209 名前:ポエマー咲 序 [2010/12/05(日) 02:06:36 ID:SN0u8ZwR]
えー、どうも また来ましたふはははは
164 さん >>165 さん レスに感謝です

漫ちゃんはやっぱり弄られキャラだったんですねぇ かわええのう 良いデコ
上重漫 お昼はきっと鰻重上

…いやその、さて またSS投下します
原作が全国大会で盛り上がっているというのに、大会後のお話し
軽く読んでいただければ幸い
では次レスより、6~7レス程お付き合いください どぞ

210 名前:ポエマー咲① mailto:sage [2010/12/05(日) 02:08:19 ID:SN0u8ZwR]
出 演:清澄高校麻雀部の皆さん 変則的にゆみ&美穂子、ちらっと虎姫隊の皆さん
百合分:ちっとによによ エロ:思いつかぬ ばか度:縁側で日向ぼっこな感じにアレ
捏造妄想熱暴走、するするスルーで安心ダ! それでは、
↓スタート
****************
「 ポエムな午後 」


「平和ねぇ~」 ふわぁあああ 
デッキチェアに寝そべる竹井久が、あくびまじりにそう呟き、ぐっと伸びをした。
ここは清澄高校旧校舎、麻雀部の即席テラスである。とはいえ実態は旧校舎の屋根の上で
テラスというには傾斜があるし、かなり危ない。

「なんじゃ、大口開けてー。もうちっとシャキっとしときんさいよ、部長さん」
まこがベランダの塀にもたれて、笑いながら声を掛けた。
「なによー、いーじゃない。こんな時間は久々なんだから~」 あふぁあああ
「まあなー。でものんびりできるのも今のうちだけじゃ。これから国麻に選抜合宿、
あんたは受験勉強もあるじゃろ?ゆるめすぎても後がしんどかったりするもんじゃよ」

全国大会でまさに台風の目となった清澄高校麻雀部の面々は、大会後もTVや雑誌の取材、
地元に帰れば慰労会やら何やら引っ張りだこで、残りの休みを食い潰すこととなった。
大会の興奮も冷め遣らぬまま2学期を向かえて、慌しい日々が続いたが、ここに来て
ようやく周囲の興奮も収まりつつあった。

「うあーなによなによう。めんどくさいこと思い出させないで、次期部長さーん」
「う、そりゃまだちっと早いけえ、やめといてくれ」
「あら、スケジュール管理に会計に渉外、もう実質的にまこが仕切ってるようなものでしょ。
ふふっ、私もそろそろ、お邪魔かしらねー」
「何ゆうとるんじゃ、わしがしとるんは雑用じゃろ。それに、あんたには卒業まで目一杯、
ここにいてもらわにゃ」

「あら、まこらしくない。不安?」 ちょっと意地悪に笑う。
「そんなんとちゃうよ。ここは、あんたがつくった、あんたの城じゃけぇの。
最初一人ぼっちだった分も含めて、たっぷり満喫してほしいってだけじゃ。……そんだけ」
ぷいっと横を向き、照れくさそうにまこが言った。ちょっと耳が赤い。

「……ふふっ、ありがとまこ。でもちょっと違うわ。私だけじゃない。まこや優希、和に咲
みんなでつくった場所だもの。でしょ?」 「そりゃそうかもしれんけど、でも」

「それに、大会前にも言ったけど、まこがいなかったら私、とっくの昔に音を上げてたもの」
「いやいや、そりゃないじゃろ」 「あら、こう見えて中身は繊細な女の子なんですからね」
「部長、そいつはちょいと無理があるじぇー」 唐突に部室の中から優希の声が響いた。

「おう、来たんか、優希」
「無理があるって、失礼ね。優希、どういう意味?」 ちょっとおどけて睨んでみる。
「”おんなのこ”ってのは、きっとこういうの書ける子のことを言うんだじょ」
優希が一冊のB5版ノートを、ひらひらとかざした。

「? なーに、それ?」 「ふっふっふ、見たいかい?姐さん」
「ぼちぼち和と咲も来る頃じゃ。お茶でも淹れるけえ、部長、中に入ろう」

* *


「ポエムノート?誰の?」
「多分、咲ちゃんの。昨日の帰り際に、部室に落ちてたの拾ったんだじぇ」
昨日は優希が最終退出者だった。そのままつい持って帰ってしまったそうだ。

