僕は今蒼星石の小さな手を握っている。
蒼星石の可愛い手も僕の手を力いっぱい握っている。
蒼「く・・・!」
必死で頑張る姿を眺めているとなんだか和んでしまう。
ただの腕相撲をこれ程まで楽しく思った事はない。
蒼「うん・・・しょ!」
蒼星石が力を入れるがびくともしない。
そもそも体のサイズが違うし、特殊な能力があるとは言えやはり女の子だ。
マ「ふふ・・・。」
思わず笑いがこぼれる。
蒼「マスター、真剣にやってないでしょ!」
マ「いや真剣だよ?」
蒼「じゃあ何で笑うのさ。」
マ「蒼星石が可愛いなあって。」
時折見せる冷たく鋭い雰囲気は微塵もない。
まるでごくごく普通の女の子だ。
蒼「・・・ほら真剣じゃない。」
そう言ってまた頑張り始める。
人間と違って筋肉が疲れるような事もないのだろう。
形勢は変わらないものの一向に疲れを見せない。
マ「じゃあ真剣勝負になるようにするか。」
蒼「何?」
マ「勝ったら蒼星石にキスさせて♪それなら必死で頑張っちゃう。」
蒼「え!?マスターから?僕に?」
マ「そ。唇と唇でチュッとね♪」
蒼「な、な・・・!」
マ「はい決めたー。じゃあいくぞー。」
そう言って腕に力をこめようとする。
瞬間、膠着が崩れた。
ただし、自分が押し負ける方へと。
マ「あれ?」
蒼「真剣勝負でいいんだよね?」
蒼星石が冷静にそう言った。
マ「く・・・。」
事態はすぐに飲み込めた。
蒼星石の力が増しただけではない。
同時に脱力感に襲われていた。
マ「くそっ!」
慌ててテーブルの端を左手でつかむ。
その薬指には灼け付く感覚。
なんとか互角の位置まで戻した。
蒼「へえ、やるね。」
いつまでも消耗しない蒼星石と急速に消耗し続ける自分。
勝つには短期決戦しかない。
少しずつだが押し込んでいく。
蒼「くぅ・・・。」
蒼星石にも焦りが窺える。
あと少し・・・。
もうちょっとで勝ちというところで手がぴたりと止まる。
マ「く、く・・・!」
力を振り絞るも固定されたようにびくともしない。
ふと見ると蒼星石の顔には笑みが浮かんでいた。
蒼「はい、それまで。」
余裕の声と共に圧倒的な力で押し返される。
そして丁度さっきまでと反対の位置で手が止められる。
蒼「ふふふ、勝っちゃうよ?」
必死で抵抗する。
しばらくして、
蒼「はいお終い。」
手がテーブルに触れた。
そのまま体ごとこてんと倒れてしまう。
もうへとへとで起きられない。
いわゆる『ハナクソほじる力も残ってねえ』って有様だ。
蒼「あーあ、あんな風に無駄に粘るからだよ。」
僕をからかっていた蒼星石が意地悪く言う。
マ「キスが嫌なら・・・言ってくれれば・・・しなかったのに。」
蒼「嫌じゃないよ?」
蒼星石が帽子を脱いでテーブルに置く。
蒼「ただ・・・ダメでしょ?」
蒼星石が倒れた僕の顔をのぞきこむ。
そのまま顔と顔が接近し、唇と唇が触れた。
マ「ん・・・・・・はあっ。」
蒼「忘れちゃったの?そういう事をする時はあなたはマスターだけど、ご主人様は僕。」
蒼星石が横になったままの僕のシャツのボタンを外す。
蒼「ご主人様に自分から手を出そうなんていけない子だ。」
マ「な、何を・・・?」
蒼「マスターの負けだから罰ゲームだよ。」
あっという間にベルトまで外されてしまった。
蒼「きちんと躾けてあげるよ。いろいろとお仕置きしながらね。」
笑いながらも冷たく鋭い雰囲気を湛えた蒼星石がそう宣言した。
最終更新:2007年05月09日 22:48