蒼「翠星石、さっきぶつけた所は大丈夫?」
 翠「う、あんな無様な姿は忘れて下さい!今度こそ鮮やかに見つけ出して名誉挽回です!!」
 銀「ジェリドみたいに汚名を挽回しないといいわねぇ♪」
 翠「うるさいです!」
 マ「あ、ちょっと待ってて。先にまな板を片付けてくるから。」
 銀「ちょうどいいわぁ、台所に行くなら飲み物を頂戴♪」
 マ「えー?」
 銀「何よ露骨に嫌そうにして。さっきまな板を借りた時に冷蔵庫が開いてたから閉めてあげたのよ?
   生ものが傷まずに済んだ恩返し位したっていいんじゃないの?」
 マ「え、戸が開いてたの?きちんと閉めたつもりだったけど・・・ありがとうね。」
 銀「それもあちこちの戸がだったのよぉ?本当に感謝しなさぁい。
   まっ、そこのところ分かったのなら飲み物よろしくぅ♪」
 マ「はいはい。」

  まな板を片付けて冷蔵庫へと向かう。
  しかし何故か冷蔵庫が開いていたというのが異様に気になった。
  なんだか慣れ親しんだ台所に他にも違和感があるような・・・

 マ「・・・?」

  何気なく冷蔵庫の最下段の引き出しを開けて首をかしげる。

 蒼「どうしたの?」
 マ「ああ、蒼星石。何をしに来たの?飲み物?」
 翠「違いますよ、待ってるのもかったるいから台所から探す事にしたんですよ。」
 銀「飲み物まだー?」
 マ「それなんだけどさ・・・変なものが・・・。」
 蒼「変なもの?・・・何これ?」

  一同が覗き込んだところにはオレンジの物体。

 マ「蒼星石にも覚えは無いんだ。」
 蒼「うん、知らない。」
 翠「野菜室ですし、色は変だけどキャベツかなんかだとか?」
 銀「少なくとも表面は野菜じゃないでしょ。よく見なさい、布みたいだし何かくるんであるんじゃないの?」
 マ「水銀燈が入れた訳でもないんだね?」
 銀「私は戸を閉めただけで何も出し入れしてないわよ。」
 蒼「その時にはもうあったの?」
 銀「さあ?多分最後に閉めたところだし、もう面倒で中も見てなかったわぁ。」

  『う、うぅ~~っ!!』

  その時、目の前からくぐもった声が聞こえた。

 翠「こ、こいつ・・・動きますよ!」
 蒼「どうする?」
 銀「大事をとってやっつけちゃうぅ?」
 マ「でも、こいつの『正体』は何かという疑問もある・・・少し調べてみてもいいかもしれない。」
 蒼「どうやって?」
 マ「そっと撫でてみよう。」

  目の前の物体を撫でてやるとそれに応える様に動く。

 翠「まるで『生き物』のようではありますね。」
 マ「そこに、不意打ちでちょっと叩いてみるッ!」

  『フギャ!』

  そんな悲鳴と共に動きが激しくなった。

 マ「うーむ、ぶたれてもだえるところも『生き物』のようだ。」
 銀「あらあら、暴れてる暴れてる。」
 マ「怒っているが『敵意』は持っていないようだ。」
 翠「で、正体とやらは?」
 マ「分からない!」
 銀「くだらなぁい、最初からぶっ飛ばしちゃえば終わりだったのに。
   私はどうでもいいけどこんな事していても時間の無駄よぉ?」
 蒼「確かに急がないとだね。これはどうしようか?」
 マ「とりあえず外に出してみよう。」

  引き出しの中いっぱい、ジャストフィットするように入っているそいつに手をかけた。

 マ「ぬ、抜けない・・・。」

  体重をかけて引っ張るも一向に抜ける気配は無い。

 蒼「手伝うよ。」

  蒼星石が僕の体に体重をかけて引っ張ってくれる。

 マ「ぐぬぬ・・・。」
 蒼「ガッチリはまっちゃってるみたいだね。」
 翠「じゃあ翠星石も手伝います。ほら、水銀燈も!」
 銀「私は出てきたそいつが危なそうだったら即座に仕留める役を引き受けるわぁ♪」
 翠「そんな事を言って体よくサボ・・・」

  翠星石が文句を言いかけたところでやっとこさ謎の物体が抜けた。

 マ「うわっ!!」

  急に抜けたので勢い余って後ろに倒れてしまう。

 銀「やっとカブは抜けましたぁ♪・・・あら。」
 翠「蒼星石、大丈夫でしたか?」
 蒼「僕は大丈夫、マスターは・・・おや。」
 銀「あらあら、まさかあなただったとはねぇ。」
 金「助かったかしら・・・うぅっ・・・。」

