症状


(1)  持続性あるいは反復性の疼痛が上腹部を中心にみられ,背部痛も約半数に認められる. 

(2)  疼痛はしばしば飲酒,過食,脂肪食にて誘発.

臨床検査所見


(1)  膵酵素上昇は約半数に見られるのみ.

(2)  膵機能検査法は直接法としてセクレチン試験,間接法としてBT-PABA試験(70%以上が正常)があるが,
      診断精度は劣るもののBT-PABA試験が簡便で一般に広く行われている. 

画像診断


(1)  腹部単純X線写真,US,CTにて膵石,石灰化像が認められれば確定診断.

(2)  不整な膵管拡張,仮性嚢胞も特徴所見.

(3)  内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)は画像診断の中で最も診断能が高く,
      主膵管および分枝膵管の限局性またはびまん性の不整拡張が特徴的.

(4)  近年,MR chorangio-pancreatography(MRCP)により非侵襲的に膵管像が得られるようになった.

診断基準 日本膵臓学会(1995年)


     典型的な慢性膵炎症例では,腹痛や腹部圧痛などの臨床症状あるいは膵外・内分泌機能不全に基づく
     臨床症候 が見られる.慢性膵炎の臨床診断基準は,このような臨床症状あるいは臨床症候をもつ症例に
     適用されるものである.しかし,慢性膵炎のなかには,観察期間内は無痛性あるいは無症候性の症例も
     存在する.そのような症例に対しては,より厳格に臨床診断基準を適用すべきであり,期間をおいた
     複数回の検査所見による.
     診断基準の各項目は検査手順のおよその順序に列記するが,各項目はそれぞれ独立したものである.

1. 慢性膵炎の確診例(definite chronic pancreatitis) 

 (1a) 腹部超音波検査(US)において,音響陰影を伴う膵内の高エコー像(膵石エコー)が抽出される. 

 (1b) X線CT検査(CT)において,膵内の石灰化が抽出される. 

 (2)  内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)像において,次のいずれかを認める. 
    (i)  膵に不均等に分布する,不均一な分枝膵管の不規則な拡張.  
    (ii) 主膵管が膵石,非陽性膵石,タンパク栓などで閉塞または狭窄しているときは,
          乳頭側の主膵管あるいは分枝膵管の不規則な拡張.
 (3) セクレチン試験において,重炭酸塩濃度の低下に加えて,膵酵素分泌量と膵液量の両者
      あるいはいずれか一方の減少が存在する. 

 (4) 生検膵組織,切除膵組織などにおいて,膵実質の減少,線維化が全体に散在する.
      膵線維化は不規則であり,おもに小葉間に観察される.小葉内線維化のみでは慢性膵炎に適合しない.
      このほか,タンパク栓・膵石と,膵管の拡張・増生・上皮化生,襄胞形成を伴う.

2. 慢性膵炎の準確診例(provable chronic pancreatitis) 

 (1a) USにおいて,膵内の粗大高エコー,膵管の不整拡張,辺縁の不規則な凹凸がみられる膵の変形,
       のうち1つ以上が描出される.

 (1b) CTにおいて,辺縁の不規則な凹凸がみられる膵の変形が描出される. 

 (2)  ERCP像において,主膵管のみの不規則な拡張,非陽性膵石,タンパク栓のいずれかが観察される.

 (3a) セクレチン試験において,重炭酸塩濃度の低下のみ,あるいは膵酵素分泌量と膵液量が同時に減少する.

 (3b) BT-PABA試験における尿中PABA排泄率の低下と便中キモトリプシン活性の低下を同時に2回以上認める.

 (4)  膵組織像において,線維化がおもに小葉内にあるが膵実質脱落を伴う病変,
       ランゲルハンス島の孤立,仮性襄胞のいずれかが観察される. 

慢性膵炎の臨床経過


 腹痛が主体となる代償期と,膵機能不全に基づく症状が主体となる非代償期,
 およびその両者がみられる移行期に分けられる

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参考文献

 (1) 厚生省特定疾患難治性膵疾患調査研究班(班長 斉藤洋一)平成元年度研究報告書,18-26, 1991.
 (2) 日本膵臓病学会慢性膵炎臨床診断基準検討委員会: 慢性膵炎診断基準(日本膵臓病学会,1995)
 (3) 中野 哲 胆石性膵炎、今月の治療6(1): 16-19, 1998
 (4) 厚生省特定疾患難治性膵疾患調査研究班, 昭和62年度研究報告書, 23-27, 1988
最終更新:2008年03月25日 03:10