不意に植物から伸びた苺轍が意思を持っているかのように蒼星石の鋏にまとわりつく。
  うまく斬ることも出来ず、次第にびっしりと表面が覆われてきた。

 雛「その鋏さえ使えなくなったらヒナの勝ちなの。」
 蒼「くっ!」

  苺轍を振りほどこうにも成長が早くてままならない。
  絡む苺轍の量は増す一方だ。

 蒼「なら!」

  蒼星石の手に水銀燈が使っていた剣が握られた。
  しかしやはり勝手が違うのだろうか、思うように苺轍を一掃できない。

 雛「流石の蒼星石も使い慣れてないその剣じゃヒナの苺轍をうまく斬れないようね。
   年季の差なの。そのままその剣も絡め取っちゃうの。」

  呼応して苺轍が剣にも魔手を伸ばす。

 蒼「確かに・・・だがっ!!」

  一転して蒼星石が雛苺めがけて飛び掛った。

 雛「きゃっ!!」

  雛苺がバイオリンを消して慌てて逃げる。

 蒼「確かにこの剣じゃ君の苺轍を斬るのにも一苦労だ。
   でも、君自身はそうでもないみたいだね。」
 雛「く・・・この位ならベリーベルに直してもらえるけど・・・女の子の顔を傷つけるなんて許せないの!」

  そう言う雛苺の頬がかすかに切れていた。
  咄嗟の事にかわしきれずに掠ったのだろう。
  ローザミスティカを集めたとはいえ人形としての強度にはあまり変化が無いようだ。

 蒼「ふふ、反対の頬も差し出すかい?意外と美しいお化粧になるかもしれないよ?」
 雛「そういう悪趣味な冗談も、あなたのそういう性格も、ヒナは大嫌いなの。」

  剣を突きつけての挑発によってか、雛苺の顔からさっきまでの余裕の笑みが消えていた。

 蒼「嫌いで結構、その方が僕も戦いやすい。」
 雛「相変わらずね、そういったところは。
   それともわざと憎みあうように仕向けないと戦えないの?」
 蒼「・・・・・・。」
 雛「スィドリーム、如雨露を頂戴なの。」

  雛苺が庭師の如雨露を握り、振りかぶる。
  まずい事に今の蒼星石には巨大な植物への対抗手段が無い。
  蒼星石なら避けるのは容易いだろうが、それも長く続いて消耗すれば不利になる。
  しかし、切り札はここにある。

 マ「蒼星石、受け取って!」

  とっさに駆け出すと封印の解けた庭師の鋏を拾い、蒼星石へと目がけて放り投げる。
  雛苺もさっきので無我夢中になって苺轍の維持には気が回っていなかったようだ。

 蒼「ありがとう!」

  蒼星石が見事に鋏をキャッチした。
  まさにその瞬間、蒼星石の足元を含む一帯から植物が芽吹き、天を衝く勢いで伸びだした。
  あっという間に蒼星石の体も上空へと持ち上げられ、その姿が見えなくなった。