘術魔法を使う魔法使い。
 私たちは、”戦の斧”と呼ばれるアイテムを探していることを伝え、その捜索に協力してくれるように頼んだ。どうせ、”茸”を探して森の中を歩き回るつもりだったらしい二人は、「私たちの捜索に協力してくれるなら」と言って、一緒に来てくれることになった。 


 アティアグが去るまで、私たちは体を休ませながら、耳を澄ませ待っていた。
 私以外が一斉に立ち上がった時がアティアグが去った音がした時だった---私は気付かなかったから、エドに教えられてから立ち上がったのだけど。

 アティアグが去った後、大鷹を見たけど、全然ダメだった。
 鞍も、落下とアティアグの食事でボロボロに壊れていたから、手がかりになるような文字もほとんど残ってなかったから。
 ただ、白金貨が入ったポーチと飲み薬が出てきたコトだけが収穫だった。

 足跡を丹念に調べていたアスバルも立ち上がって首を横に振った。
 「時間が立ちすぎて良く判らん」って彼は言った。アティアグが這いずった後から、ゴブリンの足跡を見付けるのは難しそうだから仕方ないなってみんな思った。


 現場から足跡が追えないのなら、森の中の人々を巡って話を聞いて回るしかないってコトになって、まず始めに「変わり者」の狩人がいるという場所を目指すことになった。


(*1)ちなみにアティアグ。生き残った3名は、知識がほとんど振れませんので、正体が全く分からないスリリングな状態でした(笑)。



 【森の狩人】
 森の中に微かに煙がたなびいている場所が狩人の住処だった。
 正確に言えば、煙がたなびいているのは炭焼き小屋だったけど、実際の住居より炭焼き小屋の方が随分と立派に見えた。近くによってよく見てみれば、煙突部分にも仕掛けがあって、吹き上がる煙が遠くから見えにくくなるような構造になっていた。

 住居の入り口で声を掛けると、中から筋骨隆々とした男性---上半身裸---が出てきて、「あらぁん。なんのご用?」と言った。
 随分変わったしゃべり方だなぁって思ったけど、対応自体は普通だったからすぐに気にならなくなった。

 「立ち話もなんだし、狭い所だけどどうぞ?」ってあげてくれたお部屋の中には、何体かの動物の剥製が有った。中には熊の剥製があったから、「熊を倒せる位凄い人なんだなぁ」ってまじまじと見てたら、「罠を仕掛けて捕らえたのよぉ」って教えてくれた。
 追いかけるタイプの狩人さんじゃなくて、罠を仕掛けて待ち受けるタイプの狩人さんだってことがそこで初めて判ったんだ。


 私たちは、彼---クイン---に森の中の様子を教えて欲しいって頼んだ。
 そうしたら、彼は私たちをじっくりと見回した後、エドを指さし「そこの彼があたしに勝てたら教えてあ・げ・る♪ 貴方が賭けるものは、貴方の”大切なもの”よ」って笑顔で言った。どうやら腕相撲で勝負して勝てたら情報を教えるって言う態度だった。
 エドは、腰に差したロングソードをぎゅっと押さえて考えているようだった。

 戦士のエドが剣を賭けてまで聞かなきゃいけない情報なのかなぁ?
 周りを見回したら、みんなも凄く微妙な顔をして考え込んでいるようだった。(*1)

 「貴方が勝負してくれないならぁ、そこの彼でも良いわ♪」と言うクイン。
 「私が腕相撲をする意味が無い。情報を聞きたいのは彼らだからね」と冷たい目で応えるコル。
 「いやん。その冷たい眼差しが素敵! そうねぇ、じゃあ、貴方でも良いわ♪」とクイン。
 「・・・私よりエドの方が適任だと思う」とやや身を引きながらアスバル。

 「どうするの、エド?」
 確かに、見た目はどうであれ、一行の中で一番の力持ちはエドだったから、私は問いかけた。(*2)
 「・・・うん。やるよ。やっぱり情報は聞いておきたいから」