「こら優希! あんた、それ勝手に読んだんか」
「だ、だって、名前書いてなかったし、ちらっと中見たら面白くって、つい。えへへ」




211 名前:ポエマー咲② mailto:sage [2010/12/05(日) 02:10:04 ID:SN0u8ZwR]
部室にあったのなら、誰のものかはすぐわかりそうなものだが、ちょっと事情があった。
実は2学期が始まってから昨日まで、連日麻雀部に複数の人の出入りがあったのだ。なんと、
入部希望者である。部室はかつてない程の賑わいを見せた。昨日も3名の和ファンの女の子
たちが押しかけて来て、かしましいったらなかった。

とはいえその入部希望者全員、実のところは一躍有名人となった麻雀部メンバー(特に和)
目当ての野次馬みたいなもので、体験対局をしてもらったところ、そのレベルの高さ、真剣さ
に圧倒されてか、正式に入部を申し出る者は皆無だった。期待しただけに、がっくりきた。
新入部員は来年度に期待するしかなさそうだ。

「ふ~ん、どれどれ」 久がノートを手に取った。「あ、こらあんたまで」
「まま、いーじゃない。本当に咲のか確認しなきゃ。ちょっとだけよん。ね?」
「まったく、仕方ないのう。……ちっとだけじゃぞ」 言いつつまこもノートを覗き込んだ。
ホントのところは、興味津々なのだ。

「あはっ、かわいい」 「おお、こりゃまた。かわいらしいのー」
「へへーん、だしょー?」 何故か優希は得意気である。

少し丸みを帯びた丁寧な字で、詩が綴られていた。ノートの三分の二位が埋まっている。
詩の傍らの余白には、カラフルな蛍光ペンで花や星や月、ハートマークといったイラストが
控えめに描かれていた。

内容はというと、メルヘンというかなんと言うか、「いや~、乙女ちっくね~」 ニヤニヤ
な感じだ。何故か読んでいるほうが照れてモジモジしてしまう。
「ふふっ、ピュアじゃのー。しかし咲の字に似てるっちゃ似てるが、ほんまにあの子のか?」
「う~ん、そうだとは思うけど。ん?……あら、このページ……」
パラパラとノートをめくっていた久の手が、あるページで止まった。

そのページだけ、イラストの類が無い。字も少し流れるように崩れている。細身のボールペン
で、一気に書き上げたように見える。

  冷たい雨 傘に隠れて
  あふれるこころ こぼれる雫

  やさしいひとは 東のかなた
  やわらかな手は つなげない
  あったかい声  聞こえない

  大好きな あの笑顔
  いまは 遠く 東のかなた

  窓の外 篠突く雨
  閉じた部屋に わたしひとり
  あらしの海に わたしひとり

  やさしいひとは やまのむこう
  あの 高い高い やまのむこう

  白い頂 想いながら
  わたしはひとりで 夢を見る

  頂に咲く 花の夢
  おしえてくれた 花の夢

  雪の中 凍えながら
  ひとりで咲いてる 花の夢

余白に小さく染みがある。詩の一部も少しインクが滲んでいる。涙の跡だろうか。
「……間違いないみたいね。咲のだわ」 「お姉さんのこと、かのう」


212 名前:ポエマー咲③ mailto:sage [2010/12/05(日) 02:11:19 ID:SN0u8ZwR]
歴史に残る数々の名勝負が繰り広げられた全国大会、魂を削りあうような激闘の末、照と咲は
和解することができた。卓上で二人の間にどんな心の交流があったのかは知る由もない。だが
対局後にしっかりと抱き合う姉妹の姿は、訳もなく見るものの心を打った。

宮永姉妹の間にどんな確執があったのか、久たちは詮索したりはしなかった。
照と咲が実は姉妹であったことが判明したとき、清澄・白糸台両校の面々は、マスコミの
しつこい取材攻勢から、二人を全力で守った。幸い何かと話題の多い大会であったので、
しばらくしてマスコミの興味も他に移り、事態は沈静化していった。
「麻雀Today」 の西田女史は、比較的早くから宮永姉妹の確執に注目し、綿密な取材を
隠密裏に進めていた(照と咲の両親にまで、突撃取材を敢行したらしい)が、ほぼ核心と
思われる事実を掴んでいたにも関わらず、結局、それを記事にすることはなかった。

咲は、大会前に時折見せていた暗い表情をすることも、今ではほぼ、なくなっている。
たまに、とても嬉しそうに姉の話をする。見ていて実に微笑ましいのだが、そんなときは
和の機嫌が少しだけ悪くなるのが、ちょっと困りものだ。和本人は否定しているが。
当の咲は、そのことに気づいていない。なかなか罪なお子様である。

