513 :名無しさん@秘密の花園:2009/09/01(火) 11:31:43 ID:qgdHzkxJ
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 最後に少し壊れた原村さんが出るので注意




 ある街のある一日の出来事

 ここは長野県のある大きな街。休日は若者たちも大勢遊びに来る場所だ。
 これからの話はそんな街のある一日の出来事である。


「キャプテン、今日は付き合ってくれてありがとうございます!」
「私のほうこそ。それに・・・キャプテンはもうあなたでしょ、華菜」
「あ、そうでしたね福路先輩、すっかり忘れてました!」

 池田華菜と福路美穂子が歩いていた。これは華菜にとって待ちに待った瞬間だった。
 前々から頼み込み、ついに今日、初のデートに漕ぎ着けたのだった。
 今日のために念入りにデートスポットを調査し、服も最高のものを選んできた。

(華菜ちゃん人生最高の瞬間だし!今回絶対にこのデートを成功させて
 これから頻繁にこうしていっしょに遊びに行きたいし・・・
 それでもっと仲良くなって、華菜ちゃんと先輩は恋人に・・・)

 華菜がそんなことを考えていると、ある人物がこちらに歩いてくるのが見えた。
 今の華菜にとって、天敵である久保コーチ以上にまずい人物だった。

「ぎにゃっ!」

「ど、どうしたの華菜!?」
 思わず絶叫を上げた華菜。その人物とは、清澄の竹井久であった。
 久は後輩の染谷まこと一緒に歩いていた。

(な、なんであいつがここにいるんだし!?ま、まずいし!)
 県大会のとき、美穂子の久への熱い視線に華菜は気がついていたのだ。
 結局その場は何もなかったが、こんな街中で偶然の再会でもされたら
 今回こそどうなるかわからない。幸い、美穂子はまだ久に気づいていない。
 華菜はとっさにこう叫んだ。

「せ、先輩、あんなところにUFOがいるし!びっくりだし!」

 あまりにも苦しいでたらめだ。しかし、美穂子は華菜の指差したほうをじっと見ていた。
 美穂子の性格からして、華菜の言うことを疑うということをしなかったのだ。
 よし!やった!あとは相手だ・・・。華菜は久たちのほうを見た。
 すると、向こうも同じことをしていた。久がまこの指差したほうを見ていた。
 華菜とまこは目が合った。互いに敬礼のポーズをし、視線で語った。

(助かったし染者!この恩は必ず返すし!染者、頑張れし!)
(お互い様じゃ池者。わしこそ助かった。あんたこそしっかりな)

「華菜?UFOなんだけど、ちょっと見つからないけど・・」
「あ、すいません!雲と勘違いしていたみたいです!さ、行きましょう!」
 
 こうして未曾有の危機を脱出した華菜。彼女の冒険は始まったばかりだ!




 華菜たちがいたところから少し離れたところでは、
 加治木ゆみと東横桃子が手をつないで歩いていた。

「いや~先輩は外では相変わらず大胆っすね~学校の中ではあんなにヘタレなのに」
「・・・・。ま、外じゃあモモの姿はほとんど見えないからな・・」
「昨日蒲原部長から五人でどこかに遊びに行こうって誘われたときも、
 先輩はデートのことは内緒にして図書館で勉強するとか言って・・」
「あ、あれはだな、蒲原に本当のことを言うとまた冷やかされるからだ。
 それにこの間、私たちが学校から帰って二人で公園にいたとき、
 あいつら三人がこっそり覗いていたことを忘れたのか?だからあまり知られたくなくてな」

 ゆみはそう言って弁明をした。しかし桃子の追及は続いた。
「私は別に構わないっすよ。先輩と仲良くしているところを見られていても。
 先輩は嫌なんすか?私と一緒にいることがみんなに見つかったら」
「そ、そんなことはないぞ・・。ただ少し恥ずかしいというか・・照れくさくてな」
「私と先輩が恋人同士でデートにも何回も行ってる事なんかもうばれてるっすよ」
「え?そうかな・・?隠してきたつもりだったんだがなあ・・・」

