===注意書き===
『ブランデーは控えめに』の続きっぽいもの。
普段よりエロは軽めに書いたつもりだけどがっつりエロメインなので苦手な人は回避をお願いします。
あとキャラ崩壊気味かもしれず。
===注意書き===





「はじめ、その…ええと、あの北切りですけど、どう思いましたかしら?」

隣で透華があらぬ所を凝視しながら話を切り出す。
これで三回目。またしても麻雀の話。
メイド服に身を包んだ国広一は、流石に少しゲンナリしつつもその感情を押し殺し勤めて明るく返事をする。

「…うぅん、透華の判断は問題なかったと思うけど」

だが、その声には少し疲れがにじみ出てしまっていた。

***

酒の勢いを借りたとはいえ透華とはじめが身も心も結ばれたのが数日前。
主人と専属のメイド、お互いを深く理解する親友、それに加えて恋人同士になった二人は、
しかしそれ以来お互いに指一本触れていなかった。

いや、着替えや身の回りの世話をするときはもちろん触れないわけにはいかないが、
キスはおろか、若いカップルが当然してもおかしくないスキンシップは皆無に近いと言ってもいい。

それでもふと、指が触れあう事はあった。
手を繋げるほど近くに寄り添うのもいつものことだ。
何気なく顔をあげると目線があったりもした。

だが、そのいずれも透華は顔を耳まで紅く染めてはじめを避けるように逃げてしまうのだ。

(攻められっぱなしは性に合わないって言ってたのはなんだったのさ…)

はじめは、美しい裸身にシーツをまとわせ、震える声で透華がそう宣言したあの朝のことを思い出す。
初めて結ばれた日の朝、彼女は次は自分がはじめを愛する番だと、そう言ったのだ。
それを思い出すたびに胸の奥がきゅうと締め付けられ、頬が、身体が熱くなる。

気高く、美しいその姿。
それでいて、己の発言で羞恥に身を染める可愛らしい心。

そんな彼女に愛を囁かれ、抱かれるという想像をするだけで、はじめはたまらなくなってしまう。
ましてや、焦らされるように濃密なスキンシップを避けられていたのだ。
だから――そんな彼女に抱かれる想像で自慰行為を行ってしまっても仕方ない、とはじめは思う。

愛の言葉を囁かれ、心が繋っていることを確かめられれば。
あるいは、手を握ったり、寄り添ってお互いを感じることができたなら。
毎晩、透華を想いながら自分を慰めるなどという事はしなくてすんだかもしれない。
だが、期待させられ、焦らされた彼女の身体は今や透華を欲して疼き、今だって隣の彼女を意識して――

(ボクってこんなにエッチな娘だったんだ…)

ぼんやりと思いながら、スカートの布地をぎゅっと掴み、身体の疼きをごまかすように腿をすり合わせる。
今日、何かを決心したような透華に話がある、と部屋に誘われた時には期待と不安に身を焦がしたというのに。
身体を念入りに清めながら、最初は手を繋いでキスからかな…と手順に思いを馳せたりしたというのに。

肝心の透華は話を切りだそうとするたびに顔を赤くしてまごつき、先ほどから麻雀の話に逃げてばかりなのだ。

「は、はじめ?」
「うん?何、透華?」

多分、四度目。
そろそろ心も身体も限界に達しようとしていた。

「その、私、あ、あなたを…」

耳まで赤くし顔を伏せるようにした透華の目線が泳ぐ。
黙ってさえいれば怜悧とさえいえる整った美貌が羞恥に染まっている。

自分を意識してくれるのは、嬉しい。
もし自分に対して肉欲を抱いてくれているのなら…心だけではなく身体を欲してくれているのなら。
それだけで悦びが身体を駆け巡るほどだ。

だがこれ以上焦らされる事に、はじめはもう耐えられなかった。

「透華、ボクのこと好き?」
「え、ええ…なに…を?」

すっ、とさりげなく手に手を重ね、指を上から絡める。
白く滑らかで細い、きれいな透華の指。
自分より長くて、手品をやるならこんな指がほしかったな、と思った指。
今は別の理由で意識せざるを得ない、指。