「……何があったかは知らんけど、ある意味ど派手な姉妹喧嘩じゃったのー。ま、何にせよ、
まるく収まってくれてやれやれじゃ」
「ふふっ、本当、そうね。……優希、やっぱりこの詩で咲のだってわかったの?」
「いんや違うじょ。もっとずっと後のページの端っこに……」 優希が言いかけたところで、
――ガチャッ 部室のドアが開いた。
「……だいじょうぶですよ。きっとすぐに見つかります」 「……うん」

「おう、和、咲、お疲れー」 「のどちゃん、咲ちゃん、ちーっす」
「噂をすれば何とやら、かな? 二人とも、お疲れさま」
和と咲が入ってきた。咲はなにやら落ち込んだ様子だ。

「お疲れさまです。あの、咲さんが大事なノートをなくしてしま…」 「そっ、それ!」
中央の麻雀卓にダッと駆け寄り、久の前に置かれていたノートをひったくって、咲は部屋の
隅っこに立った。なんというか、咲らしくない俊敏な動きに一同びっくり。

「さ、探してたノートってそれですか。良かったですね、咲さん」 「……」
咲はノートを胸に掻き抱き、俯いている。「? 咲さん?どうしました?」
「あ、あの…」 久たちの方におずおずと視線を向け、訊いた。「み、見た?」 顔が赤い。

「や、見たっつーか、誰のかのーってチラッとだけな、な、部長」 (やばい、これは泣く)
「そ、そう、誰の落し物かしらーってチラッとだけね、ね、優希」 (おわっ、早くも涙目)
「ばっちり読ませてもらったじぇ!面白かったじょ、咲ちゃんすごいじょ!」
*1 空気読まんかい。…まあ悪気は微塵もないのだろうが。

「優希!そんな、人のものを勝手に読むとか、駄目でしょ!」 和がたしなめた。
「だ、だって名前とかなくて、ちらっと中見たら止まらなくなってその、てへ。ごめんね」
「ふぇ……」 咲の目が潤む。「ああ、咲さん。大丈夫ですか?」 和が咲のそばによる。

久とまこが素早く視線を合わせ、小さくジェスチャーを交わし始めた。この二人はこうして
会話することが可能なのだ。ツーカーとかいうヤツなのだ。無駄にすごいのだ。
(ああやばい、咲が泣いてしまう。部長、何とかしんさい)
(そんなこと言ったって、私だって、詩とかさっぱりだし)
(あわわ、涙、涙こぼれよる!ぶちょうはようっ!なんか気の利いた一言でも!)
(無茶言わないでよ! ああもう……そうだわ!こんなとき、あの二人なら……)

竹井久の、緊急妄想スクランブルー。(もし、この場にゆみがいたら……)
「む、どうした宮永。なぜ泣くんだ?」 「加治木さん、だっ、だって、恥ずかし…」
「何を恥ずかしがることがある?詩作結構、素晴らしいじゃないか」 「……でも」
「私の級友にも何人かいたぞ。そうやってノートにしたためていた」 「ほ、本当ですか?」
「ああ。イラスト描いたり、シールを貼っている者もいたな。小学生の時分はよく見かけた」
「あうっ、う…ぅうう~、ふぇええええん」 「? ど、どうした宮永!おなか痛いのか?」
……妄想、不時着ー。(……あああ、きつい、キツイわ、ゆみ! ええい、やり直し!)


213 名前:ポエマー咲④ mailto:sage [2010/12/05(日) 02:12:58 ID:SN0u8ZwR]
緊急妄想、リスタートー。 (そうね、やっぱりこういうのは美穂子じゃないと……)
「あらあら宮永さん、泣かないで。だいじょぶよ、いーこいーこ」 頭なでなで。
「ぐすっ、ふぐじざん……」 涙目うるうる。
「ありのままの心を綴るって、すごく素敵なことだと思うわ。イラストもとっても上手だし」
「……ほ、ほんとうに?」 「ええ、本当よ。このワンちゃんの絵なんて、とっても可愛い」
「……そ、それ、猫です……う、ぅう、ふぇえええええん」 「あ、あらあらあら」
……妄想、墜落ー。(……ナ、ナチュラルにえぐるわね、美穂子……っじゃなくて、もー!)