「私はもっともっと、先輩と私の仲についてみんなに知ってもらいたいっす。
 だって、私が生きてる理由なんか、先輩と一緒にいることぐらいしかないっすからね・・。
 今まで誰一人からも必要とされず認識すらされなかった私を求めてくれた先輩と・・」
「モモ、それは言いすぎじゃあないか?他にも色々あるだろ」
「そうっすね。麻雀部のみんなも忘れたらいけないっすね。みんな優しいし、最高の仲間っす。
 ・・・ま、それは置いといて、私はやっぱり先輩とのこの愛をもっと広めたいっすね。
 そうだ、いい事を思いついたっす」
 桃子は笑みを浮かべた。ゆみは嫌な予感がした。すると、桃子はいきなり、

「加治木せんぱーい!大好きっすーー!一生ついていくっすーー!結婚してくださーーい!」

 こう絶叫した。ゆみは顔を真っ赤にして慌てた。
「ま、街中で何騒いでいるんだモモ・・。やめろってば・・」
 すると桃子は何でもないような顔でゆみに答えた。
「大丈夫っすよ。私が何をしようが何を言おうが誰もわからないっすよ。冗談でやったんすよ」

 確かに周りは別に何も変わらない様子だった。おかしい。
 桃子の話だと、踊ったり騒いだりすれば周りから見えるようになるはず・・・。
 これだけ大きな声を上げたのに誰も気づかないなんて、おかしい。

「モモ、お前、ステルス能力が加速しているのか?」
「ええ。私を見てくれるのは先輩、あなただけでいい・・。そう思ったときから
 ますます周りからは見えなくなっちゃったっす。麻雀部のみんなは例外っすけどね。
 でも先輩にはますます私が見えるようになった。もうほとんど完璧っすよ。
私はそれでいい。先輩だけが私を見てくれれば。私だけを見てくれれば」

 そんな桃子にゆみはすぐにこう答えた。
「ああ。私もそれで構わない。お前は私だけに見えればいい。私はお前だけ見えればいい」

 そして二人は再び歩き始めた。つないでいた手は、今までより強く握られていた。




 二人がいたところからそんなに離れていないところでは、
 蒲原智美と妹尾佳織の二人が歩いていた。智美は不機嫌そうな顔をしていた。

「まったくあいつらせっかくの休日なのに何なんだよ・・。
 ゆみちんは勉強するとか言うし睦月だって知り合いのたこ焼き屋のアルバイトとか・・。
 桃子も用事があるらしいし、結局私と佳織の二人だけかよ!
 ゆみちんと桃子はあんなこと言ってたけどどうせ二人でデートでもしてんだろ!
 いや、絶対そうだよ!もうバレバレなんだから隠す必要ないのによぉ~!
 ゆみちんのあの曲がった根性が嫌いだね!おかげで私は佳織と二人で・・・」
 智美はそこまで言うと、言葉を止めた。横にいた佳織の表情がみるみる暗くなっていった。

「か、佳織、どうしたんだ・・?」
「・・・智美ちゃんは私と二人じゃ嫌なの?私と二人だったらつまらないの?」
 智美は焦った。別にそんなことを言いたいわけではないし、考えてもいない。

「私は楽しみにしてたのに。智美ちゃんと二人でお出かけなんて本当に久しぶりだったから。
 デートみたいだな、なんて思ってた。だから本当に嬉しかったのに・・。
 でも智美ちゃんにとってはそうじゃなかったみたいだね・・・」
「違う!お前と二人でいてつまらないなんてことはない!ただ・・・」
 佳織は今にも泣きそうだった。智美はそんな彼女に、小さい声でこう続けた。

「ただ・・。佳織と二人でいると心配だったんだよ・・。私が何か間違ったことをしないか。
 五人でいるときはみんなの目もあるからな・・。そんな変な真似はしない。
 でも二人でいると、私がずっと心に秘めていたことをお前に言ってしまわないか心配なんだ。
 私が佳織をどう思っていたか、つい言っちゃいそうでな。「愛してる。大好きだよ」って。
 だからなるべくみんなと一緒に遊んでれば大丈夫だな・・と思ってただけで・・・」