「ふぁ?!は、ははは、はじめ?」

はじめは透華の手を無言で両手で包んで身を寄せた。
透華の身体がびくん、と震え緊張が伝わってくる。

「ボクが…欲しい?」
「っ!」

何かを言いたげに口をパクパクさせる透華を見つめながら、自分はエッチな顔をしてるんだろうな、とはじめは思う。
自分が透華のものであるという、恋人であるという実感が欲しい。
かつて鎖や近くにいることで得られていた充足よりも、強い感情。
透華がしてくれたなら、それが得られる気がして。

ボクも欲張りだな、と心の中で自嘲しつつ微かに震える透華の手を自分の胸にゆっくりと導く。

「ボクは、透華が欲しいな…」

震える手が薄い胸に押し付けられ、透華にはじめの心臓の鼓動が伝わる。
激しく打つその鼓動は、言葉以上に強い感情を透華に伝染させる。

「透華に…抱いて欲しい」

顔を赤くして魅入られたようにはじめを見つめる透華の手を引っぱってゆっくりと仰向けにベッドへ倒れこむ。
手を引かれバランスを崩して押し倒すように覆いかぶさってきた透華の金髪が、乱れてぱさり、とはじめの頬にかかった。
はじめが小さく微笑んで目を、瞑る。

暗闇の中、どくん、どくんと自分の鼓動の音が響く。
透華の匂いに包まれながら、はじめは不安を抱えながら、透華を待った。

そう、不安なのだ。

そもそも、はじめの方から、それも酒の勢いで身体の関係を持ってしまった。
とはいえ、はじめは透華の心だけではなく身体とも、全てと繋がりたいという想いを抱えていたのも事実。
だが、果たして透華ははじめの身体に興味を持ってくれるだろうか?。
愛を交わしたいと、自分を欲しいと思ってくれるだろうか?。

貧相な身体だという自覚はある。透華が原村和を意識しているのも知っている。
それは、ライバル心であり決して自分が嫉妬するような感情ではないとわかっていても。

比べてしまう。女性として意識せざるを得ない身体に。透華の感情を強く向けられる立場に。
嫉妬の疼きが心をジリジリと焦がしていく。

(透華はボクみたいな子には興味が湧かないのかも…)

そんな考えが頭を掠めてしまう。
現に、透華から性的な接触を求めてこないではないかと。
大事に思ってくれてるのは知っている。けれども、それとこれとはやはり別なのかもしれない。
はじめはこんなにも透華の心を、身体を、全てを求めているというのに。

今日、透華が思わせぶりな態度をとっている事すら不安で信じられなくなる。
そう、前回一方的に攻められたと、プライドを傷つけられたという理由で今回みたいな――。

グルグルと頭をめぐる思考を中断するように唐突に訪れる、芳しい香りと唇に押し付けられた柔らかい感触。

「あ…」

はじめは、びくりと身を震わせて閉じていた目を開けた。

***

目の前に透華の顔。
ぎゅっと目を瞑り、はじめの肩を掴んだ透華が柔らかい唇を押し付けてきている。

どくん、と心臓が跳ねる。

荒い鼻息が顔にかかり、押し付けられた暖かい身体から自分に負けないほど激しい鼓動が伝わってくる。
柔らかくて暖かい唇からまろび出た舌がそろそろとはじめの歯列を軽くノックする。
ただ、それだけで。不安が溶けて喜びがはじめの小さな身体を貫き、満たしていく。

(とーか…)

うっとりと心の中で呟き、全身を満たす喜悦の中、即座にその舌を迎え入れる。
待ちわびるように震える自分の舌と、透華の舌がちょん、と触れた瞬間。
攻めているはずの透華が何かに怯えたように震える。
それに気づいたはじめが、さり気なく透華の背中に手を回して安心させるようにゆっくりと撫ぜると、
透華の固かった身体が徐々にほぐれ、密着するようにのしかかって来た。

「ん、んんっ…ふぅん」
「ふぅっ、むぅ…んんん」

最初はおずおずと。徐々に激しく。
お互いの舌がぴちゃぴちゃと音を立ててはじめの口腔で踊る。
探るように伸ばしてきた透華の手をはじめが握って指を絡めると、そのまま拘束するかのようにベッドに押し付けられた。
透華はまるで縋り付くように身体を押し付け、夢中でキスを続ける。

はじめは透華の存在を確かに感じながら、わずかに伝ってくる唾液を啜るように飲み込む。
好きな人の一部を身体の中に取り込む行為がまるで彼女にマーキングされているかのように感じられて。
熱にうかされたようにぼうっとしながらも、はじめはそれを大事に味わってこくり、こくりと飲み込んでいく。