(ええいまったく、二人とも駄目ねえ) いや、あなたの妄想ですから。

(仕方ない、ここは一か八か、優しい美穂子おねえさん風に……)
「だ、だいじょぶよ、咲。チラッと見たけど、とってみょすでっ… すてきだわ」 噛んだ。
「なに片目瞑っとるんじゃ?」 久も人の子、たまにアホの子。

「ふぐっ……ふぇえ……」 「さ、咲さん」 和が優しく咲を抱きしめた。

一方その頃、白糸台高校 ――、

「はっ、咲が、咲が泣いてる!」 廊下を歩く照が、唐突に声をあげた。
「こーら、照、これからミーティングだぞ。後にしろ」
どこかに行こうとする照の腕を、菫がつかまえた。

「む、くっ、離せ、菫! 電話しなきゃならないんだ!」
「お前、このまえもそんなこと言ってサボったろ。もうその手は食わんぞ」

「こ、今度は本当に」 「誠子、尭深、連行しろ」 菫がパチンと指を鳴らす。
それを合図に、名前を呼ばれた二人が、両脇からがしっと照の腕を取った。

「はいはーい照先輩、ちゃっちゃと行きましょー」 「は、離せ、誠子!咲がっ!」
「……先輩、往生際、わるい」 「た、尭深、いや、今度はホントなんだってば!」
そのままズルズルと引き摺られて行く。

「はぁ、な~んか照先輩、ちょっとキャラ変わりましたよね~」 淡がしみじみと呟いた。
「ふふっ、もともと照はあんな感じさ。……帰ってきたのさ。戻ってきたんだよ」
「? はあ」 淡はキョトンとしている。菫は優しく微笑んだ。何だかすごく嬉しそうだ。

「さ~~きぃ~~~っ!!!」 窓から午後の日差しが柔らかく降り注いでいる。
そんな平和な白糸台の校舎内に、照の哀切な叫び声がこだましたのだった……。

取って返して清澄高校麻雀部 ――、

「あの、ごめんなさい!咲ちゃん。でも、私ホントに素敵だと思ったんだじょ?
あんなにたくさんポエム書けるなんて、本当にすごいじぇ?」
「……」 クスン
「咲さん、優希はこんなときに嘘なんかつきません。悪気もなかったと思います」

「……ホントウ?」 「ホント! 私、すっかり咲ちゃんポエムのファンになっちったじぇ!
んで、私も真似して書いてみた!ポエム!」 優希がひらりとレポート用紙を1枚かざした。

「え、優希が? ポエム、ですか?」 「おう! 私もばっちり女の子だからな!」

「へ、へえ、どんなの」 (チャンス!まこ、この流れに乗るのよ!)
(よっしゃ、心得た!) 「お、おお、ホンマか?見せてくれんか、優希」

「……見せてくれる? ゆーきちゃん……」

「ふっふっふ、そうかい、嬢ちゃんたち、そんなに私のポエムを見たいのかい…よっしゃOK
そこまで言うなら聴かせてやろう! いくじぇ!」


214 名前:ポエマー咲⑤ mailto:sage [2010/12/05(日) 02:14:12 ID:SN0u8ZwR]
  おおタコス おまえは何故に タコスなの……
  知らんがな(ヘイ!)

  ワカモレ 大盛れ サルサたっぷり
  忘れちゃいけない具材はなーに?

  肉だ! 肉をよこすのだ!
  タコスぢからはパンチりょく!(どーん!)

  あふれるパゥワァー! レッツパーリィ!
  1,2,3Say,Hooooo!(ホー!)
  Hooooo!(ほー!)

  うまいじぇ美味だじぇ おなかいっぱい
  ばっちり栄養トルティーヤ!(ヤー!)

  うなれエイYO! 乳に集中!
  おなかと二の腕ノーサンキュー(まじで!)

  ヘルスメーター? 地獄のメーター?
  私の愛は 止まらない(うらー!)

優希が一気に詩(?)を読み上げた。「…ふぅ~、傑作だじぇ。自分の才能がこ・わ・ひ」
他の面々は、ぽかーんとしている。 「どうした皆の衆、感動して言葉もないかね?」

「あ、え、えーとその、ラップってヤツ?」 「リ、リズミカル?……です、よね?」
「あんたのそのクソ度胸だけは、ホンマにすごいと思うわ……」

「クス……あはは、楽しい!ゆーきちゃんすごいっ」 ぱちぱちぱち 咲が小さく拍手した。
「へへ~ん、だしょー?」 優希は得意満面である。
(わ、笑った~) (やれやれじゃ~) 久とまこがそっと安堵のため息をついた。

