台所で今日も蒼星石が夕飯を作っている。
 しかし、今日は何故か毎日聞こえる軽快な包丁の音は聞こえない。
蒼星石「フフフフフ」
 蒼星石は不敵な笑みを浮かべている。
 買い物から帰ってきてからずーっとこの調子だ。
貴方『夕飯の時にでも何があったか聞いてみるか・・・。』
 そう思いつつリモコンに手を伸ばしニュースを見る事にした。
 ニュースを見初めて数分経つと台所から"ピーッ"って音がした。
 どうやらヤカンで湯を沸かしていたらしい。
蒼星石「マスター 夕飯で来たよー」
貴方「嗚呼、今行く」
 蒼星石に言われるままテーブルに移動する貴方。
 夕飯としておかれている物は何処かで見た事あるインスタントラーメンだった。
貴方『まぁ、毎日家事頑張ってくれてるし、たまにはこういうので息抜きもありだよな。』
貴方「頂きます。」
 そう言い箸を取りメンをすする貴方。
 ふと、蒼星石の不敵な笑みの事を思い出し聞こうと思ったその瞬間
蒼星石「フフ、フフフッ、アーッハッハッハハハハハハ」
 突然笑い出した蒼星石
貴方「ど、どうしたんだ? 蒼星石っ 買い物から帰って来てから何か変だぞ?」
蒼星石「フフフ、マスター あのね、このラーメンを食べると僕は魔王になれるんだよ。」
貴方「ど、どういう事だよっ!?」
蒼星石「これを見たら判るよマスター」
 そう言って差し出されたのはラーメンの蓋だった。
貴方「何々・・・ラーメンの中のラーメン、ラ王 コレを食べた瞬間ラ王の中の王を貴方の中に感じるであろう。」
貴方「何だこの・・・冴えない宣伝文句は・・・しかも魔王じゃなくてラ王じゃないか。」
蒼星石「・・・」
貴方「・・・」
蒼星石「何を言ってるのマスター? ラーメン食べたくらいで魔王に成るわけ無いじゃん」
蒼星石「それより早く食べないとメンが伸びちゃうよ?」
 蒼星石はもう半分以上食べ終わっていた。
貴方「・・・そうだな、延びないうちに頂くか・・・。」
貴方『うぐっ 一杯食わされた気がする・・・。』

 蒼星石に促され、慌ててラーメンをすする貴方。
貴方「イテッ」
 慌ててメンをすすった為に舌を噛んでしまった。
 口の中に血の独特な鉄の味が広がった。
蒼星石「大丈夫?マスター・・・。」
 蒼星石は心配そうにこちらの様子を伺っていた。
貴方「だ、大丈夫だよ。少し舌を噛んだだけさ。」
 放っておけばそのうち治るだろう、でも痛みを我慢していたのは事実だった。
蒼星石「マスター・・・本当は痛いんでしょ?」
蒼星石「ボクに心配かけない様にしようとするマスターのそういう所好きだけど・・・。」
蒼星石「痛いなら痛いってボクだけにはちゃんと言って欲しいな・・・。」
貴方「はい・・・痛いです。」
蒼星石「口開けて見せて・・・。」
貴方『蒼星石にはかなわないな・・・』
 そう思いながら口をあけた。
 貴方の口の中を覗き込み蒼星石。
蒼星石「マスター・・・血が一杯出てるよ?」
貴方「ほれは、ひからないだろ・・・きっらわけらし・・・。」
蒼星石「あっ、ごめんごめん・・・」
 貴方の言葉にならない言葉を聞いて慌てて少し離れる蒼星石。
蒼星石「・・・で、何?マスター」
貴方「まぁ・・・あれだ、舌切った訳だし、血が出てても仕方ないだろって・・・。」
蒼星石「あっ・・・うん・・・そうだね・・・。」
 蒼星石は何かを考えている・・・そう貴方は感じた。

蒼星石『血・・・それはボク達ドールには無くて人間には有る物…。』
 蒼星石の考える表情は真剣そのものだった。
 真剣に考えるその姿を見ているとどうしても何を考え込んでいるのか聞いてみたいという衝動に貴方は駆られた。
貴方「なぁ蒼星石・・・何をそんなに考え込んでるんだ?」
蒼星石「えっ?・・・うん・・・あのねマスターお願いがあるんだけど・・・。」
蒼星石「もう一回傷口見せてくれないかな?」
貴方「嗚呼・・・そんな事か、別に構わないさ。」
 そう言いながら、見やすいように口をあける貴方。
 そしてさっきと同じように口の中を覗き込む蒼星石。
蒼星石「これが血・・・ボク達ドールには無くて人間には有る物…。」
 蒼星石は血じっと見つめていた。
 少しすると、貴方の舌に何か柔らかい物が当たる感触がした。
 それと同時に2人だけのリビングに、ピチャピチャと音が鳴り響く。
蒼星石「マスターごめんね。」
 そう蒼星石が言ったように聞こえた。
 どれ位経っただろうか・・・時間の感覚はまるで無く。
 貴方は蒼星石にされるがままになっていた。
 ふと、貴方の視界に蒼星石の全身が写る。
蒼星石「マスターごめんね・・・その・・・ボク我慢が出来なくて・・・。」
 自分のした事が恥かしかったのだろう蒼星石の顔が少し赤くなってるように感じた。
貴方「嗚呼、別に良いさ気にする事は無いよ。それに蒼星石とディープキスしてるみたいで良かったしね。」
 蒼星石の顔がますます赤みを増す。
蒼星石「もーっ マスターのばかっ」
 貴方の口の中から血の味は何時の間にか消えていた。

おしまい