ひたすら唇を押し付け、舌を動かす事に夢中だった透華はそれに気づくとしゃっくりをするような音を立て反射的に唇を離してしまった。
先ほどまではじめの口腔で交尾する蛇のように絡み合っていた舌と舌が離れ、名残を惜しむように銀色の糸で繋がり、切れる。

「…もっととーかのが欲しいよ」

目を潤ませ頬を赤く染めたはじめが不満そうに口を尖らせながら言うと、
透華の身体がまるで心臓を何かに貫かれたかのようにびくりと震え、頭頂の毛がびくんと屹立した。

「うぁ…う…、そ、そんな事言わないでくださいまし」

真っ赤な顔をさらに赤くして、どもるように呟く透華。

なんでやめてしまうのだろう。
もう心は透華のモノだし、身体だってどんなことされたっていいのに。
いろんな事をされたいのに。

もっと、透華が欲しい。

ぼんやりとそんなことを思いながら、照れてしどろもどろになっている透華に微笑む。

「ね、とーか…いつもはボクがとーかの服を脱がせてるけど
 今日はとーかがボクの服を…脱がせて」
「!ッ…」

はじめの上にまたがった透華は湯気が出そうなほど真っ赤になって、それでもコクリとうなずいた。

***

「くふっ、ふふ…」

メイド服を脱がされて裸身をさらしたはじめがくすぐったさに笑いをこらえる。
傍らには脱ぎ散らかされた二人分の洋服。
隣に寝そべる透華の白い肌を感じながら、はじめは胸を撫でる指の感触を意識する。

「き、きもちよく無いかしら?」
「ん、ちょっとくすぐったい、かな」

それとも…。

「こんな身体じゃ、とーかもつまらないかな…」
「そんな事!ありませんわ!はじめの身体は綺麗ですわよ!十分その…、あの…」
「?」

ぼんやりとした心のまま、先を促した。
先ほどまでと違い、透華の存在が近くにあるためか不安はそれほどない。
はじめの中に巣食う不安はまだ存在していてチクリチクリと心を刺すけれども、
透華の声が、肌の感触が、舌が、指が――暖かな身体が不安を、理性を蕩かしてくれる。

「んっ…」

透華の指に胸の小さな尖りを撫ぜられて、身体がぴくりと反応した。
余すところなく白い肌を晒した透華は、はじめの疑問に返答をしないままのしかかってくる。
小さいながらも形がよく柔らかな胸を押し付けられ、首筋に強くキスをされた。

「ひんっ…とーか…」

くすぐったい中に確かに存在する痺れるような快感。
透華のつたない愛撫に身体が反応する。しかし、それ以上に反応しているのは――心。
キスマークがついたらどうしよう、と思うより先に透華の印をつけてもらったことに対する悦びが湧き出る。
軽く唇にキスをされたあと身体を横抱きにされて脂肪の殆どない胸をやさしく吸われる。

「ん、んっ…」

身体を断続的に流れる快感。
まるで壊れ物を扱うようにやさしく乳首を吸われ、その細く長い指はぬかるんだはじめの秘所に到達してくちゅり、と音を立てる。
敏感な部分に触れられたはじめの身体は伸びをするようにびくん、と突っ張るが、
その反応を妨げるように透華の身体が拘束具のようにはじめに密着した。

繊細な指先で、敏感な部分を開かれ、なぞられ、硬い部分を探られる。
逃げる腰を身体で押さえつけられて、優しく、しかし容赦なく弱点を攻められる。
愛する人の愛撫でみっともなく蕩けた顔を晒し、羞恥に身体をくねらせる。

「とーかっ…とーかぁっ!ボクをとーかのモノにしてっ、ずっと、ずっと一緒にっ!」

恋人の指と舌で理性を剥ぎ取られたはじめは、媚びたような声で透華を求めた。
身体に浅く進入した指を逃がすまいと締め付け、胸を攻める透華の頭を抱えるようにして。
全身で透華を感じようとする。身体の奥で小さく疼く、消えない不安を打ち消すように。