 そう言ったエドは、クインの向かいの席に座って、腕相撲の勝負を受けた。
 勝負自体は早かった。開始の合図と同時に中央で一瞬動きを止めた二人の腕だったが、エドが勢いで押し切った。
 「いやぁん。負けちゃった。んもぅ、見かけに寄らず凄いんだからぁ!」って笑いながらクインが言ったのが勝負の終わりだった。


 私たちはクインから、森の中の幾つかの拠点の話を聞けた。
 その中には「大魔法使いの家」(ヤズトロモの塔とは別ね)や、「古井戸」などがあった。
 ・・・けれど、直接的に”戦のハンマー”に関わりそうなゴブリンの居所は分からなかった。
 仕方がないので、私たちは近い順に拠点を巡ることにした。

 クインの家を辞する時、エドはクインから「レヴィテーション」のポーションを貰っていた。
 エドは、みんなに好かれるから、色々な物をプレゼントされるんだねぇ。


【河の渡り方】
 まず目指したのは「大魔法使いの家」。だけど、そこに行く為には、河を渡って戻らないといけなかった。
 クインは、上流を泳いで渡っているって言ってたから、上流を目指し・・・そして、無理だって思った。
 川の流れが速くて全然泳ぐ所じゃなかったよ。命綱をつけていたから、流されずにすんだけど、その綱もキレそうな勢いで引っ張られちゃってビックリしたよ。
 ・・・クインは、こんな所泳いで渡れるんだって驚いた。

 結局、コルの意見---「怪我をしてなければブラッド・イールも寄ってこないんだし、川底を歩いて渡ったら?」---に従って、例の橋がある場所まで戻ることになった。
 橋の架かっている辺りは、流れも緩やかだし、歩いても渡れるだろうからって、私たちはそこまで戻ることにした。


 蜂の群に関しては、河を渡って来れないってコトもあって、対岸から火矢とスリングで巣を壊し、怒って出てきた所を同じく遠距離から倒すって方法で排除することが出来た。

 まず私から、川底を歩いて渡って---ちょっと登るのに苦労して、慌てて後から追いかけてきてくれたエドに手伝って貰ったけど---対岸に上がる。後は、私が身に付けていたロープを使って(使わなくても平気そうだったけど)順番にみんなで河を渡った。
 ブラッド・イールは、血を流してさえいなければ寄ってこなかったから、全員無事に渡ることが出来た。

 「これなら、ジャンゴの遺体を拾ってこれるかも」って思ったから、みんなにそれを話して時間を貰った。
 河の中は濁っていて探しにくかったけど、ジャンゴの遺体と、それから比較的形が残っている何人かの遺体を引き揚げることが出来た。
 ほとんど真っ白い骨だけになっちゃってたから、装備品で見分けるしかなかったけど、漸く遺体を弔うことが出来てほっとした。ずうっと水の中に置いてきぼりだと寂しいだろうって思ってたから。

 ジャンゴの遺体を埋葬し、彼の武器を墓標代わりに指す。
 祈りを捧げた後、私は彼が使っていたチェインシャツに着替えることにした。本当はジャンゴと一緒にヤズトロモの所に戻れるのが一番だったんだけど、せめて、何か持ち帰りたかったんだ。


 着替えて、立ち上がった時に、どこからか声が聞こえた気がした。

 『その鎧が貴女を守ってくれますように』

 それは、優しいジャンゴの声の様に聞こえた---。


(*1)エドとフィアナ以外は”大切なもの”がロングソードでないことに気付いていた模様です(笑)。
(*2)修正値的にはアスバルさんも同じ位だった気がするな。



【蜘蛛と大魔法使い】
 道沿いを「大魔法使いの家」を目指して進む途中、蜘蛛の巣に道を遮られた。
 通常の蜘蛛よりどうも大きな蜘蛛が作った巣のようだったから、松明に火を点け蜘蛛の巣を焼き払ってから進むことにした。

