318 :名無しさん@秘密の花園:2009/07/29(水) 01:02:53 ID:2G9PmrEK

 初です。ss投下します。

 龍門渕で、多分透華×はじめ。純×ともきーです。

 もっとssが増えるのを願って!

 
 龍門渕高校の、透華に特別に与えられている私室で、ボクはコーラを飲みながら、透華と、そしてともきーを見つめていた。
 二人は揃ってノートパソコンの画面に釘付けになり、頬を寄せて真剣な表情で話している。

 なんていうかさ。
 仲が良すぎないかな? っていうか、近すぎないかな?


「ともき、つ、次はそっちの選択肢ですわ!」
「了解」
「……ふ、ふふっ、この龍門渕透華、この程度の子供だまし、まったくもって通用しません事よ!」

 ぎゅう。って擬音が聞こえそうなぐらい、ともきーの首に後ろから抱きついているのに、よく言う。
 少し、その光景に面白くないものを感じているボクは、そんな意地悪な事を考えて、ふかふかのソファに全身を預けて、その会話を聞いていた。

「なあ、あいつら、さっきから何をしてるんだ?」
「……ともきーが見つけた、軽いホラーゲームだってさ」

 隣でもくもくと購買のパンを食べていた純が、「……へー」と最後の一つをペロリと平らげて、「成程ねぇ」と呟く。
それから、純は「いいのかぁ?」ってニヤニヤ顔でボクを見てくる。

「……っ!」
「おー怖」

 大きなお世話だ! と軽く睨みつけると、純はさっさと身を引いて、今度は透華とともきーに視線を移して、やれやれと肩をすくめる。

「怖いもの見たさって奴か? 透華のアレは」
「だろうね。さっきから、傍目から見ても震えているのに、画面から目が逸らせないみたいだし。見つけてきたともきーよりも透華の方が夢中になってる。……このままいくと、ともきーの首が透華にへし折られないかって心配になるよ」
「……ほー?」

 智紀の首ねぇ。なんて、小声でわざとらしい挑発にのるほど、ボクも子供じゃない。心配なのは本当に智紀の首か? なんて言いたそうな純の目を無視して、ボクは手にしていたコーラを口に含む。
 すでに炭酸が抜けて生温くなったそれを、何でもないように飲み干してから、ボクはまた、胸のもやもやを抱いたまま、それでも二人の様子をそっと伺うのだ。

「……ッ! ……くっ、し、主人公、そこは右! 右に曲がるべきでしょう!」
「バッドエンド一直線」
「回避! 回避は出来ませんのともき?!」
「無理です」
「ってきゃぁあ?! で、出ましたわ! し、主人公が捕まっ?! って、グロっ! グロイですわよっ?!」
「食べられました」

「…………」

 ベキリ、と手に持った缶がへこむ音に、ボクは我に返る。
 途中、透華がともきーの頭にしがみつく勢いでぎゅうぎゅうに抱きついたのが、相当に我慢ならなかったみたいで、残ったコーラの黒い液体が、じわりじわりとボクの手を汚して、ポタポタと高そうな絨毯に落ちていった。

「おーおー、これは確かに、智紀の首が心配だな。というか、後頭部に確実に胸が当たってるよなあれは」
「……っ」
「この調子だと、暫く智紀からくっ付いて離れないじゃないか? 透華の奴」
「ッ! そ、それは困るよ!」
「そうだ。オレも困る」

 思わず叫んだボクは、ハッとして、またあのニヤニヤ顔で見られると思ったのに、意外にも純は真面目な顔でボクを見つめ返していた。
 ぽかんとして、だけど、まさかと覗いた純の瞳は、ボクととてもよく似た感情の色を湛えていた。

「……え? まさか、ともきーと純って」
「知らなかったのか? とっくに知られていると思ったけどな」
「え? まさか、本当に?」

 ボクは鈍い方じゃないけど、流石にそれは驚く。
 だって、仲が良いのは知っていたけど、まさか、すでに二人が付き合っていたなんて、予想すらしていなかった。普段の生活を思い返しても、二人がそこまで深い関係だなんて見えなかったから、尚更だ。

「ち、ちなみにどっちから告白を?」
「オレ」
「……うわぁ、驚いた」
「って、当たり前だろうが。『流れ』がきたと感じた瞬間に告ったよ」

 胸を張って、一瞬だけ普段とは違う、でれっとした顔を見せる純。これは、ともきーと二人きりだとどんな顔になるんだかと、少し呆れて、おかしくて、何だか興味がわいてしまう。

「普段は二人とも、あんまりベタベタしていないから、気づかなかったよ」
「まあ、な。どうせイチャイチャすんなら、二人きりでした方がお得だろう?」
「ははっ、純らしいね」

 ニヤリと笑う純の、変に男らしい顔に笑いが込み上げて、ボクはまったく、なんて小さい事で焦っていたんだと、改めて透華とともきーを見る。
 ともきーには純がいる。そして、透華はボクのご主人様だ。
 その事実が、ボクの心を予想以上に軽くして、今では、先ほどまでと違い、あの二人を微笑ましい目で見つめる事が出来る。


「と、ともき、今度はそこっ! そこに入って隠れるのです!」
「了解。移動開始」
「って、すでに人外の方が居座ってましたわぁ?! に、逃げるのですともき!」

「くっ……回避不能です」

 ぐるんぐるん楽しそうに揺れる透華の頭上の毛と。ともきーの真剣な表情。
 見つめているのはグロ画像なのだろうけど、まさにそこは二人だけの世界が形成されている。
 何だか二人の後方に百合の花が咲き乱れて、ピンクのキラキラガ見えるぐらい、ボクには二人がとても良い雰囲気をつくっている様に見えた。

