417 名前:名無しさん@秘密の花園 本日のレス 投稿日:2009/07/09(木) 17:29:04 ICP1tPh8

「ねぇ、はじめ…?」

僕と透華は今二人きり。
広い部屋に僕たちはいて、透華は豪華なソファにくつろぎ、僕は透華の紅茶をいれている。

「なーに透華?」

「……何でもありませんわ」

最近よくあるやりとり。
どういうわけか、透華は僕を呼ぶんだけど、その先がないんだ。

「紅茶、やだった?コーヒーにする?」

「いえ、そういうわけではありませんわ…」

一体何なんだろう。気になって仕方がないよ。
だって透華は僕の御主人様。
主人が元気無いなんて、僕まで辛いよ。
だから、理由を教えて欲しかった。

「…透華、教えて?」

「…何をですの?」

「透華の、悩み事」

悩み事。多分、透華は悩んでる。何にかはわからないし、直感でしかない。

「…聞いて、くれますの?」

予感は的中した。少しだけ、嬉しくて。

「勿論だよ、透華」

「…はじめは私をどう想ってますの?」

「…え?」

あれ…透華の悩み事を僕は聞いた。
透華の悩み事って、それ?

「…うーんとね、美人で、かっこよくて、努力家で…」

「…そうじゃありませんわ」

思いつく限り言おうとした。

「はじめは…あの、その…ええと……わ、わ私のことは…す、好きですの!?」

顔を真っ赤にして言う透華。
透華のことは好きだ。かなり。
でも口に出して言ったことなんてなかったからかな。
だから、こんなことを聞いてきたのかな…。

「うん。大好きだよ、透華」

「…それは、その…そういう意味ですの?」

「…とーか。疑うの?」

「い、いえ!決してそんなことはございませんわ…」

透華は可愛い。いつもは凍てつくような、でも鋭い、そんなイメージ。

「…透華は僕、好き…?」

「…勿論ですわ」

そういうと透華は僕を真っ直ぐ見る。

ドキッとした。

透華と僕の視線が絡み合う。
透華の、少し紅潮した表情と、桜色の唇が僕に迫ってくる。
徐々に近づく僕との距離を感じながら、僕は思った。

…僕は今、透華とキスをしているんだ。

憧れに似た存在。
目立ちたがりで、少しだけ意地悪で、それでいてとびきり優しくて。

心臓が高鳴る。
透華と触れた唇から伝わってしまいそうだよ。

透華は僕を抱き締める。
小鳥を抱くかのような優しい力で、だけどしっかりと僕をギュッとする。

うう…心臓の爆音が聞かれてるよ、絶対。

「…緊張、してますの?」

「…う、うん…ドキドキ…しちゃうよ」

自分の顔が紅くなっているのがわかった。熱い。

「…はじめ…。聞いて?」

そういうと、透華は僕の耳に、透華の胸を当てた。

あ…。

「…透華も、ドキドキしてる」

自分の鼓動で気付けなかった。
透華もドキドキしてたんだね。
透華も、僕を凄く好きなんだね…。

「…お互い様ですわ」

「…透華…」

「……はじめ…」

再び交わす口づけは。
今度は深くて、互いの舌を絡ませあう。
温かくて柔らかい、透華。
甘い唾液と共に、僕の中に入ってくる。
ずっと味わいたい、もう離したくない。

淫靡な音が響いていた。

透華は暫くして、僕のメイド服の胸元に手をかける。

「……、と…ぅかぁ…」

呂律が回らないことに気づく。
いかに透華に溺れていたか、気づく。

「…い、いいですわよね……?」

少しだけ、いやらしい目で僕を見る透華。そんな視線がなぜか心地よくて。

でも…。

「……や、ゃだよ…」

そういうと透華は途端に、寂しげな、泣きそうな表情になった。

あ…これじゃ誤解させちゃう…!

「ち、ちがうよ透華。…あのさ、ここじゃ嫌なんだ……ちゃ、ちゃんとベッドで…」

この部屋ではするのは…ちょっと嫌だ。
こんなに明るい場所で、僕の、その、裸を見られるのは…恥ずかしいよ。
それに誰か他の人とか来ちゃうかもしれないし…。

透華は胸をなで下ろしたのか、安心したような感じで。僕に言った。

「…ごめんなさい、はじめ。私としたことが周りが見えなくなっていましたわ…」

そう言って、僕に差し出す手。
僕はその手をとる。

透華の温もりを感じて、少し強くにぎった。透華も同じように、にぎった。
もう、この手は離れない。

明るくて広い部屋を後にし、僕たちは透華の寝室に向かった。
透華と手を繋いで。

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最終更新:2009年07月11日 16:30