 脇道を避けて通ると蜘蛛以上の脅威と出会いそうだったから、なんだけど、蜘蛛にはワルイコトしちゃったかなぁって思って見ていたら、案の定、蜘蛛の方も怒って襲いかかってきた。
 小さな蜘蛛---と言っても人間サイズ---の方は、大して問題じゃなかったけど、人の二倍のサイズの蜘蛛は強かった。糸で絡め取って、動きが鈍った所を攻撃してくる技がやっかいだった。

 けれど、エアストスの大剣が、ほんの一瞬だけ見えた蜘蛛の腹部を切り裂いたのが致命傷となって、私たちは短時間で蜘蛛たちに勝つことができた。

 蜘蛛の巣の中を捜索すると、今までこの蜘蛛の犠牲になったんだろうなという人たちの遺品が出てきた。
 魔法の巻物や、飲み薬も今の私たちにとってはありがたかったんだけど、魔法の大剣が出てきたのには驚いた。錆びたプレートメールを着た遺体が持っていた剣が、魔力を帯びていたんだ。

 エアストスは、その剣を引き継ぐことにしたらしく、「貴方が戦えなかった分、俺が引き継ぐ」って決意をしていた。「この剣で敵を倒した証を増やしたいものだ」って言っていた。敵を1人倒す度に、1枚黒い羽で武器を飾ることにしているんだってコトをその時初めて知ったんだ。

 でも、その台詞をグァームの方を見ながら言ってたんだよね・・・だから、もしかして、グァームの黒い羽を狙っているのかなぁ?
 グァーム自身は「お前の黒い羽は良いな」って言われて満更でも無さそうだったから、黙っていた方が良いのかなぁ?


 漸く辿り着いた「大魔法使いの家」は、普通の小屋だった。
 入り口に大きく「大魔法使いアラゴンの家」って看板が立っている以外は、こじんまりとした木の家だった。 入り口はひとつ。裏口がひとつ。珍しかったのは、家の側面にガラスが嵌め込まれた窓が有ったこと位かな。

 まずは、入り口で声を掛けてみたんだけど、「お前達、わしを騙して財産を持っていく気だろう? 帰れ帰れ! 帰らんと石にするぞ!!」って怒られるだけだった。
 そして、入り口には鍵がかかっていた。
 エアストスは「開けられるぞ?」って鍵を見て言っていたけど・・・いきなり壊すのはダメなんじゃないかなぁ?(*1)

 「盗人じゃありません」ってどれだけ一生懸命話しても、全然通じなかった。
 ・・・困ったねぇって周りを見回したら、2人ほど減っていた。
 減っていた二人はエアストスと、アスバル。

 窓をそっと覗きに行っていたエアストスは、家の中に紫色のローブを纏って杖を構えた老人が一人いるって教えてくれた。 
 裏口に回り込んだアスバルは、裏口にも鍵がかかっているってコトを教えてくれた。

 相談した結果、彼が話を聞いてくれそうな何かを見付けてから、また来ることにした。
 ・・・”何か”が何かなんて全然判らなかったけどね。


【井戸と巨人】
 次に行ってみたのは、井戸だった。
 井戸は、もう使われていないらしく、朽ちている雰囲気があったけど、水はまだ湛えられている様だった。

 井戸の中を良く覗いてみると、小さな横穴が奥に続いているが見えた。
 私たちが通るには、這いずって進まないとダメだろうけど、小型の生き物だったら住処に出来そうな横穴だった。
 井戸の周りを調べていたアスバルが、「小さな生き物の出入りがあるようだな」って言っていたから、やっぱり何か住んでいるのかも。

 確認の為中に入り込むのは危険だからって話になって、私たちは少し離れた場所から井戸を観察することにした。小さな生き物は頻繁に出入りしているみたいだから、出てきた所を見て、強さや習性を知ってから突入するかどうか考えようってコトになったから。

 1時間が経った頃、2体の生き物が井戸に近づいてきた。
 「タイタン・ケイブ・トロルだね」ってコルが教えてくれたけど、ちゃかす雰囲気が無かったから厄介な相手なのかもって思った。
 私たちは、息を殺して彼らが通り過ぎるのを待ったけど、運悪く片方のトロルに見付かって戦いになってしまった。