 話している途中で智美は気がついた。まずい。今言ってしまったではないか。

「え・・・?智美ちゃん、今なんて言ったの・・・?」
 小声で言っていたので佳織にははっきり聞こえていなかったようだ。
「ワハハ!何でもないよ!お前といると楽しいって言っただけだよ。
 ただのそれだけだよ。他の別のことが聞こえていたとしても
 それはお前の空耳だよ!この話はもうおしまい、ほら、行くぞ!
 ・・・ってあれを見ろよ!やっぱり私が言ったとおりだっただろぉ!」
 智美は、前方のほうを指差した。そこでは、ゆみと桃子が歩いていた。




「ゆみち~ん。こんな街中で会うなんて奇遇だなあ。図書館での勉強はもう終わったのかい?」
「うわっ!蒲原に妹尾!お前らもここに遊びに来ていたのか!」
「ワッハッハ、私らのことなんかどうでもいいだろ?桃子と二人で熱いねえ」
 
智美はすっかり上機嫌になった。ゆみを冷やかし、佳織をごまかせ、一石二鳥の出来事だ。
「ほれ、みんなで昼飯でも食べに行くか!もちろん嘘をついた人のおごりでな!」
「・・・・・・はい」

昼飯代まで浮く。智美は笑いが止まらなかった。ここまでは順調に事が運ぶかに思えた。

 
こうして四人で歩くことになった。すると佳織が突然こんなことを言い出した。
「加治木先輩たち、デートだったんですね。実は私たちもだったんですよ」
 ゆみと桃子はあれ?と思った。智美は慌てて佳織に言った。
「おい佳織!この二人はデートだけど、私たちは違うだろ!ただ遊びに来てるだけだろ!」
 両手を佳織の肩に乗せ必死になっている智美。佳織は首をかしげながらこう皆に尋ねた。

「あれ?お互い愛し合っている人が一緒に遊びに行くのがデートですよね。
 さっき智美ちゃん、私に「愛してる。大好きだよ」って言ってくれたんですよ。
 私もそう思ってますから・・私たちが二人で遊びに行くのはやはりデートですよね?
 加治木先輩、桃子さん、一体どうなんでしょうか?」

 ちゃんと聞こえてたのかよ・・・。智美は頭を抱えた。ゆみと桃子の視線が痛かった。
「蒲原部長。部長も案外加治木先輩とそっくりっすねえ。
 もっと豪快でストレートに生きる人だと思ってたっすけどねえ」
「蒲原。おあいこだな。昼飯の支払いはお前と私で割り勘だな」
「・・・・・・はい」

 再び四人で歩いていた。ゆみと桃子は相変わらず手をつないでいた。
 それをうらやましそうに見ていた佳織はちらっと智美のほうを見た。
 すると智美は、佳織の手を取り、こう言うのであった。

「ほれ、私たちもこれでいいだろ。人が多いからはぐれないためにもな。
 せっかく二人が一緒になった日に離れたくないからな。手、離すなよ」
 
 二人は、昼飯なんか食べずずっとこうして歩いていたいと思った。




四人がいたところからやや離れているたこ焼き屋の前では、別の二人がいた。
「タコヤキ?何だこれは。始めて見るぞ」
「衣ちゃん、たこ焼きは初めて?ならちょうど良かったね。食べていこうよ」
「だからちゃん付けはやめろ!衣は咲より年上なんだぞ!子ども扱いするな!」
 
宮永咲と天江衣。この二人だった。実はこの二人、県大会終了後に
とても仲良くなり、こうして二人だけで遊びに行くことも時々あった。
ただ、それが恋人同士のデートかといわれると、そこまでのものではなかった。

「いらっしゃいませ~・・」
「たこ焼きの一番小さいサイズを一つ。ソースとかは全部かけて下さい」
「わかりました。400円になります。いま焼いていますので少しお待ちください」

 店員の女性がたこ焼きを焼いているのを衣はじっと見ていた。そして店員に尋ねた。
「店員、これは美味いのか?まあ咲が勧めてくれたものでまずいものなどなかったが・・」
 すると店員は衣にこう答えた。
「うむ。うちの店は味には自信があるからな。素材もいいものを使っている。
 ・・ただ、今の君にはそういうことはあまり関係ないのかもしれないな。
 大事なのは何を食べるかではなく誰と食べるか、という点なのだからな・・」

