―カツン
かすがは物音で意識を取り戻した。
先程まで武田軍と上杉軍は戦をしていた。そこに自分も参戦していたはずだった。謙信の為に…
それなのに、何故か今、かすがは薄暗い部屋で冷たい鎖に繋がられていた。
それなのに、何故か今、かすがは薄暗い部屋で冷たい鎖に繋がられていた。
「よぉ、気づいたのか?」
そして聞き慣れた声、見慣れた顔が目前にあった。
猿飛佐助。かつては同じ忍びとして共に働いた事もあった。
猿飛佐助。かつては同じ忍びとして共に働いた事もあった。
「おまえは…っ」
佐助はにやりと笑う。
「戦は終わった。もちろん武田が勝った」
かすがの顔から血の気が低く。一瞬、目眩がした。
「う…嘘だ…謙信様が負ける筈が…無い」
自分に言い聞かすようにかすがは首を横に振る。
「へぇ、じゃあ持って来ようか。上杉謙信の首…」
「ふざけるなっ!」
遮るように言葉を発するかすがを見て佐助は首をすくめた。やれやれ、と。
「なぁ、あんたは解放されたんだぜ?誰かの為に盾になるなんてもうしなくていいんだ」
「…ッ黙れ!おまえの顔は見たくないと言った筈だ!」
「あ、そう。じゃあ見えなくしてやるよ」
佐助は布を取り出すと、気丈にも自分を睨みつけるかすがに近づいて行く。