「あぁっ……あぁぁああぁっ―――っ!」

そして、ずっと心に抑圧されていたものが一気に噴出したはじめは、身体を痙攣させてあっけなく絶頂に達した。

***

「…ごめんなさい、私のせいで不安にさせてしまって」

ぼんやりと声のした方に顔をむけるとそこには愛しい人の心配そうな表情。
流石に事、ここに至って開き直ったのか先ほどまでの羞恥の表情はなりを潜めている。
恥ずかしがる透華、可愛かったのにちょっと残念だな、などと取りとめもなく想いながら
はじめは空いている手で透華の手を探りあて、何かを確かめるように指を絡めた。

「ううん…ボク、何か言った?」
「いいえ。でも、貴女が不安に想ってる事は、伝わってきましたわ」

絡めた互いの指を擦り合わせ、一本一本その形を確かめていく。
手を通じて交歓された互いの気持ちに、幸せがじわりと胸に広がる。

結局、透華からはじめの身体を求めてはくれなかった。
今回だって、我慢できなくなったはじめからの求めに透華が応じた形。
しかし、透華が心からはじめの事を想っていることは間違いようはなかったから。
好きな相手と想いが通じただけでも幸せなのだから。

だから――

「ほら、またそんな顔を。もしかして私では不満でして?」
「そっ、そんなことないよ!?大満足だよ?何言ってるのさ、とーか!」

不満げに口を尖らせた透華の台詞に思索を破られ、あわてて返事をする。
と、そのまま透華が柔らかく覆いかぶさってきた。

「あっ…」

首筋にかかる透華の吐息。互いの胸が重なり、はじめよりは脂肪がついた透華の胸が柔らかくゆがむ感触。
くすぶっていた腰の奥の炎が、ふたたび勢いを取り戻していく。

「じゃあ、何が不満なんですの?」
「ふ、不満なんて無いってば!すっごくよかっ…って、とにかく!」

抱きしめられたままジタバタと暴れ、ふたたび大きくなっていく身体の疼きを誤魔化すように叫ぶ。
するとそれに比例して透華の腕に力がこもり、きつく抱きしめられた。まるで、逃がさないとでも言うように。

「はじめ、愛してますわ」

真剣な声で愛を囁かれ、多幸感で手足が萎え身体に力が入らなくなる。

「だからこそ。貴女を不幸にしてるとしたら私、自分が許せませんの」
「ボ、ボクは十分しあわ――」

ぎゅっと抱きしめられ、ドクンドクンと早鐘のように打つ透華の心音が伝わる。
よく見れば視界の端に映る耳は紅く染まり、抱きしめられた身体に感じる腕は微かに震えていた。
不安なのは多分、透華も同じ。

「…あのさ」
「ええ」
「その」
「ええ」
「…こんなこと言ったらボク、透華に軽蔑されちゃうかも」
「そんなことありませんわ」

普段のはじめからは考えられないほどに弱弱しい声音。
珍しく言いよどむ彼女に、透華が優しく先を促す。
見えない壁を乗り越えるかのように、ごくりと唾液を飲み込み一拍おいた後。

「透華からボクに触れてくれたことって、ないよね」

はじめの言葉で抱きしめる透華の腕にぎゅ、と力が入る。

――ああ、やっぱりそうなんだ。

心の中で何かがとすんと収まるべき所に収まる音。
それだけで、何かが堰を切ったかのように口から言葉が流れ出してしまう。

「ボクは、ほら、こんなだから。原村と違って女の子って感じじゃないし。
 ボクの身体に透華が興味なくても、仕方ないっていうか」
「はじめ…」

鼻の奥がツンとする。心が通じ合って幸せなはずなのに。
彼女と身体の繋がりを強く求める自分が、醜い怪物のように感じられる。

「ボクがおかしいのかも。透華に愛されてるって確かに感じるのに。
 それなのにもっと触って欲しいって。触りたいって。透華としたいって。
 あれからずっと透華の事、想ってひとりでしてたんだよ?」

ぐにゃり、と視界がゆがむのが止められない。
自分を止めることができない。こんなこと、言ってはいけないのに。

「…そもそも女の子同士だし、透華はそういうの駄目なのかもって」
「はじめっ!」

耳元で怒鳴られ、びくんと身体が震える。
熱い液体が頬を伝う感触で、はじめは自分が泣いていることに気づいた。

「駄目じゃありませんわ。私もはじめの全てが欲しいですわ」
「…お、女の子同士なのに?」
「貴女を欲しいと想う気持ちにそんな事、関係ありませんわ」
「…ボク、胸もないしこんな身体だし」
「脂肪の塊なぞ関係ありません!貴女の身体だからこそ、欲しいのですわ」
「…だって、ずっとキスもしてくれなかった」
「それは、その…れ、練習しないと」
「…練習?」

