119 名前:へたれ[sage] 投稿日:2009/06/11(木) 11:50:13 ID:TPxNxlXm
「Dear」

 これはインターハイの2週間前、某県、某市、某高校の弱小麻雀部室での小さな出来事。
2人の少女がパソコンに向かっていた。画面に映る雀卓を囲む一人は、その筋では有名な
"のどっち"。黙々と局が進み合成音が終わりを告げた。

『終局です』

「次が最後だけどやる?」
「いいの?」
「好きに打つていいから」
そう言ってパソコンに向かっていた少女がもう一人の少女に場所を譲る。
「うん」


…数分後。

「なぜそこで、白2枚捨てる! 東揃ってるのになぜ崩す!おい、それドラだぞ! ニコニコ
できてるのにもったいない! あぁぁぁぁ、それ危険!!って、よりによって跳満に振り込
んで終わりかよ!!」
「もー。外野うるさい! 好きに打つていいって言ったじゃん」
「言ったけどハコにされるとは思わなかった。しかもワースト記録更新かよ!バカだバカ
だと言われてるが本当にバカ!だったんだな」
「何を今更!」
「威張るな!!」左手で相手の頭を叩き言葉を続ける。
「でもまぁ、これが   あんたの中学時代のうち方かい」
「つーか、1番遊んだうち方かな。特徴あるでしょ?」
「ありすぎて、泣けてくるわ」
「いろんな方法で打つた方が面白いしね…」
「それだけの理由かい。普通勝率で考えんかって、…もういいわ。んで、なに。この人が
あんたの中学時代の同級生かもしれないって?」
「ん。でもこの人が彼女だと決まったわけじゃないし。ネットの麻雀人口は数万人。当然
似たうち方の人もいるからね」
「でもあんたはそう思ったんだろ?」
「時々見える癖で同じのはあるけど、違いもあるからあくまでも可能性の問題」
「違い?」
「例えばうち筋がとても柔らかくなってる。素直になったっていうのか、ほら、ここなん
か。多分ユーキ達のおかげかも。無理な待ちが無くなってる。仲間が強いと満貫、跳満を
狙わなくっていいでしょ。きっと今はいい仲間に恵まれてるんだよ」
「なるほど、中学ではお前さんの尻拭いに彼女も苦労したわけか」
「そんなとこかな」
「素直やん」
「事実だからね……。でもね、楽しかった…よ」
「そんなに懐かしかったらチャットすれば」
「ん~。止めとくわ。これからインターハイに臨む人の邪魔したくないしね」
「そっか…。ところであんた何しに麻雀部に来たん。麻雀やめてたんやろ?」
「………、ヤマシンが追試のことで私たちに用があるって」
「なっ!! 遊んでる場合やないやん!このバカたれ!! あまり待たせたら追試の上にまた補
習や!!」
「そうなったら責任をとって付き合ってやるよ」
「お前も追試組だろ!アホなこと言ってないでほら行くぞ!!」

  これはインターハイの2週間前におきた小さな出来事。全国大会に挑む少女たちには届
かない小さな声の一つ。このような、声なき声援を背に、少女たちは望むものが得られる
とは限らない新たな決戦の場へとのぞむ。

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最終更新:2009年07月11日 21:50