title:静かな冬の日

マ「うおっ、寒い…もう少し布団の中でゴロゴロしてよう…」

静かな冬の朝、誰もが陥る布団の中から出たくないという衝動に俺も駆られる
しばらくの間、俺は布団の中の温もりを噛み締めるように布団の中に篭っていた
そこへトテトテと小さな足音を立てて蒼星石がやって来た。

蒼「マスター!いくら寒いからって布団の中に篭ってたらダメですよ!」
マ「えぇ~別に今日は休日なんだからさ、ダラダラしてても良いじゃないか」
蒼「ダメです!折角の休日だからこそ、早起きしなくっちゃ!」

  そう言って蒼星石が布団を引っぺがす

マ「うぅ…布団無しじゃあ横になってても意味がない…仕方が無い起きるか」

  寒さに身を震わせながら俺は体を起こした

蒼「ねぇマスター、外見てごらんよ!」

  蒼星石がなにやら興奮しながら俺に言ってきた
  そして俺は蒼星石に促されるまま窓から外の景色を見た

マ「なるほど…だからこんなに寒くて静かなんだな…」

  雪だ、辺り一面雪に包まれた銀色の世界だった
  普段なら、そこら辺を騒音を発生させる鉄の塊が走って居るが
  雪が積もっているといつも通りには行かないのだろう
  今日はそれが一台も見当たらなかった。

マ「しかし…雪が降るだけでも珍しいのに積もるだなんて…」

  俺が住んで居る所はどっちかと言えば田舎だが
  一冬に一回雪が降るか降らないか
  そんな感じの気候だった

蒼「見てマスター、凄い綺麗だよ!」

  雪がかなり珍しいのか、興奮している蒼星石
  確かに、蒼星石の言う通り目の前の景色はとても綺麗だった
  しばらくの間、俺は白銀の世界をただ眺めていた

蒼「ねぇ、マスター!折角雪が積もってるんだから雪遊びしない?」

  雪の所為なのか蒼星石のテンションがかなり高い

マ「そうだなー、久しぶりにやってみるのも悪くないかもしれないな」
蒼「じゃあ、まず雪だるま作ろうよ!」
マ「よし!作るからには飛び切りデカイの作るぞ!」

  そうして俺と蒼星石は外に出て雪だるまを作る事にした

蒼「うんしょ、うんしょ…」
マ「ははは、結構大きくなったねー」
蒼「もう!見てないでマスターも手伝ってよ!」
マ「OK、じゃあ俺が体の部分作るから蒼星石は頭の部分お願いね」
蒼「うん、分かったよマスター」

  しばらく二人で雪だるまを作っていた…
  そして30分経った時

蒼「やった!やっと完成したね」
マ「しかし…あまり大きくないね…」
蒼「それは一体誰の所為かなぁ?」
マ「はい…俺が体力無いくせに体を造ると言った所為です」
蒼「まぁ、こんな小さい雪だるまも可愛いよね」
マ「大事なのは大きさじゃなくてその過程を楽しめたかだよね。」
蒼「今のマスターがそんな事を言っても説得力無いですよ…」
マ「ほらほら!寒くなってきたから家に入るぞ!」
蒼「あっ!逃げないでよ!」

  そして家の中に入った俺と蒼星石
  しばらくして蒼星石が俺に話しかけてきた

蒼「ねぇマスター、明日になったらあの雪だるま溶けてなくなるのかな?」
マ「明日かどうかは分からないけど近い内に溶けるだろうね」
蒼「折角完成したのに…すぐ溶けちゃうなんて何だか雪だるまが可哀想だよ…」
マ「うーん…そんな事言ってもこの世に存在している物は遅かれ早かれいずれは消えるんだ」
蒼「そんな事は分かってるよ…でも…たった数日で溶けるなんて…」
マ「さっきの雪だるまの話じゃないけどさ、大事なのは長さじゃなくて
  中身をどれだけ楽しめるかじゃないかな?」

蒼「長さじゃなくて中身…」
マ「あの雪だるまだってさ、俺らが手を加えなかったらただの雪として溶けてたわけだし」
蒼「うん…確かにそうだね…」
マ「蒼星石…どうした…少し変だぞ?」

  先程とは打って変わって蒼星石の顔が曇っている
  しばらく蒼星石は俯いたまま黙っていた…
  そして蒼星石がやっと重い口を開いた

蒼「雪だるまみたいに…一瞬しか存在出来ない物もあるのに…
  僕みたいな人形が100年以上存在して…」

  あぁ…また蒼星石の自虐が始まったか…
  この子はいい子過ぎるが故にたまに自分を必要以上に責める
  まぁ、それがこの子の長所でもあり短所でもあるんだが…

マ「なぁ、蒼星石…少し考え方を変えたらどうだ?」
蒼「どういう事…?」
マ「寿命って言うのは神様がその存在して居る物に対して相応しい期間分与えるって考えるんだ
  ずっと溶けずに残ってる雪だるまなんて嫌だろ?」
蒼「でも…それなら何故僕はこんなに長い間存在させられて居るんだろう…」
マ「うーん…蒼星石はアリスゲームって辛い運命を背負ってるわけだ
  それなら100年位の準備期間があっても良いんじゃないかな?」
蒼「……」
マ「ほらほら、そんな下らない事考えるよりさ、与えられた時間を楽しくに過ごそうよ!」
蒼「……」
マ「確かに長く生き過ぎる事は苦痛かもしれない、でもそれを苦痛と取らずに
  神様に長い間生きる資格を与えられた幸せと取ればいいんじゃないかな?」
蒼「長く生きるも何も…僕はお父様に作られた人形だから
  最初から生きて居ないし死にもしない…ただ存在して居るだけ……」

マ「いい加減にしろ蒼星石!」

  家中に響くほどの大きい声で俺は叫んだ
  相当俺の表情が鬼気迫る物だったのだろう
  彼女は俺のほうを見て怯えていた…

マ「じゃあ聞くが蒼星石、お前の言う生きるとは何だ?
  人工的に作られた物ならば喋ろうが、意思を持とうが生きていないと言うのか?」
蒼「その通りだよ、所詮僕はお父様の手によって作られた人形、
  人の手によって作り出された物に生も死も無いよ…」
マ「蒼星石、お前は自分が人形だと言う事を気にしすぎてると思う、
  人間も親という人間が作った人形みたいな物だ」
蒼「でも僕達ドールはマスター達人間が子供を作る感じで
  ドールを作る事が出来ない…」
マ「確かにそうだが…」
蒼「やっぱり僕はマスター達とは違うんだ…
  ずっと…この姿のまま老ける事もせず、ただ動けなくなるのを待つだけなんだ…」
マ「確かにお前は俺とは違う人形だ…だがこれだけは言いたい
  人の手で作られたからって生きていないって事は無いと思う
  魂こそ宿ってないかもしれないが皆生きてるんだよ…」
蒼「でもやっぱり…」
マ「もうこれ以上何も言うな…お前がどんな存在であろうと
  お前に対する俺の気持ちは変わらないさ…」

  そう言って俺は蒼星石を抱きしめた
  感極まったのか蒼星石の目から雫が零れ始めていた

蒼「グズッ、嘘じゃ…無いよね?」
マ「あぁ…こんな可愛い娘に吐く嘘なんて一つも無いさ…」
蒼「約束だよ?…それと…もう少しこのままで居てもいいかな…?」
マ「蒼星石がそれを望むなら…」

  しばらくの間二人は抱き合った
  何者にも壊す事が出来ない静寂が
  二人を包んでいた…