手前勝手に悲しみに沈んだ心がよくわからない単語に引き戻される。
練習?何の練習だろうか?そういえばここしばらく智紀と一緒になにやらパソコンをいじくっていたような。

「ほら、さくらんぼのヘタを結んだりとかしないといけませんし…そうやって練習するものだと」

何を言ってるんだろう、このお嬢様は。言っている意味がわからない。

「でなければ、相手を満足させることが出来ないと。はじめも練習してたと聞きましたわよ?
 他にも、わ、私もその…夜にはじめを想って、イメージトレーニングを…。
 理論を押さえたうえでの反復練習こそが上手くなるための近道ですし、はじめを十分に満足させたかったですし…」
 
ああ、イメージトレーニングってそういう。
つまり、威勢良く宣言した手前、下手じゃかっこつかないから練習していましたと。

「とーか…」
「でも、私のせいでそんな風に思われてしまったのなら。それは私の責任ですわね」

そんなことでこんなに悩んでたのか…と脱力気味のあきれ声で透華の名を呼ぶが、
身体を半分起した透華の青い目にじっと見つめられて心臓がドキリと鼓動を打つ。
その狩の対象を見つけた肉食動物のような美しい瞳に魅入られてしまう。

「はじめ、ずっと貴女に触れられなかったのは私も辛かったんですわよ?
 貴女をどれほど私が欲していたのか…練習の成果を身体に刻み込んでさしあげますわ」

はじめの知らない、怖い透華がそこにいた。

***

「んっ、んんんっ!」

頭を押さえつけられてされたのは、先ほどの優しいキスとは違う攻撃的な激しいキス。
恋人からの何もかもを奪われるようなキスに、はじめの身体が熱くなる。
そのまま身体をまさぐられ、背中や臀部を優しく刺激されるたびに快感でびくりびくりと身体が震える。
一体どれほどのイメージトレーニングをつんだのか。透華は女の身体の扱いが上手くなっていた。

たっぷりと唾液を飲まされ、舌を嬲られ、口腔を蹂躙されたはじめはくたりと身体を、全てを透華に預けてしまう。

「はじめ、私が貴女にしたいことを、しますわよ?いいですわね?」
「…うん、とーか、して」

お互いの欲情に潤んだ瞳が視線を絡ませ、その最中も手指はいちゃいちゃと互いの形を確かめる。
心が繋がり、身体を求め合う。恋人の実感がはじめを満たす。

「んうっ…」

ちゅ、と音を立てて首筋が吸われた。
先ほどキスマークがつくほどにすわれたのと同じ場所。
透華の所有印をさらに強く駄目押しされて。
ジン、と股間が痺れる。

その間もぬめぬめとした透華の舌は、鎖骨に降り、胸でしばらく遊び、肋骨を下ってへそに停留する。
もちろん、透華がそこで止まるはずもないことは、即座に理解できた。
つまり、この先の。

「と、とととと透華?」
「…何ですの?」

興が削がれたとばかりに少しご機嫌斜めな声。
警戒するように足を閉じて、探るような視線で下腹部から顔をあげた透華の瞳を見る。

「えーっと、このまま行ったらその、まずいかなぁって」
「どこもまずいところはありませんわよ?どこもかしこも美味しいですわ」

――ああ、この目は、本気だ。

そういう愛撫の方法があることは知っているし、透華にしてあげることに躊躇いもない。
それでも抵抗はある。風呂は入ってきたものの、先ほどからの行為のおかげでそこは分泌物で汚れてるわけで。
ましてやそこを、透華にじっくりと見られてしまうのは。

「き、汚いよとーか」
「はじめの身体に汚いところなんてありませんわ」

多分、脳内はじめとの想定問答集にあったのだろう、言ってやったとばかりにニヤリと笑う透華。
ぐ、と詰まるもやはり抵抗があるのは否めない。

「ボクが、ちょっとヤだなって」
「あら、先ほど『して』って言ったのはどなたでしたかしら?」
「う…」
「それに、私に身体を触って欲しいんじゃなかったんですの?」
「そうだけど…」
「はじめ、貴女の全てを私に見せてくださいまし」