 衣は昔の記憶を思い出した。幼き日に両親と食べたあの料理。
 一年前東京で大切な仲間たちと食べたあの料理。最高においしいハンバーグエビフライ。
 だがそれ自体にはたいした意味はなかったのかもしれない。何でも良かったのかもしれない。
 現に透華の屋敷で最高級の贅沢な食事を数え切れないほど繰り返している。
 それでもハンバーグエビフライが今でも一番思い出に残っているのはやはり・・。

「そうかもしれないな。誰と食べるか。確かに一番大事なことだな」
「そうさ。君といる彼女・・。君にとって大切な人なのだろう?」
 店員は咲のほうを見た。咲はどこか別のところを見ており、話は聞いていないようだった。
「ああ。咲は衣にとって本当に大切だ・・。今まで一人暗闇の中にいた衣を
 救い出してくれたのだ。生まれ変わらせてくれたのだ。感謝の限りだ」
「うむ、そうか。私の知り合いにも似たような奴らがいてな。私の先輩と後輩で、
 一人孤独でいたところを迎えに来てくれた・・。おっと、そんなことはどうでも良かったな」

 咲は衣の過去について聞こうとはしない。衣も咲にそれを話さない。
 終わった悲しい出来事より、これから二人で作る楽しい出来事に目を向けている。
 後ろを見るのではなく、新しい一歩を歩もうとしている。



「だから店員、しっかり焼くのだぞ。ハンバーグエビフライよりも美味しくな。
 このタコヤキが衣の一番の思い出になるためにもな!」
「・・・もう出来たぞ。ほら、熱いから気をつけろよ。あと・・少しおまけしておいた。
 私は臨時のアルバイトだから・・。これは他の店員たちとかには内緒だぞ。
・・・天江衣。宮永咲と二人ずっと仲良くな」
「!お前どうして衣たちの名字を・・あ、お前は確か・・・」
「私のことなど知る必要はない。・・・またのお越しをお待ちしています」

 咲と衣はゆっくり座って食べられるところを探して歩いていた。
 衣はたこ焼きを持っている咲にこう尋ねた。
「咲。お前は私と一緒にいて楽しいか?麻雀を打っていなくても、
 こうして二人で歩いているだけで・・心躍るのか?」
「うん。衣ちゃんはかわいいしね!とっても楽しいよ!」
「だからちゃん付けはやめろと・・・。ま、よいか。
 咲。衣は咲と出会えてよかった。これからも・・よろしくな」
「私こそよろしくね。あ、あそこのベンチが空いてるよ、行こうか」
 
 二人が作り出す物語はこれからが本当の始まりだ。


 二人が去ったたこ焼き屋。また新しい客が来た。
「いらっしゃいませ~・・・あれ、あなたは・・」
「ちょっとお聞きします!この写真の女性を見ませんでしたか!
 小学生みたいな金髪の子供を連れて歩いているはずです!」
 原村和だった。ものすごい気迫だった。写真に写っているのは宮永咲。
 
「な、何なんだあんたは・・。い、痛い、よせ、やめるんだ」
「この辺に宮永さんがいることはわかっているんです!早く教えてください!
 宮永さんと色々話さなくてはいけないことが・・・」

 店員は首を絞められていた。だがここで本当の事を教えるとあの二人が危ない。
「あ、あっちだ!あっちに行ったよ!今から5分くらい前だったか」
 店員が話しているうちに和はその方向へ走っていった。
 嘘を教えてしまったが、咲と衣の安全のためだ。仕方がない。

「げほ、ごほ・・。うむ・・。なぜ私に寄ってくるのはあんな輩ばかりなのだ・・。
 先輩たちがうらやましいな・・。あーあ・・私も早く恋人見つけたいな・・。
 でも部の中じゃ無理だよな・・。加治木先輩に近づこうとしたら
 桃子に何されるか分からないし、この間だって佳織を口説こうとしたら
 ドアを突き破って蒲原先輩が乱入してきたしなぁ・・。
 はー・・・。何かいいことないかなあ・・・」



 ここは長野県のある大きな街。休日は若者たちも大勢遊びに来る場所だ。
 そんなある一日の出来事だった。



終わり。
咲×衣に最近ハマった。
むっきーと上柿さんが仲良くなるおまけを書こうとしたけどやめた

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最終更新:2009年09月07日 17:24