マ「あ・・。いやぁ、悪い悪い。その、蒼星石のおなかがとてもとても魅力的だからさ、つい」
    俺はばつが悪そうに蒼星石に謝った。

  あくまで取り繕うと食い下がるマスターだったが。

蒼「知りませんっ」

  ぷいっと蒼星石はそっぽを向いてしまった。

マ「あ~~、ほんとごめん。機嫌直しておくれよ~」
乙「おねえちゃんなんでおこってるの?」
マ「さ、さぁ、なんでだろうね。はは」

  困り顔と笑い顔半々のマスター。
  乙レデスは蒼星石とマスターのやりとりに、ただただ首を傾げるばかりだった。

  そこで回想が終わり、マスターの意識がクレープ大食い大会の現場に戻った。

マ「ふぅ、つまりだ。この回想から導き出される、俺がとるべき行動は・・・」

  マスターは目の前山盛りのクレープをキッと見据えた。

rァ1.乙レデスと蒼星石のため、俺は絶対賞金を獲得してみせる! 決死の覚悟で臨んだ。
 2.満腹中枢を刺激しないようなるべく噛まずに大食いに臨んだ。
 3.俺は乙レデスだ! 乙レデスは俺だ! 俺なんだ! 乙レデスになりきって大食いに臨んだ。

  乙レデスと蒼星石のため、俺は絶対賞金を獲得してみせる! 決死の覚悟で臨んだ。


マ:「うおおお!」

  ガツガツガツガツ!

     ・

     ・

     ・

  十数分後・・・・

マ「う、うう・・・」

   テーブルに突っ伏して苦しそうに呻くマスターがいた。

マ:「は、吐きそうだ・・」

    元々大食いなど得意ではないマスターが無理して食べたのだからしょうがない結果とはいえ
    これまでマスターに出されたクレープは、納豆クレープやアンチョビクレープ、キムチクレープや
    梅クレープ(これは意外といけた)など訳のわからん創作クレープばかりだったのだから
    マスターの胃に掛かる負担は甚大なものだった。
    そんなマスターの姿をカウンターの隅から覗き込む二人組がいた。

副店長:「今までで一番反応が良かったのは梅クレープね・・」
店長:「キムチクレープが一番キツそうだったね」
副店長:「ふむ、なかなか粘るわね。あなた、次はアレを出しておやりなさい」
店長:「出しておやりなさいって、お前、あの人、これ以上は無理だよ。もう食べれそうにないよ」
副店長:「あと1枚ぐらいならいけるでしょ。はい、私が昨日考えたばかりのとっておき。ワサビクレープよ」
店長:「うわぁ・・・。緑色の生地がなまなましい・・・」

マ:「(まさか、俺で新商品のテストしてるとか・・・はは、まさかぁな)」
  マスターはみっちゃんの方に首を巡らせた。
  みっちゃんはマスターと同じくテーブルに突っ伏して完全に撃沈されていた。

み:「・・・」
マ:「(あ、死んでる)だ、だいじょぶかぁ、みっちゃん、みっちゃん」
み:「・・・」

  反応無し。
  マスターと違って普通のクレープを出されてはいたが最初から暴飲暴食で飛ばして自滅してしまったようだ。  

マ:「みっちゃんは脱落か・・。よし、あとひと欠けら食えば、もう一皿完食だ・・・」

   胃にムチ打ち、皿に残っていたクレープに手伸ばす。
マ:「はぁ、はぁ、これを、これを食べれば・・」

   もぐ・・・

   もぐ・・・

マ:「うぐ・・ぐ・・」

   何とか噛み終えたがどうしても喉を通っていかない。
   その間もヘンテコ具材でできたクレープ(佃煮味)の風味が口いっぱいに広がっていく。

マ:「う・・・ぷ」

   まずい・・・このままでは・・・
   マスターの顔が急激に真っ青になっていく。
   リバースか? リバースしてしまうのか、マスター?
副店長:「イナゴクレープはイマイチみたいね」
店長:「なぁ、吐いちゃうんじゃないかな、あの人?」
副店長:「そのときはそのとき、はい、これバケツと雑巾。
     あ、そうそう。吐かずに済んだら例のクレープ、ちゃんと忘れずに持っていくのよ」
店長:「(鬼か、この人は)」