 でも、戦い自体はあっさりと勝負がついた。
 エアストスが気合と共に大剣を振るい1体のトロルをあっという間に切り伏せる。
 と同時に、その横を駆け抜けたエドがもう1体のトロルの胴体に深い傷を負わせていた。
 傷の上を正確に切り裂くようにアスバルが剣を振るって、そのトロルに止め。
 私は、”武勇”の奇跡を神に願っただけで、武器を振るう間も無い位の戦いだった。


 さらに1時間が経ち、2時間が経った時、異変は起こった。
 森の遠くから、”ずしんずしん”って言うもの凄い音が響いてきた。それが足音だって判った時は息が止まるかと思った。森の木々の間から見える頭部は大きいけれど人型だった。
 「タイタン・フォレスト・ジャイアント・・・そんなものまで住んでいるのかこの森は」コルが呟いた。
 「まともに戦える相手じゃないな」アスバルも厳しい表情だ。
 さっきトロル達から隠れた時の比じゃない位、私たちは必死でジャイアントから隠れた。(*2)

 幸い、ジャイアントの進行方向と私たちがいる場所が違っていたらしく、ややもするとジャイアントは遠くへ去っていってくれた。
 思わずほっと息をつき、隠れていた頭を上げたら---ちょうど井戸から出てきた小型の生き物と目があった。

 ・・・えーと。

 私もビックリしたけど、相手もビックリしたんだろうね。すっと井戸の中に消えて行ってしまった。
 「ごめん、みんな。グレムリンに見付かっちゃった」って言ったら、「井戸から出てきた生き物はグレムリンだったんだね?」ってコルに確認された。
 そうだよって答えたら、「数にもよるけど結構厄介な相手が住んでるんだなぁ」って言って、何か考え込んでいるようだった。


 結局、見付かってすぐ乗り込んでも警戒されているだけだからと言うことで、他の地点を先に調べてくることにして、この日は井戸の側の”道の上”で眠ることになった。 


(*1)PLはエアストスが<解錠>技能を持っているのを知ってますが、バーバアリアンが「開ける」って言ったら壊すんだろうなぁってPCは思う気がするので、この表現にしてみました(笑)。
(*2)でも判定値は同じとか言いっこ無しです(笑)。



【雷雨】
 たとえ遠くからでもジャイアントと出会ったことは、意外と衝撃だったのかも知れない。
 頬に当たる雨と、遠い雷鳴で目覚めた時に、私はそう思った。
 普段無意識に行っている翌日の天候予測を、その日に限って私もアスバルも同時に忘れていたから。(*1)

 幸い、みんなが目覚め動けるようになっても、まだ雷鳴は遠かったけど、このままじっとしていたら、すぐに雷雲の中心地に飲み込まれるのが判った。
 雷雲の中心は危険だ。
 ランダムに雷が絶えることなく振ってくるし、雷は金属の物---鎧とか武器とか---を狙って落ちる性質があるから、冒険者にとってはより危険だ。
 後数時間のうちに雷を避けられる場所---屋根のある場所に避難する必要があった。

 すぐ目の前には井戸があるけど、その中にはグレムリンがいて。
 少し遠い場所には偏屈な魔法使いの家があった。


 私たちは、偏屈な魔法使いの家を目指すことにした。 
 だって、雷雲が迫ってくるってことは、見れば判るし、命がかかっているとなれば、一時の避難位なら対価を払えば受け入れてくれるって思ってたから。

 だけど、再び訪れた魔法使いの家では、またまた拒絶されてしまった。
 「雷雨が来ること」「一番酷い時間帯だけ避難させて欲しいこと」「対価を支払うこと」・・・いくつか追加の状況を並べても全然ダメ。家の扉を開けてくれもしなかった。


 そうこうするうちに、雨が一層激しくなり、大きな雷雲も近づいてきた。
 「ねぇねぇ、まずいよ。もう数分で雷が落ちるくらいまで近づいてきてるよ!」
 流石に私も慌ててみんなに言った。

