866 :ともきーの観察日誌:2009/08/09(日) 00:16:36 ID:U0rVYN6M
 本日も定時に起床。わずかに眠い。
 身支度を整え、両隣の部屋の一と純を伴い、朝の清掃を行う。
 清掃終了後、他のメイドが食堂へ向かう中、
若干の空腹を感じながら、三人で透華を起こしに向かう。
 ノックして反応がないことを確かめてから、ドアを開ける。
 分担はいつも通り、私と純が身支度の準備で、一が透華の起床係。
 純にシャワーを任せてクローゼットから服を取り出す横で、
「透華様。御起床のお時間です」
 一が透華に声をかけていた。「んぅ~」と答える声がしたので、起きたのかと目を向ける。
 透華が、とてもわざとらしく寝返りを打って、一に背を向けていた。
「あの、透華様?」
 呼びかける一の声に、「んむぅ~」と抗議らしきうめき声。
 むっとして強硬手段に訴えようとした一の気を引き、口パクで「敬語」と伝える。
「あ」と声をあげた一。子供か、と透華を睨む。激しく同感。
「――透華。朝だよ、起きて」
「あら、おはよう、一。今日もいい朝ですわね」
 とても寝起きとは思えない爽やかな声に、一が嘆息した。
「いいけどね。シャワーの準備、できてる――よね?」
 聞かれても困るので、浴室を示す。聞こえていたのか、「できてるよ」と純が顔を出した。
 それじゃあ、と着替えを受け取り浴室に消える透華を見送り、私たち三人は部屋で待機。
つかの間暇となった。
「『お背中お流しします』とか言わねえの?」
「なっ……! 何言ってるのさ!」
 じゃれる二人を眺めていたら、着替えた透華が出てきた。退屈しないのはいいことだ。


 今日は家に透華しかいないので、透華の希望で四人で食べることになった。
席は透華の隣に一、向かいに私で、その隣が純。
 さすがに席は同じでも料理は違うので、
「一? 先ほどから見ていますけど、これが欲しいんですの?」
「え? いや、そんなこと――」
「遠慮なさらないで結構ですわ。一口くらいなら大丈夫ですのよ」
 相変わらず仲の良いやり取りが眼前で行われている。
「お、智紀、それ食わないならくれ」
「……これから食べる」
 相変わらず純の容量が分からない。


 現在春休みなので学校はない。けれど、当然名門一家の娘として、学業を疎かにはできない。
休み中の午前は、透華専属の教師による勉強が続いている。
 私たち三人は最初にお茶を入れたら、後は呼ばれるまで待機。
私はPCを広げ、純は二度寝。割を食って一人手持無沙汰な一がうろうろしている。
以前寝ればと言ったら、「でも、透華から何かあるかもしれないし」と言われた。御苦労さまである。


 昼食。朝と同じく四人でいただく。
 その後透華の私室に移り、PCで牌譜の研究。
 基本的に透華が、PCとプリントした牌譜を睨んでいるだけなので、暇になる。
 結果、律儀に後ろに立って、時折透華に応える一と、余った牌譜などを見て、
自分で研究する私と純という構図が出来上がる。
 透華付きのメイドとしては一が正しいとは思うけど、透華も特に文句を言わないので気にしない。


 一連の牌譜を読み終え、一息ついて顔を上げる。
 純は納得いかないのか、一枚の牌譜を見て首をかしげていた。
 透華はPC画面に前のめりにかじりついている。
 一はそんな透華をつまらなそうに眺めている。少し見ていたら、透華が振り向くと同時に
顔色に艶が出た。なぜか尻尾が見える。鎖をつけられているうちに、犬に近づいているのかもしれない。


 透華が思ったより熱中したため、気がついたら夕食の時間。当然四人でテーブルを囲む。
 食休みに軽く雑談をして、各々入浴。透華と別れ、メイドたち専用の大浴場へ。
 湯を浴びたら透華の部屋に集合し、寝る前のわずかな時間をゆったりと過ごす。
 こういう全員がそろった場面では、純はあまり人をからかうことがない。
おかげでゆっくりできるのでいいことではあるけれど、とふと疑問に思い、一度聞いたことがある。
 曰く、
「その場にいない奴をダシにするから、相手の動揺っぷりが楽しい」
 らしい。傍迷惑な話なのだろう。私は標的にならないので分からないけど。
「――そろそろ時間」
 私の声に、三人が揃って時計を確かめ、透華が唇を尖らせた。
「今日明日はお父様もいないのですし、少々羽目を外しても文句はでませんわよ」
「だよな。まだ全く眠くねえし」
「いや、でもバレたら面倒だし」
 透華に同調する純に、諌める一。
 三人の性格的には当然の対立であり、私としてはやれやれと内心嘆息するだけ。
――だったけど、主自らのお達しなので、折角なので少々悪乗りしてみよう。
 一の側に近寄り、透華と純に向き合う。
「二対二」
 「え?」とこちらを見る三人。狙いを純に絞り、眼鏡越しに視線を投げる。
すぐに理解した純は、にやりと笑って肩をすくめる。
「あーあ、智紀も一も、御主人さまの意見を差し置いて、いいからとっとと寝ろとはひでえ奴らだな」
「えぇぇ!? 何か言い方に悪意があるんだけど!」
 慌てる一の後ろから、両肩に手を置く。一は救いを求める目でこちらを向いた。
安心させるように頷く。
「私たちは、正義」
「え? いや、確かに間違ってはないと思うけどさ、そうじゃなくて」
 おろおろする一の向こう、透華がすごいショックを受けた顔をしていた。
「と、智紀はともかく、……まさか、まさか一が裏切るなんて……」
「いやいやいや、これそんな話じゃないよ絶対!」
 透華は素でやっているらしい。人を”ともかく”呼ばわりとは失礼な。
 そのまま私と純で適当に盛り上げていたら、メイド長がやってきた。
「うるさい。早く寝なさい」
「はい」


 メイド長のお説教から解放され、私たちは各々の部屋へ戻った。
「んじゃ、おやすみ」
「うん。おやすみ」
「おやすみ」
 部屋に入り、寝間着に着替えてPCを少しいじった後、ベッドに入る。
 明日の予定を確認してから、私は眠りに落ちた。


以上これと合わせてレス4つほどお借りしました。仄かな透華×一の香りを楽しんでいただけたなら幸いです。
つーかともきーって呼称すら不明なんですよねー……。困った困った。
ちなみにメイド三人が別部屋なのは、最初三人一緒にしてたら、透華が夜に紛れ込んで、
それにキレた当主様が別にした、という裏設定があったり。

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最終更新:2009年08月11日 16:32