女の子:「大丈夫? これ飲む?」

   女の子・・マスターの隣に座った寝巻きにカーディガン姿の不思議ちゃんだ。
   冷えた茶の注がれたコップを差し出してくれている。

マ:「ふぬっ」
   
   素っ頓狂な返事とともにコップを受け取ると、マスターは一気に難敵のクレープともども飲み干した。

マ:「ぷはあっ はぁはぁ ありがとう」
女の子:「どうしたしまして」

   女の子はニコリと微笑んで会釈した。

店長:「はい、次のどうぞ~」

   マスターの完食を待っていたかの新手のクレープがマスターの前に置かれた。

マ:「・・うっぷ、もう食えねぇぞ・・・って、なんだこの緑色のクレープは」

   生地も緑色、生地にのっている生クリームも緑色・・

マ:「抹茶か?」

   俺はとりあえず


 1.「くんくん」クレープの匂いを嗅いでみた。
rァ2.「ねぇ、これ何のクレープだと思う?」 隣の女の子に意見を求めた。
 3.「俺は・・俺は何皿食ったんだ・・・?」店長に今の自分の順位を含めて訊いた。

マ:「ねぇ、これ何のクレープだと思う?」 

  隣の女の子に毒々しくも見える緑色のクレープの正体について意見を求めた。

女の子:「う~ん、なにかしら」

マ:「抹茶かなぁ」

  女の子はしげしげと緑色のクレープを見つめると、ひょいとマスターの
  皿からクレープを取ってしまった。

マ:「あ」

女の子:「ぱくっ」

  あろうことか女の子はマスター用のクレープを食べてしまった。

マ:「だ、だいじょうぶ?」

  いままで出てきた変てこクレープに十分懲りていたマスターは
  心配そうに女の子を見つめた。
604 : ◆DBbQw9GDOU[sage]:2010/08/28(土) 20:58:02.94 ID:R//0ACA0
女の子:「これ・・・、おいしい♪」

マ:「マジで?」

女の子:「ええ、あなたもどう?」

マ:「あなたもって、それ元々俺のクレープなんだけど」

女の子:「ふふふ、おいし♪」

  女の子はマスターの呆れ顔にかまわずクレープにかじりついている。

マ:「(うーん、まぁ、一口ぐらいなら・・)」

  マスターはやれやれと、まだ自分の皿に残っていた緑色のクレープを
  手に取って噛り付いた。  

マ:「ゲホッ」
マ:「な、なんじゃこりゃ、からっ、辛い!」

  なんてこった。こいつぁ、ワサビだ!ワサビ味のクレープだ!

マ:「しかも辛さに妥協がねぇ!」

  慌ててコップの水に手を伸ばすマスター。だが・・・

マ:「(う、うぐ、満腹で腹が水を受け付けん)」
  舌は水を欲し、腹は水を拒絶している。

マ:「おごごご」

女の子「なにしてるの? もぐもぐ」

マ:「(なんで平然と食ってんだ)」

  しばし頭を突っ伏して辛さが喉を通り過ぎるのを待つマスター。

マ:「はぁはぁ、よく食えるね、それ。辛くないの?」

女の子:「? とっても美味しいわよ? いつものゲロみたいな食事に比べれば」

マ:「ゲロって・・おいおい」

  普段なに食ってんだ、とマスター呆れ顔になった。
女の子:「それ、要らないならくださる?」

マ:「え、あ、ちょっ・・」

  マスターが一口食べただけでギブアップしたクレープまでも
  女の子はひょいと奪い取ってしまった。

女の子:「うん、おいし♪」

マ:「(はぁ~、もう腹も気力も限界だな・・・)

  腹をさすりさすり、マスターは忙しそうに店内を往来している店長を
  呼び止めた。

マ:「俺は・・俺は何皿食ったんだ・・・?」

  店長に今の自分の順位を含めて訊いた。
店長「えっ、順位?」

マ「そう、順位。今俺は何位っすかね?」

店長:「えーと、ちょっと待ってね。ひぃふぅみぃ・・・」

 マスターが平らげた後の皿を数えだす店長。

店長:「ん? あれ?」

マ:「どうしました?」

店長:「隣の子が食べてるクレープ。あなたに出したわさびクレープじゃないですか?」
マ:「あっ・・」

 俺は
rァ
 1.「そうですけど?」

    何かマズかったかな?とも一瞬思ったが深く考えず答えた。

 2.「そうです。すみません。あの子、あのクレープ気に入っちゃって・・
    でも、他に人に食べてもらったんじゃズルですよね・・はは」 

   故意では無いが、黙っておくのはフェアではないと思い、俺は正直に話した。

 3.「さあな? なんのことだ? わからないな、店長」

    ここまで頑張ったのだ。他の人に食わせたんじゃ失格だのなんだの
    ゴネられては面倒と思い、俺はポーカーフェイスにすっとぼけた。
    ま、人間、生きるうえで、こういうしたたかさが必要なのだ。