 「・・・仕方ない。強攻策だな」
 アスバルの言葉に、一瞬みんな沈黙した後・・・黙って頷いた。

 扉にかかった鍵とエアストスが---壊すんじゃなくて!---鍵開け道具で綺麗に開ける。
 私は少し離れた位置から、扉をギザームで押し開ける・・・だって、「石にしてしまうぞ!」って脅された言葉が本当なら、魔法使いの視界の前に立つのはダメだから。
 そして、扉の前にはコルが作った囮の幻覚を置く。

 幸い、扉が開いただけでは魔法の攻撃は無かった。開け放たれた扉の向こうには家具で作ったバリケードがあったからかもしれない。
 それをエドが押し倒し、アスバルが一番奥で杖を構えている老魔術師に接近する。


 しかし、その後が思ったより大変だった。
 何が大変だったって、魔法の力じゃなくて、物理的な抵抗の方。
 杖で殴りかかってくるし、エドとエアストスが押さえようとする手をかいくぐって来るし、あまつさえ取り出したダガーで斬りかかってくるしまつ。
 ・・・強盗に必死で抵抗しているおじいちゃんを見てるみたいで、心苦しいかったけど、ゴメン、こっちも命がかかっているから。

 なんとか武器を落とさせて、おじいちゃんを取り押さえた時には、私たちは随分怪我をしていた。(*2)
 ・・・なんだか、トロルと戦った時より怪我をした気がするよ(溜息)。


 でも、その後は凄く不思議だったんだよね。
 倒しちゃった家具とか片づけている間に、コルと何か話しているなぁって思ってたら、「おおお、お前さんだったのか久しぶりだのぅ。すっかり忘れておってすまなんだのぅ」とか言って、お爺ちゃんの対応がもの凄く良くなったんだもん。(*3)
 コルもコルで「久しぶりだから忘れてるのも仕方ないよ」って笑顔だったし、もしかして、知り合いだったの?

 仲良くなったお爺ちゃん---アラゴンに、結果的に押し入るようなことになってごめんなさいってみんなで謝って、家の中を掃除した。
 それから、お茶を沸かして、みんなで暖かい飲みものを飲んで、少しだけお話をすることが出来た。
 アラゴンお爺ちゃんは、久しぶりに来た友人が嬉しかったのか、1冊の本と幾つかの飲み薬を差し出して「これは、この森に住む動植物の図鑑じゃ。こっちの飲み薬は、”力を増す”ものと、”能力回復の霊薬”じゃ。わしが持っていても使わんし、お前さんの役に立てておくれ」って言ってくれた。
 コルは、「ただでは貰えない」って言って、グリフォンの落下地点で手に入れた白金貨を使って良いか?って聞いてきた。
 私に異論は無かったし、他のみんなにも異論はなかったから、白金貨の入った袋をそのまま置いてきた。

 嵐の中心が去ってすぐ、コルが「そろそろ立ち去らないと」ってみんなを急かしたので、旅立つことになった。
 「もっとのんびりしていっておくて」ってアラゴンが言ってたのに、随分慌ただしい出発をしたんだ。(*4)


【追い剥ぎ兄弟】
 次に私たちが出会ったのは、2人の男性だった。
 雨宿りをするように、辻に置いてある岩の上でじっと座ってたんだけど、私たちを見るなり「通行料を出しな」って言ってきた。

 「なんで通行量なんているの?」って聞いたら、「俺たちは森の大魔法使いから整備を委託されてるんでなぁ」って答えてくれた。
 ・・・あれぇ? でも、ヤズトロモさんそんなこと言ってなかったよね?