  顔の上から馴染みのある声がした。

 翠「金糸雀・・・いったいどこから。」
 金「ひどいかしら、さっきから冷蔵庫の中心で助けを叫んでたかしら。」
 蒼「ああなるほど。」
 翠「抜けたのはカブじゃなくてカナだったとは・・・。」
 銀「どっちかというと抜けてるだけどぉ♪」
 金「うぅ・・・もう外に出られないかと思ったかしら。寒いし、暗いし、狭いし、怖かったかしら。」
 銀「金糸雀・・・」
 金「な、何よ!?」
 銀「氷点下の礼拝堂だと鞄の中も似たようなものよ?」
 金「そんな真面目な顔して言わないで欲しいかしら!」
 マ「あのさあ、重いんだけど・・・。」
 翠「確かにどことなく重い発言ですね。」
 蒼「変に意地を張るから。」
 金「でも本当に助かったわ、ありがとかしら!!」
 マ「それはいいんだけど、いい加減に人の顔の上に座って話すのはやめてくれない?」
 金「あ、ごめんなさいかしら!!」

  金糸雀が慌ててどいてくれた。

 マ「で、なんであんな事態になったの?」
 金「冷蔵庫を開けて中を覗いてたら、いきなり後ろから思い切り戸を閉められて・・・中にはまり込んで・・・。」
 翠「水銀燈・・・。」
 銀「私は悪くないわよ!それに隠れるつもりだったのなら自分じゃ閉められないしちょうどいいじゃない。」
 金「しかもその後はお尻を撫で回されたり叩かれたり・・・」

  今度はこちらに視線が集まった。

 マ「ぼ、僕は悪く・・・悪かったです、はい。悪乗りしてごめんね。」
 金「でも水銀燈にどつかれることなく助けてもらえたから結果オーライかしら。気にしないで。」
 蒼「それにしてもあんな所に隠れようなんて無茶するなあ。」
 金「違うかしら。別にここに隠れようとしていた訳じゃ無かったかしら。」
 マ「じゃあ何故?」
 金「お腹が減ったし何かつまみ食いしようとしたらどこを見ても中がスカスカで・・・」
 マ「つまみ食いねえ・・・。」

  みんながちょっと呆れた感じになったのにも気付かず金糸雀は続ける。

 金「それでさっきの引き出しの奥の方を漁っていたらいきなり閉められたかしら。
   ピチカートも一緒に閉じ込められちゃったから誰も呼べないし・・・」
 蒼「断りも無しに他人の家でそんないじきたない事、天罰覿面だね。」
 マ「おまけにきちんと閉めてないし。」
 金「だって誰もいないし、緊急避難かしら!寒かったかしら!!」
 マ「まあ・・・かくれんぼが終わったら温かいお茶を入れておやつでも食べようね。」
 金「本当!?じゃあカナもお詫びも兼ねて探すの頑張っちゃうわ!早く終わらせちゃうかしら!!」
 翠「ちっとも時間短縮にならなそうですね。」
 銀「むしろ足を引っ張りそぉ♪」
 金「ひどいかしら!」
 蒼「二人ともやめなよ。頑張る事自体にも意義はあるんだし、結果的にどうあれその気持ちは
   責めるべきではないよ。だから金糸雀もあまり気にせずに取り返しの付かなくならない範囲で
   手伝ってくれればいいんだよ?」

  蒼星石が金糸雀に微笑みかける。
  まるで母親が子供をあやすような優しい笑顔。
  なのだが・・・

 金「今のが一番堪えたかしら・・・。」

  あ、やっぱりだ。

 マ「期待してるから頑張ろうね。とりあえず台所を探そう。」

  凹んだ金糸雀の頭を撫でながらそう言って励ます。

 蒼「・・・・・・。」
 金「そうよねそうよね!カナが手伝えば百人力よね!!」
 マ「あはは・・・。」
 金「じゃあ早速探すかしら。・・・む!この棚が怪しいかしら!」
 マ「あ、そこはそっと開けないと・・・」
 金「きゃあぁぁぁーー!!」

  時既に遅く、勢いよく開けた為に棚から崩れ落ちた鍋やらに埋もれて完全に沈黙する金糸雀。

 マ「あーあ・・・さて、まず助けなきゃ。」
 蒼「それと片付けも。」
 マ「今度は崩れたりしないよう考えて整理しようかな。」
 銀「かくれんぼしててレスキューされてばかりだなんて、確かに百人力かもねぇ。
   ただぁ、向かう方向が明後日もいいところだけど。」
 翠「お前も優しさが自他の不利益になる事もあると覚えておいた方がいいですよ?」
 マ「あははは・・・。」

  その後、無事に掘り起こされた金糸雀も加えて4人で探し回ったが他には誰も隠れていないようだった。


      -残り時間:34分-      残ったドールは・・・4人


       得られたもの ・・・・・・ きれいに片付いたお台所