マ「眠い・・・。」
 蒼「だから昨日、早く寝ないと、って言ったのに。」
 マ「反省はしてるけど、うぅ・・・結局ほとんど寝てないよ。
   こんな状態で出かけたらとてもじゃないけどもたないよ。」
 蒼「仕方ないなあ、僕が起こしてあげるから時間まで仮眠しなよ。」
 マ「そうしようかな。じゃあお願いね。」

  そう言うとまるで生ける屍のような足取りで寝床へと消えていった。



  しばらくして蒼星石が雑事を片付けているところにレンピカがやってきた。

 蒼「どうしたんだい?」

  それに答えたレンピカの動きに促され、蒼星石は時計を見る。

 蒼「ああ、もうこんな時間になっていたのか。
   てっきりまだ大分あると思っていたよ。ありがとう、君はいつも気が利くね。」

  作業を区切りのいいところで打ち切りマスターのもとへと向かう。

 蒼「マスターぐっすり寝てる。なるべく長く寝かしてあげたいけど・・・。」

  マスターが目の前で寝返りを打った。
  とても安らかな寝顔が現れる。

 蒼「ふふっ、安心し切っちゃって・・・そんなに僕の事を信じちゃっていいのかな?
   意地悪して起こすのを遅らせたらきっと大慌てだろうな。」

  そんな冗談を言いつつ一人でくすくすと笑う。

 マ「・・・ぃ・・・。」
 蒼「ん?」

  何事かつぶやくマスターの口元へ耳を寄せた。

 蒼「・・・もう、マスターったら!」

  どうやら夢の中でマスターは蒼星石との楽しいひと時を過ごしているようだった。

 蒼「あ・・・。」

  思わず向き直ると目の前、ほんのすぐそばにマスターの顔。

 蒼「今から夢の中で一緒に過ごす時間は無いけど、これくらいなら・・・でも・・・」

  マスターの顔を正面に置いて、蒼星石が葛藤を続ける。


 蒼「少しくらいなら・・・いいよね。」

  ようやく結論を出した蒼星石がわずかに唇を触れさせる。

 蒼「・・・・・・へへ。」

  マスターは何も気づかなかったようで相変わらず気持ち良さそうに寝ていた。

 蒼「さあ、マスター起きて。遅れちゃうよ!」
 マ「・・・ん・・・なぬっ!!」

  壁に掛かった時計を目にしたマスターが飛び起きた。

 マ「もうこんな時間!?」
 蒼「え?あっ!!」

  時刻を確認した蒼星石も思わず声を上げる。

 蒼「あ、あの・・・」
 マ「蒼星石がうっかりするとも思えないし、もしかしてわざと?嫌われてる?
   そりゃあそれもひっくるめて自業自得だけどさ。」
 蒼「え、ちが・・・」

  その時部屋の外から現れたレンピカが蒼星石に何事かを告げる。

 マ「どうしたの?」
 蒼「え・・・時計の針を進めておいた?そうすればすぐに起きると思った?」
 マ「え?」
 蒼「あのね・・・」

  レンピカの伝えた事を改めてマスターへと説明した。

 マ「なーんだ、まだそんな時間か。本当だ、これなら全然平気だ。」

  はめていた腕時計を見ながら安堵したように言った。

 マ「さっきはごめんね。気が動転して蒼星石にひどい事を言って。・・・傷つけちゃったかな?」

  しゅんとした表情になってマスターが謝った。

 蒼「あ、いや・・・いいんだ、こちらこそ勝手に・・・」
 マ「勝手に?」
 蒼「え、なんでもないよ。あはは・・・」
 マ「ふふふ、変なの。」

  笑っている二人をよそに、レンピカが内心得意げに飛び去っていった。