 「僕たちは、その大魔法使いの塔から来たんだけど、そんなこと一言も聞いてないよ」って、エドも言ってくれたけど、「じゃあ、言い忘れたんだろうなぁ」って取り合ってくれなかった。

 仕方ないから、彼らの横を通り抜けて行こうとしたら、いきなり弓をいかけてきたから戦いになった。
 トロルより、アラゴンより弱かったから、すぐに決着は着いたけどね。


 でも、問題はそのすぐ後で。
 昨日も遠くから眺めたタイタン・フォレスト・ジャイアントの足音が響いてきたんだ。 私たちは慌てて隠れる準備を始めたんだけど、事情が良く判ってない追い剥ぎ兄弟(「兄貴」「弟よ」って呼び合ってるから兄弟だったらしいんだ)は、「なんだか知らねぇけど、モンスターに見付かっちまえ!」って態度だったから、凄く困った。

 「見付かったら、貴方達もみんな殺されちゃうかも知れない相手だよ!」って話したけど聞き入れて貰えなかった。
 「少しだけでも良いから静かにしていて」ってお願いしてもダメで、困っていたら、後ろから兄の方が剣の峰で打って気絶させられてしまった。それを見て、弟の方は黙ったんだけど。
 ・・・縛られてるのに酷いことしたくなかったのになぁ。させちゃった私にも問題あるんだろうなぁ。ちゃんと説得出来なかったのが問題なんだもんね。
 ごめんなさい。


 昨日より近くを通ったジャイアントだったけど、やっぱりそのまま通り過ぎていってくれたから誰も怪我しないですんだよ。
 ”月”よ、ご加護をありがとうございます。


 間近でジャイアントを見たせいか(そして隠れるのに手を貸したせいか)、私たちと少し話をしてくれた兄弟から、銀の鍵を譲り受けた。
 この鍵は、彼らが発見した地下墓地への入り口を開く鍵かも知れないってコトで、大事にあずかることにしたんだ。
 墓地には異様な雰囲気が漂ってたって言うし、いつか言って浄化しないとダメだもんね。


【真円の沼】
 移動をしている間に夜のとばりが降りてきたので、休むことになった。
 この森の、道の上なら夜に進んでも良いんじゃないかなってちょっと思った。 ・・・みんなは夜に活動するのは辛いかも知れないけど、私には最適な時間なのになって。

 そんなことを思いながら野営の見張りに立っていると、ふと心惹かれる何かを感じた。 一緒の番だったエアストスには心配をかけちゃうけど、どうしても確認したいからってお願いして、野営を少し抜け出して、心の導きに従って進んだ。

 嵐が過ぎた後の、細いが美しい月の光が輝かしく照らす森を進む。
 すると、沼のほとりに出た。
 その沼は、真円の沼で、まるで地上に満月を描き出したようで、聖なるオーラを感じる場所だった。

 ”月”が、我が神が導いてくれた出会いだろうから、私は、今夜の祈りをここですることにした。
 天空の月を仰ぎ見るように、祈る---感謝を込めて。
 月光を身に取り込めるように、両手を広げて願う---いつでも貴方と共にありますようにと。

 すると、不思議なことにいつも以上に力が漲ってくるのを感じた。
 本当に心の中に小さな月が住まったように、清々しい力が溢れてきた。(*5)


 祈りを終え、ふと沼を見ると、中央の辺りに不思議な輝きを放つ曲刀が浮かんでいるのが見えた。
 まるで、月光の様な輝きを発する美しい曲刀だったんけど。

 ・・・翌朝、みなを案内してきた時には、シミターは消えてしまっていたから、「夢でも見たんじゃないのか?」って馬鹿にされちゃった。
 ちょっと、悔しかったなぁ。凄く綺麗なシミターだったから、みんなに見せてあげたかったのに。
 ・・・縁があれば、きっとまた見えるようになるから良いか。 


【矢印の道と樫の木のうろ】
彼らと別れて、暫くすると、道に大きく矢印が書いてある地点に出た。
 矢印の通りに進んでみると、次の分かれ道にも矢印。
 そこで矢印通りに進むべきか、次の目的地を目指すべきかちょっと悩んだけど、結局どれが直接の手がかりになっているか判らないってことで、矢印を追うことにしたんだ。