勝手にくぅ、と口から吐息が漏れた。わかっていたのだ。初めから勝ち目など無いことは。
この気高く美しい少女に恋に落ちたときから彼女の存在は、はじめの心を縛っていたのだから。
どんなトリックを弄しても外れない、何より自分が抜け出したいとは思わない鎖で。

「ボクの、全部、を…いいよ、見て。ううん、見て、ほしい」

観念して、耳まで赤くなりながら透華におねだりをする。
羞恥の朱に染まった身体を脱力させ、透華がしやすいように足をゆるく開いた。
今から透華に「されてしまう」んだと思うと胸が激しく鼓動を打ち、興奮で視界がゆがむ。

「ふふ、いい子ですわ…はじめ」

ゆっくりと手で足を開かれ、透華の顔が降りていく感覚。吐息をそこに感じて、それだけで堪らなくなってしまう。
そこが分泌された液体で酷い状態になっていることは見なくてもわかった。

「はじめらしく、可愛らしいですのね。私を欲しがって震えていますわ」

先ほどはキス程度で羞恥に身もだえしていたのに、興がのってきたのかノリノリで実況をする透華。
はじめは恥ずかしさのあまり、両手で顔を覆い透華に懇願してしまう。

「とーか、はやくして…」
「あら、おねだりですの?我慢できないんですのね。では…」

永遠とも思える数瞬。指よりも柔らかいそれが、はじめの敏感な部分に到達する。

「あぅっ…あっ、あっ、ああっ!」

白い電撃のような快感がそこから背骨を駆け上がり、頭を痺れさせる。
ぬるぬるとした舌が動くたびにびくびくと腰が震え、まるで透華に奏でられる楽器のようにはじめの口から喘ぎ声がまろび出る。
ぴちゃぴちゃと猫がミルクを飲むような音に、興奮が加速していく。

「好き、大好きだよ、とーか。とーか、とーかぁ!!」

ぐりぐりと突起を嬲られ、浅くなぞられ、濃い分泌物を啜られて。
自分の身体の最奥の秘密を、何もかもを透華に知られて。
幸せの最中、はじめはこれまでの人生で最も深い快感に打ち据えられて絶頂に身体を痙攣させた。

***

自分の手で愛しい娘を深い絶頂に導いたことに満足した透華はベッドで寝ているはじめの顔をみて微笑む。
練習期間中の自分の態度が、はじめを不安に思わせていた事は反省材料だが練習の成果は十分満足いくものだった。
そもそも、計算外だったのは自分がはじめのことを強く求めてしまったこと。
迂闊にキスでもすればそこから先になだれ込まない自信は透華にはなかったのだ。

愛しい娘との初めての行為が、まさかここまで自分を虜にするとは。
今まで感じたどの感情よりも強い炎が、こうまで燃え上がってしまうとは。
まあしかし…

「まあでも結果オーライですわ。色々と教えてくれた智紀には礼を言わねばなりませんわね」
「へえ、どんなことを教わったの?」
「いえ、たいしたことでは。その手の技術を扱ったサイトを色々と…ってはじめ、おきてましたの?」

ひとりごとに割り込んできた言葉に律儀に返答をしてから透華は驚いたようにはじめに問いかける。

「浮気、してないよね?」
「す、するわけないですわ!はじめ、一体なにを…」
「ん、ボクもとーかにしてあげたくなった」

微笑を浮べながら、はじめは透華を押し倒す。
嫌な予感を覚えた透華は引きつった笑みを浮べた。

「練習ってさ。ボクのこと、想ってしてたわけ?」
「イ、イメージトレーニングですもの…」
「練習とかボクですればよかったのに」
「それじゃ本末転倒…」
「どっちが本末転倒なのさ」

はじめが、怖い。

「舐める」
「…は?」
「ボクが、とーかを。さっきとーかがボクにしたみたいに」
「そんなところ!き、きた…」
「とーかの身体に汚いところなんてないよ」
「うっ」

根に持ってる。確実に根に持ってる。

「ボクの気が済むまで付き合ってもらうから。沢山気持ちよくなってね、とーか」
「は、はじ…むぅ!」

激しいキスで強引に唇を塞がれながらも、恋人との愛の交歓に期待をして。
透華は、小さな体躯の愛しい少女をぎゅっとかき抱いた。

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最終更新:2009年11月29日 22:12