30分ほど前から、テレビはずっと同じ内容を繰り返し伝えている。

米政府の発表によると、24時間以内に巨大隕石が地球に衝突する事がほぼ確定的となったそうだ。
それに対する各国政府の見解がどうのこうのと言ってるが、最早滅びるというのにそんなのはどうでもいい。

蒼星石は、さっきからずっと俺の腕にしがみついたまま離れようとしない。
無理もない。ある意味これは死の宣告だ。俺だって正直、怖い。
だが、今は不思議と落ち着いていられた。
蒼星石が恐怖で潰れそうになっている今、俺が守ってやらなくて誰が守ると言うんだ。

「ねぇますたぁ…これって、僕もマスターも、翠星石や真紅たちも、みんな死んじゃうって事、なのかな…?」

蒼星石が、震える声を絞り出すように言う。

「ああ。そうみたいだな」
「…そう、なんだ…。」

俺は素直に事実を告げた。今更とってつけたような慰めを言ったところで、どうなるわけでもない。
蒼星石は、希望を失ったようにがっくりとうな垂れた。
しまった、ちょっと言い過ぎた。そう思い、俺は蒼星石をそっと抱き締める。

「…!ま、まままマスター!?何を…」
「だけどな蒼。俺はこうも思うんだ。」

「…え?」
「年を取らず、死ぬ事も無いローゼンメイデンは、今まで何度と無くマスターとの別れを繰り返してきたんだよな?」
「う、うん…」
「多分、今までのマスターは悔しかっただろうな。蒼星石を一人残し、辛い思いをさせて、自分だけ逝かなきゃならなかったんだから」
「そう、なのかな…?」
「だとしたらさ。共に生き、共に最期を迎えられる俺は、今までで最高に幸せなマスターだと思うんだ。」
「マスター…」
「死を怖れるのはごく自然な事だ。俺は、残された時間ずっと、こうして蒼を抱きしめていたい。…駄目か?」
「ぐす…ありがとう、ますたぁ…僕も、最後のマスターがマスターで…本当によかった…」

そうして、しばらく俺と蒼星石は抱きしめあっていた。


「ねぇマスター」
「ん、何だ?」
「その…キス、してもいいかな?」
「お前から言ってくるなんて珍しいな」
「えへへ。たまにはいいでしょ?」

窓の外がいやに騒がしい。
けれど俺たちにはそんな事は関係なかった。今までで一番永く、そして…幸せな時間。

「あむ…んっ…ますた…ますたぁ…だいすきぃ…」
「蒼、俺もだ…愛してる…」




空が、やけに眩しい。