店長:「えぇ~、あのクレープを!?」
女の子:「? もぐもぐ」
店長:「あちゃ~」
マ:「ははは・・」
店長:「ん~、残念だけど、お客さんは失格ということで・・・」

マ:「はぁ~~」

 失格を言い渡されてから数分間、マスターは重たいお腹を抱えたまま
 ため息をつきっぱなしだった。
 なにしろ、失格じゃなければ暫定1位だったのだから。

マ:「(やっぱり、すっとぼけたほうがよかったべか・・・)はぁ~~~」

女の子:「あの・・、ごめんなさい・・」

 女の子がすまなさそうに声を掛けてきた。

女の子:「私のせいで・・駄目になったんでしょう? その・・、クレープの大会・・」

マ:「ん~~?(無神経で自由奔放な子かと思ってたけど、意外にも気遣ってくれてる
   のかな?)」

女の子:「ほんと、ごめんなさい。わたし、その、あまりお外に出なくて
     久しぶりの外出だったから、その、気持ちがふわふわしてて・・」

   マスターが一瞬訝しげな表情になったのを怒っていると感じたのか、
   女の子はたどたどしく弁明し始めた。

俺は

rァ1.「そんな気にしないでいいって。たかが大食い大会なんだからさ。大丈夫だ、問題ない」

   実際、空元気だったがこんなのは余裕だと言わんばかりに力強く頷いてみせた。
   だが、実際な~~、賞金あればなぁ~~~~、蒼星石とレデスにな~~~、ああ~~

 2.「まったくだよ。ほんと困ったちゃんだ、君は」

    俺はやれやれと苦笑しつつ、俯く女の子の顔をまじまじと覗き込んだ。
    お返しにちょっとからかってやろう。
 
 3.「ちっ・・・」

    俺はあからさまに舌打ちしてそっぽを向いた。
    さっさとみっちゃん起こして店出るか。

マ:「そんな気にしないでいいって。たかが大食い大会なんだからさ。大丈夫だ、問題ない」

   実際、空元気だったがこんなのは余裕だと言わんばかりに力強く頷いてみせた。

マ:「(だが、実際な~~、賞金あればなぁ~~~~、蒼星石とレデスにな~~~、ああ~~)」
女の子:「本当?」
マ:「うんむ」
女の子:「よかった」

   女の子は安堵したふうに微笑んだ。
   マスターもつられて笑みをこぼすが、がっくりと肩が落ちており脱力感が否めなかった。
   もっとも、変てこ具材クレープを腹が限界になるまで我慢して食べてこの結果なのだからしょうがないとも言える。

マ:「はははは・・(賞金の五万円で蒼星石のやりくり楽にしてやりたかったなぁ・・)

女の子:「もぐもぐ」

   女の子は安心してか、もうマスターのことを気にせずにお気に入りのクレープを頬張りはじめた。

マ:「はは、は・・・ふぅ~~~~(五万円もあればレデスから『おなかいっぱい』の一言も聞けたかもなぁ・・・)」

   遠い目をしながら一人たそがれてしまうマスターだった。

マ:「(ああ、あんな小さい子でさえお腹いっぱい食べさせてやれないなんて、俺の稼ぎは・・・)」

   知らず知らずのうちにマスターの悲しんでいる内容がだんだんと自虐的なものになっていった。

マ:「はぁ~~~(情けなくて涙が出てきちゃうよ、ほんと。もっと俺がしっかりしてたら・・)」

レ:「ますたった、これたべていい?」

マ:「ああ、いいよ。俺はもう腹いっぱいだから」

レ:「はぐはぐ」

マ:「そうそう、五万円もあればこうやってレデスに腹いっぱいクレープだって・・・」

レ:「おかわり!」

マ:「・・・・えっ?」