874 名無しさん@秘密の花園 [sage] 2009/09/08(火) 23:26:57 ID:aeOSLaWy Be:
「雨、降りそうだね…」
いきなり天気は下り坂。
夕立の季節はもうすぐ終わるのに、今日はどうしてなのか、曇りだしたのはついさっきで。
「いきなりですね…」
「室内部だから雨なんて関係ないじぇ!」
「…雨だけならいいのですが…」
雨、だけにしてください。頼みますから。
「のどちゃん…雷を恐れて」
「いません」
いません。い、い…いないんだから。
そんなこんなしているうちに部長がやってきた。
「みんな揃ってるわね。雨、降り出したわ」
「あ、部長」
「雷も来そうだじぇ♪」
なぜ優希はそんなに雷に拘泥するのですか!
…私を困らせたいだけなのでしょうが。
あまりみっともない姿は見せたくない。
特に…隣で、私と話してくれていた、愛らしい彼女には。
「雷はイヤだよね…」
「…宮永さんは雷、嫌いですか?」
「うん。小さいころからずーっとだよ…原村さんは?」
「わ…私は…」
私も…嫌いです。
さっきまで意地でも嫌いとは言いたくなかったのに、彼女の前では本音になってしまうのは…なぜなのだろうか。
「き…嫌いです」
「あれ~!?のどちゃん、さっき雷は怖いって言ってなかったか?」
ニヤニヤしながら言う優希。うう、そんなに苛めないで。
ゴロゴロゴロゴロ
……。ついに空は、嫌な音を発し始めた。
「あ、停電になったりしてね~」
「……!!!」
部長の言った一言は私を追い詰める。
「…いやぁ…」
思わず震えだしてしまう。
怖い。
たまらなく、怖い…。
ふと気がつくとだった。
隣には、私の手を握った彼女がいた。
「、み、宮永さ…」
「大丈夫。大丈夫だよ」
大丈夫…大丈夫なんだ。
なぜか納得してしまう私がいた。
そして…顔が赤くなるのに気付く。
今彼女が私の手を握っているという事実に、恥ずかしさと、安心を感じた。
宮永さんがいると、安心だった。
たったそれだけなのに、安心だった。
☆☆☆
「あーら…」
「邪魔しちゃ悪いのぅ」
「でも部活が始まらないわよ?」
先輩たちが小さな声で話す。
のどちゃんが咲ちゃんと仲がいいと…なんか…やだった。
「…犬、ブレーカー落として来い!」
「落としてどうする気だ」
「…怖がらせるんだじぇ!」
「むしろ更に距離を縮めるぞ」
…そうか。そうだじぇ。
手をつないで、俯いた2人が、いた。
そこまでの距離は、どうしようもなく遠かった。
のどちゃんまでの距離は…遠かった。
だから…なんだというんだじぇ。
「ほらー、イチャイチャしてないで部活始めるわよ」
「「あ…」」
赤面する2人。
そんな2人を見て、また私はタコスを食べるのだった。
☆☆☆
イチャイチャ…かぁ。恥ずかしいな。
でも…原村さんとなら、別にいいかな、なんて。
馬鹿みたいだね。
「…宮永さん」
「…?ぁに?」
「…まだ、手…離さないでくれませんか?」
え…?
「…か、か…雷が…まだ…くるかも…しれないからぁ…あの…」
…可愛いなぁ、原村さんは。
「うん、いいよ。ずっと握ってるよ」
雷が止んでも…離したくない。
「…ありがとうございます」
「…ありがとう、原村さん」
「み、宮永さんがなんでお礼を…」
だって…原村さんと手を繋いでると、幸せなんだ。
だから…お礼。
「あのさ、部活始めたいんだけど?」
……あ。
「…ごめんなさい」
「…ごめんなさい…」
部長に怒られてしまった。本気ではなく、ニヤニヤしながら部長は言った。
「…へへ♪」
「…ふふ♪」
私たちは目があって、どうしてだか笑ってしまった。
雷は、既に関係なかった。
最終更新:2009年09月15日 15:58