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 翠「アイスが食べたいです!」

  早めの夕食後に翠星石が言った。

 マ「アイス?今は無いよ。買ってくる?」
 翠「それでいいです。待ちますから。」
 マ「じゃあ行ってくるよ。ガリガリ君でもいい?」
 翠「あんな不健康そうなイガグリ頭いらんです。」
 マ「でも安い上に当たり付きだよ。」
 翠「駄目ですっ!翠星石はハーゲンダッツが食べたいんです。」
 マ「ハーゲンダッツ?なんでまた急に。」
 翠「今日ネットとやらで見たのです。」
 蒼「翠星石、いくらなんでもワガママだよ。」
 マ「むー・・・まっいいか。たまには贅沢しようか。」
 翠「やったです!」
 蒼「ありがとうございます。」

  双子がマスターを玄関先まで見送る。

 マ「じゃあ今度こそ行ってきます。お留守番はお願いね。」
 蒼「はい。」
 翠「ちょっと待つです!」
 マ「何?」
 翠「忘れ物をしてますよ。」
 マ「え?お財布はあるし、鍵も、携帯電話もあるけど・・・。」
 翠「味のリクエストですよ。翠星石はラムレーズンがいいです。」
 マ「ああそっか。了解。蒼星石はどうする?」
 蒼「僕は何味があるか知らないのでお任せします。」
 マ「分かった。じゃあ急いで買ってくるから。」
 翠「きっとラムレーズンを買って来るですよ。」
 マ「はいはい。」


  そう言ってマスターが出かけてから早一時間が経とうとしている。

 蒼「マスター遅いね。すぐ近くにスーパーがあるのに。まさか事故にでも・・・。」
 翠「んっふっふ。」
 蒼「何がおかしいんだい?」
 翠「まあこれを見てみろです。」

  翠星石がパソコンをいじって何やら見せる。

 蒼「これがハーゲンダッツってやつか。結構高いね。」
 翠「ここに味の一覧があります。」
 蒼「いろいろあるんだね。これが翠星石の頼んだラムレーズン・・・って今売ってないじゃないか。」
 翠「そうですね。限定期間が終わったらしいですよ。」
 蒼「そうですね、ってマスターが困っちゃうよ。」
 翠「だからいいんですよ。頼まれて約束したのに無い。
   そこでどうするかで翠星石への愛情の度合いも測れるというものです。」
 蒼「ひどいなあ。」
 翠「今は一時間ってとこですね。まあこれ位は最低でも、ってとこですかね。」

  蒼星石はあちこち探し回ってるマスターを想像して同情した。

 マ「ただいまー!」
 翠「おっ、なんだか早かったですね。愛情が足りんです。」
 蒼「まあまあ、ひょっとしたら運よく見つかったのかもしれないしさ。」

  二人揃って出迎える。

 翠「うおっ!」
 蒼「これはすごい。」

  マスターは手から大きな袋を提げている。
  中にはアイスがどっさりと入っているようだ。

 マ「なんかラムレーズンがいくら探しても無くってさ。
   代わりに他の味はあるだけ買ったから好きなのを選んで。」
 翠「しょーがありませんねー♪今回は許してやりますよ♪」
 マ「ごめんね、今度見かけたら買うようにするから。」

  マスターが翠星石の頭を撫でる。

 翠「まあ気にするなです♪」

  マスターの対応にそれなりに満足したのか翠星石はご機嫌だ。

 マ「しかし流石に多すぎたかな。」
 翠「平気ですよ。冷凍庫にアイスを常備は乙女のたしなみです。」
 マ「そうなの?」
 翠「そうなのです。『ソウ008』という情報ポータルコミュニティサイトで見ました。」
 マ「へえー僕には良く分からないけど物知りだね。」

  蒼星石はそんな二人を尻目に黙々と大量のアイスを整理している。

 翠「まあ溶ける前に食べましょうか。」
 マ「そうするか。まず二人から好きな味を取ってよ。」
 翠「えーと、じゃあ翠星石はー・・・」
 蒼「あの。」

  そこで蒼星石が口を開く。

 マ「何?」
 蒼「さっき調べたらアップルパイ味があったそうなんですが・・・。」
 マ「それが良かった?」
 蒼「いや、いいです。気にしないで下さい。」
 マ「・・・うーん、翠星石はまだアイス我慢できる?」
 翠「平気ですよ。」
 マ「じゃあ待ってて。もう一回アップルパイとラムレーズンを探してくるよ。」
 蒼「わざわざいいですよ。」
 マ「またそんな遠慮をする。見落としてたかもしれないしちょっとだけ待っててね。」