「……。……ん、あれ? あんまり微笑ましくない?」
「……だろ? むかつくだろう? オレは主に透華に対してだけどな」
「……ボクは、さっきからともきーが妬ましいなぁ」

 純と一緒に、楽しそうな二人を見つめながら、込み上げる嫉妬という名の感情にじと目になる。

「ともき! やりましたわ、ここを抜ければ次のステージへと迎えますわよ!」
「はい」

 興奮して、ともきーの眼鏡がずれるぐらいの勢いで抱きつく透華と、それをむしろ嬉しそうに受け入れるともきー。

「って、あぁ?! と、透華、そんなに全身でくっ付かなくてもいいじゃないか! というかベタベタしすぎだよ!」
「まあ! や、やりましたわっ! ともき、私たちはとうとうやりました! さあ、最後の砦へと向かいますわよ」
「当然。EDは目の前に」

 ボクの思わず叫んだ声すら聞こえずに、目をキラキラさせる透華と、ぐっと親指をたてて、いつもの無表情を崩して、少しだけ微笑むともきー。

「……へぇ。智紀の奴、楽しそうだなぁおい。この前オレとゲームした時よりも、ずっと楽しそうじゃないか……くそっ」

 ボクと純が、嫉妬の鬼となりかねない危険な空間。

 なのに、当の引き金を引くきっかけとなりうる二人は、ホラーゲームなんかに夢中で、ずっとノートパソコンにばかり視線を奪われているし、何より、こっちを一度も気にしないのだ。チラリとすら見てくれない。

 ……なんだよ。透華は、ボクだけを見つめてくれればいいのに。

「…………」

 ゆっくりとソファから離れて、静かに透華に歩み行く。すると、隣に純も付いて来て、ボクたちは並んで歩いた。足音も立てずに二人の背後に立つと、ボクたちは同時に、お互いのパートナーの肩に手を置いた。

「透華」
「あら?」

「おい、智紀」
「?」

 同時に、くるりと振り向く、彼女たちの純粋な瞳。
 その透華の瞳に、ボクは思わず心臓を射抜かれて、蕩けてしまいそうになるぐらい甘美な幸福を感じてしまうけど、今のボクは、そんな透華の甘美な視線でもおさまらないぐらい、ずっと追い詰められている。

「……ふぅ」

 ボクはゆっくりと、静かに息を吐くと、透華へと両腕を伸ばして、そっと、でも有無を言わさずにペリッと、ともきーから引き剥がした。純も、ともきーを引き寄せて、片手で抱きしめている。

「ど、どうしましたのはじめ?」
「……な、何事?」

 ボクの腕の中で透華が、純の腕の中でともきーが、当たり前だけど驚く。だけれど、ボクと純は一瞬で目配せして、こほんと同時に咳払い。

「透華、あのね」
「智紀。そのゲームだがな」

「ともきーじゃなくて、ボクに抱きついてくれないかな?」
「オレの膝の腕やってくれ!」

「は?」
「へ?」

 恥も外聞もない、正直な気持ちだった。

 そう。
 ボクたちは、決して、楽しむ二人の邪魔をしたいわけではなく、ただ、ボクたちを放って、二人で楽しまれるのが嫌だった。
 だから、どうせなら一緒に楽しみたいと、そんな気持ちをこめてで叫んだ台詞に、透華とともきーは、一瞬固まる。

 ―――そして。

「なっ?!」
「っ」

 透華もともきーも、そのすぐ後に、首まで赤くなる事で、返事をしてくれたのだった。






「は、はじめが理解できないわ」
「同意……!」
「透華、心臓が凄くドキドキいってる。可愛いよ」
「おい智紀? さっきから画面が止まったままなんだが、まだ進まないのか? それに、少し痩せたか?」

 真っ赤な透華の腕の中でニコニコしているボク。意地悪そうに、だけど何処か優しく笑う純の腕の中で、ぎくしゃくと赤い顔で動きが鈍くなっているともきー、皆で一緒に、ホラーゲームに夢中になる。

 いつも、麻雀にばかりを向かい合ってきたボクらにとって、これはある意味初めての経験で、とても新鮮な時間だった。
そして何より、ボクの隣には大好きな透華がいる。

 何だか、こんな時間がとても贅沢で、掛け替えのないものだとボクは密かに、その幸せにうっとりと酔いしれる。
 透華、いい匂いだなぁ、なんて考えて、出来る限り、この時間が長く続けばいいのにと、神様に願っていた。












 おまけ。

「ハギヨシ……」
「はい、衣様」
「衣は、とてもこの部屋に入りづらいのだが、ちょっぴり、ずっと覗いていたい気持ちにもなっている」
「はい」
「傍観していても良いだろうか?!」
「きっと大丈夫でしょう。透華様のお心は広いですから」
「そ、そうか! それじゃあ、もうちょっと見ておく!」
「はい。では、お茶菓子をどうぞ」
「うむ!」








 おわり



 
 以上です。
 駄文失礼しました。

 そして、ともきーが好きです。
 あと、鶴賀のカマボコが好きです。

 マイナーっぽいキャラが好きで、咲が大好きなので、また時々投下すると思います。

 それでは、長々と失礼しました。
 

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最終更新:2009年08月03日 18:45