 矢印を幾つか過ぎた先には、大きな樫の木があった。
 樫の木には大きなうろがあり、その中を覗き込んだら、下に広い空間が広がっているようだった。

 私たちは順番を決めて、うろの中---ちょっと狭かったけど---を降りていった。
 地下には広大な空間が広がっていて、茸人間が茸の栽培をしている場所みたいだった。
 「ここだな」ってエアストスが武器を握った。
 ・・・え? 部族に流行っている麻薬効果のある茸って、これのこと?って思ってたら、「白が麻薬効果、赤は毒茸だけど、ある種のモンスターには珍味って思われる様に品種改良されているようだね。緑は、生命力を回復する効果がありそうだね」ってコルが補足してくれた。

 最初は警戒して茸人間---クローン---の動きを見ていたけど、彼ら(?)茸の栽培以外には全く興味がないらしく、横を通り抜けても平気だった。

 だから、私たちは、奥にあった上に続く階段を目指すことにした。
 階段の右手は手摺りもなく踏み外せば栽培場に落ちる作りだった。
 左手は空間の壁際に沿っていて、そこにはおよそ10ft間隔で凹みがあった。
 1つ目の凹みには、木の筺や樽が。
 2つめの凹みには武装した茸人間がいて・・・やっぱり襲いかかってきた。

 茸人間自体は、私でも倒せる位だったんだけど、彼らと戦っている時に3つめの凹みから出てきた”敵”は、みんなが全力でかかっても倒せるかどうかという敵だった。

 長剣と、炎の鞭で武装した大型のデーモン。
 デーモンの中では下位にあたる、レッサー・ファイアー・デーモンだったけど、私たちにとっては脅威だ。

 まずは、炎の壁を立て、私たちが複数でデーモンと戦いにくいように戦場を区切る。
 そして、手にした長剣で近くにいたエアストスを切り裂いた。多分、その一撃を私が喰らっていたら、一撃で絶命していただろう斬撃を、エアストスは気合を入れることで耐えてみせた。
 少し遠くにいたアスバルに繰り出した炎の鞭は、縦や鎧をすり抜けてアスバルの力を奪っていったようだった。
 しかも、デーモンが何かを呟くと、額の王冠が淡く輝き、栽培場で茸の世話をしていたクローン達が階段を登って近づいてこようとしだした。

 下から上がってくるクローン達は、一番後ろにいたエドがくい止めてくれた。(*6)
 もともと戦っていたクローンたちは、コルの”グリース”の魔法が入り口にかかっていることもあって、転んだり立ち上がったりする隙に、私が押さえることが出来た。

 コルは「・・・っ。この距離ですら、魔法が使えないのは面倒だねっ」って間合いを取りながらも、苦心して壁の魔法(後で聞いたら幻覚だったんだって)を作ってくれた。
 壁の魔法を本物だと信じたデーモンは、壁のこちら側にいる私たちが下がりつつ体勢を立て直すのを見逃した。

 この日の私には、神の加護があった。
 だから、いつもなら癒せないようなエアストスの深い傷も、一度の祈りで全て塞ぐことが出来たから。

 エアストスは、デーモンが幻の壁を見破り、前に出た瞬間を狙い突っ込んで行き、斬撃を浴びせる。青白い魔力を宿した大剣が大きくデーモンを切り裂くけれど、倒せはしない。
 アスバルも、炎の壁を避け、接敵すると切りつけた・・・けれど、エアストスの時とは違って、切り傷が見る間に治っていく。
 それを見て、「もしかして、魔法の武器じゃないと効きにくいの?」って私は気付いた。気付いたけど、武器に魔力を付加する魔法は、巻物でしか用意していない。
 ここで巻物を取り出して、魔力を解放させると、絶対にデーモンから攻撃を受ける・・・例え心に準備していたとしても、敵の攻撃をかわしながら呪文を唱えられるほどの熟練さは私にはまだ無かったけれど。

