「智紀って眼鏡を外すと美少女になる典型的なパターンだよな。コンタクトにしようとか思わないのか?」
「そういうことは純だけが知っていればいいから」

淡々話す智紀の姿を横目で見ながら、つくづく敵わないと思う。
普段無口な分、あいつがいざ口を開くと一言一言がとてつもなく重い。
その言葉にはおちゃらけた俺と違って、余分なものなんて少しも混じっていないし、
癖のない黒髪と同じようにどこまでも真っ直ぐだ。

だから、

「純だけが知っていればいいから」

というたったそれだけで、俺はあいつの目をまともに見れないくらいドキドキしてしまう。
嘘のない本物の好意の前では、冗談なんて通じないって教えられた気分。

俺はこんな見た目だから後輩の女の子に告白されることもままあるけど、
そういう子達に言葉を尽くして誉めそやされるより、智紀にたった一言

「純が好き」

と言われる方がよっぽど嬉しい。
それに、そういう子達よりも眼鏡を外した智紀の方が全然綺麗だということもちゃんと知ってるしさ。

雪みたいに白い肌とそれによく映える漆黒の髪、
出るところは出て引っ込むところは引っ込んだ完璧なプロポーション。
智紀のことを知った後では、他の女の子に興味が沸かなくなるのも当然だと思う。

あいつと二人で朝を迎えて、気だるい気分のままベッドに横になっている時間が好きだ。
お互い起きていることを確認して取り留めの無い会話をした後で、智紀がコーヒーを淹れに行く。
やがてカップを二つ手に持って帰ってくれば、生まれたままの姿が朝日に包まれて、息を飲む程美しい。
俺はそんなあいつを見つめながら

「お、智紀さん、今日もパイオツカイデー、コーマンルーユーっすね!」

ドス!!!

軽口を叩き、いつもぶん殴られてる。



おしまい

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最終更新:2012年06月17日 09:40