  マスターは笑いながら蒼星石の頭も撫でると駆け足で出かけて行った。

 翠「ラムレーズンはもういいんですけどね。どうせ販売終了ですし。」
 蒼「ふふっ、アップルパイも今は販売してないらしいんだけどね。」
 翠「!?」


  マスターが出かけてからさらに一時間。

 翠「さっきはそろそろでしたね。」
 蒼「どうやら僕も翠星石と同じくらいには思われてるのかな?」
 翠「みたいですね。」

  二人で笑いながら話をする。
  しかし今度はまだ帰ってこない。
  そんなこんなで出かけてから二時間になった。

 翠「遅いですね。」
 蒼「遅いよね。」
 翠「どっか遠くのお店まで足を延ばしてるんですかね?」
 蒼「マスター、大丈夫かな。」

  二人に少しずつ不安が芽生えてきた。
  三時間経過。
  マスターは未だに帰ってこない。

 翠「大丈夫ですかね。どんくさい事して車にでもぶち当たったとか・・・。」
 蒼「僕が・・・あんな下らない事しなければこんな事には・・・。」
 翠「それを言うならまず翠星石のせいですよ。」

  暗い雰囲気が漂い始める。

 翠「馬鹿な事をしたもんです。」
 蒼「そうだね、試すような真似をしなければ良かった。」
 翠「向こうからどう思われていようと私たちにとっては大事なマスターですものね。」
 蒼「もう合わせて四時間以上になるのか。・・・その分を三人で過ごしていたら良かったのにね。」
 翠「そうですよね。きっとこんな気持ちになる事もなく楽しかったはずです。」

  話をしていてもどんどんと沈んだ感じになってしまう。

 マ「ただいま!!」
 翠・蒼「マスター!!!」

  二人が大急ぎで玄関先へと走っていった。

 マ「ついに念願のラムレーズンとアップルパイ味を手に入れたぞー!!」
 翠「そんなの関係ないです!」
 蒼「心配したんだからね!」
 マ「ごめんごめん。とりあえずお茶入れて食べながらでも話そうか。」


 翠「お疲れ様でした。」

  翠星石が座っているマスターの肩を揉む。

 マ「珍しいね。ありがとう。」
 蒼「でも二人ともそのくらい感謝してるんですよ。」

  お茶を入れながら蒼星石が言った。

 マ「そんなに喜んでくれると嬉しいねえ。苦労して手に入れた甲斐もあるってもんだ。」
 翠「アイスなんかが理由じゃありません!」
 蒼「やっぱり大変だったんですか?」

  マスターにお茶を出しながら尋ねる。

 マ「大変だった、大変だった。」
 翠「そんな遠くまで探してくれたんですか?」
 マ「いや、翠星石が話してくれた事を思い出してさ、友達に聞いてみた。」
 蒼「友達って、女の人ですよね。」
 マ「うん。そうしたら運よくハーゲンダッツのストックしてる子が居てさ、その子が持ってた。」
 蒼「その人のお宅が遠かったんですか?」
 マ「いや、そんなに遠くないから貰いに行ったんだよ。そうしたらさ・・・」
 翠「そうしたら?」
 マ「電球の交換に始まってあれこれと雑用させられちゃったんだ。」
 蒼「それはお疲れ様でした。」
 翠「何時間もそいつに振り回されたんですね。」
 マ「その上さ、今は手に入らない限定品だからって食事もおごらされちゃってもう大変!」
 蒼「お食事ですか。」
 翠「それでこんなに遅くまで?」
 マ「他の友達とかは呼ばれなくて助かったけどさ。そこそこ高いレストランでお酒まで飲むんだよ?
   周りはみんな幸せそうなカップルだらけでさ、もう勘弁してくれよって感じだよ。」
 翠「へえ、しゃれた感じのレストランで、」
 蒼「二人きりで楽しくディナーですか。」

  二人の微妙な変化に気付くことなくマスターは愚痴をこぼし続ける。

 マ「挙句の果てに酔いつぶれたとか言って家まで送らされてさ。
   気分悪いからってしばらく傍で面倒を見させられるし。
   だったらそんなにお酒を飲むなって話だよね。とにかく疲れた!」
 翠「・・・・・・。」
 蒼「・・・・・・。」
 マ「でも二人の希望の味が手に入って良かったよ。はい。」

  笑顔に戻ったマスターがアイスを取り出して二人に渡そうとする。

 翠「そんなアイスいりません!」
 蒼「やっぱりリッチミルクにしておきます。」
 マ「ええっ!?・・・まあ時間が経ったら気分も変わっちゃうよね。
   じゃあ、せっかくだから僕はこの味のアイスを選ぶ・・・」
 翠「駄目です!」
 蒼「冷凍庫に封印、いえストックしておきます。」
 マ「・・・はい。」

  結局そのアイスは末永く冷凍庫の主となったそうな。