 私の悩みを余所に、デーモンは、口から炎のブレスを吐き、剣を振るい、鞭を繰り出す。(*7)
 そのひとつひとつの攻撃に仲間が傷つき、限界は近くなっている。


 ・・・うん。やるしかないよね。
 私は決心すると、デーモンの前をわざと移動しようとした。先に隙を見せて、攻撃を誘って、そうして巻物を使う時には安全にしたいって思ったから。
 でも、私が動く前に、アスバルがわざと大きく踏み込んでくれた。

 ---でも、デーモンは薄ら笑いを浮かべただけで、そのアスバルの動きを見逃した。
 その嗤いが『仲間の為に隙をつくるとはなぁ。だが、誤魔化されんぞ』って言っているみたいで・・・すっごく腹が立った。

 私も少し怪我をしていた。みんなよりも全然軽い火傷だけれど、それでも元々デーモンの長剣で切られたら倒れるだろう位しか耐久力が無いのは、私が一番良く知っていた。
 けれど、デーモンだって、切り傷から蒸気のようなものを沢山吹き出していたし、きっと辛いはずだって思った・・・ううん、”判った”んだ。
 だから私は、アスバルのすぐ後ろに移動して[魔力付与]の巻物を使った。
 案の定、デーモンは攻撃してきたけど、私はいつもなら痛みで失敗するだろう詠唱を、最後まで貫き通せたし、大怪我を負ったけど、ギリギリ立っていられるだけの生命力を残すことが出来た。
 神様と、ジャンゴの鎧が守ってくれたおかげだったんだと思う。

 さっきまで、どうせ大した怪我を負わせられないって侮っていたアスバルの剣は、今やデーモンにとっても脅威となった。
 懐に踏み込んでいたことも幸いして、アスバルは淡く輝く剣で易々とデーモンの腹部を切り裂くことが出来た。

 その一撃が決め手となり、デーモンは倒れた。
 彼ら異界のものが倒された時、その死体は現世には残らない。
 炎と蒸気となって消えていき、後には、長剣とサークレットだけが残された。


 サークレットは、クローン達に命令を下す為のものだったらしく、それを被ったアスバルをまるで王様の様に持てなしてくれるようになった。(*8)

 私たちは、クローンが差し出してくれた「緑の茸」を使って傷を癒し、少しここで休むことにした。
 もちろん、エアストスとコルは、麻薬の原料となる茸を燃やしてまわるのに余念がなかったんだけど。


      -----第3回目に続く。



(*1)DMが、何故か急に天候ランダム表を降り出した第2回セッションなのでした(笑)。でも、翌日の天候予測なら必要達成値15です。2人とも出目10で15には届くのです・・・まぁ、宣言しなかったから「朝起きたら雷雨」でも仕方ないかなって思うけど、超大変でした。
(*2)ただのソーサラー1Lvだったらしいのに、組み付きからの際の機会攻撃には成功するし、組み付いても抜けてくるし、杖を武器落とししたらダガー抜いて斬りかかってくるしで、大変でした。
(*3)ええと、具体的に対応が良くなった理由をあげると、コルの[チャーム・パーソン]、みたいな?(笑)
(*4)持続時間が切れるとかいう大人の事情があった模様です。
(*5)この時にセットした呪文を使用する場合、≪呪文威力強化≫がつくという効果を頂きました。
(*6)エドPLさんが体調不良で相対した時を見計らってデーモン戦を仕掛けるのはどうかと思います!>DM(言いがかり)
(*7)一応言っておきますけど、1Rに全部出来るわけじゃないですよ?(笑)
(*8)当然なんか意志セーブは振らされてましたけどね、ええ。



  • 感想などありましたらこちらまでどうぞ。
  • >かいやさん
    レポート&キャンペーンお疲れ様でした。
    さすがに書きなれておられて読みやすいレポートですね。
    いつか自分も挑戦してみたいです。
    三回目のレポートも楽しみにしております。

    >天候&デーモン
    今となってはいい思い出ですが、プレイ時にはそりゃね
    ーぜDMちゅっう話ですよww
    -- sato (2008-03-11 22:05:48)
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