* *


「そういえば優希、結局何で咲のノートだって分かったの?」 
淹れなおした紅茶を一口飲んでから、唐突に久が尋ねた。咲もすっかり落ち着いて、
笑いながら優希とポエム談義とかしているところだった。

「ああ、それは簡単だじょ。すごく分かりやすいポエムがあったんだじぇ」
「? わかりやすいって、どんな詩じゃ?」 「え? 私、そんなの書いたっけ……」

「うん!私の一番お気に入りのやつだじぇ!憶えてるじょ!えっと、たしか出だしが、
『のどかちゃんは ふかふかふわふわ……』 っむぐぐっ」

「ゆ、ゆーきちゃん!だめっ!」 咲が慌てて優希の口を塞いだ。
「なるほどねー和への想いを綴った詩ってわけねーそりゃー咲のだわねー」 ニヤニヤ

それまで静かにお茶を飲んでいた和が、ゆらりと立ち上がった。
「咲さん……」 上気した顔で、ずずいっと咲にせまる。妙な迫力だ。
「はいっ! ああの、ごめんなさいっ、のどかちゃんあのね」 咲ちゃんパニック。

「……見せてください」 「へ?」
「だから、見せてください、それ」 「ええっ、だ、だめっ」 和ずいずい、咲たじたじ。

「何故です? 私がモチーフなら、私には見せてもらえる権利があるはずです!」
「だ、だって、だめだよう、うう……ダメなんだもんっ!」 「あ、咲さんっ!」
ポエムノートを抱きしめて、ダッと部室を飛び出した咲を、和が追っていった。

「……ま、平和よねえ~」 「うん、平和じゃの」 「ピンフだじぇ」


215 名前:ポエマー咲⑥ mailto:sage [2010/12/05(日) 02:16:01 ID:SN0u8ZwR]

* *


んあぁあああああ テラスに立ち、久が大きく伸びをした。まこが苦笑してそれを見ている。
穏やかに晴れた秋空のもと、眼前にはアルプスの蒼く雄大なパノラマが広がっている。

今は工事がストップしているが、この旧校舎はきっと来年の今頃は解体されてしまっている。
だがしかし、ここで過ごした時間は、刹那であると同時に、永遠でもある。想い出集めなど
する必要も無いくらいだ。かけがえのない仲間との絆は続いていく。決してほつれはしない。

ここで過ごしたという事実、熱い夏を皆と共に闘ったという記憶、それは何より素敵な宝物だ。
それがあるというだけで、私はきっと、ずっと前を向いて……って、ん?……んん!?

「……優希!パソコンデスクの2段目の引き出しの奥!オペラグラスがあるわ!
持ってきて大至急!」 突然、久が早口で指示を出した。

「? わ、わかったじぇ」 「な、なんじゃ、どうした突然」
驚いてまこが尋ね、久の視線の先を見る。眼下に公園として整備された用水路が見えた。
その脇のベンチに、和と咲がぴったりと寄り添って座り、何か話している。
「ほほう、仲良しさんじゃの~」 ニヤニヤ

「あの雰囲気……、来るわよ、ちゅーっ!」 腕を組み仁王立ちで、久が言い放った。
「な!なに言い出しよるんじゃあんたは!あかん!ほっといてあげんさい!」

「なによう、いーじゃない、まこだって見たいくせにー!」
「あーかーんっ!我慢しい!あんた一番お姉さんで部長で、おまけに学生議会長じゃろが!」

「なによーけちまこー!むっつりまこーっ!」 「ゆーたなこいつっ!とにかく駄目じゃ!」
部室のほうへ久を引っ張るまこと抵抗する久。わやくちゃと二人が騒いでいるところへ、
「持ってきたじぇ!」 テラスに出てきた優希が、そのままオペラグラスを覗き込んだ。
「あ゛っ」

「? どしたの?来た?貸して!」 まこの手をすり抜け、久がグラスをひったくった。
「どれどれ~♪ ……あ゛」

オペラグラスを覗く目に、いきなり和の顔がアップで飛び込んできた。
思いっきり目が合ってしまった。此方を睨んでいる。「くっ、気づかれたか……」

「のどちゃん、怒るとこわいじぇ……」 「あ、こっちに来よる」
ずんずんと大股で和がこちらに向かって歩いてくる。その後ろにトテトテ咲が続いている。

「……さてと、あーそだ、学生議会の仕事があったんだったー。いやーうっかりうっかり。
んじゃ二人とも、後はよろしくー」 そそくさと立ち去ろうとする久。
「待たんかい、こら!」 「部長ずるいじぇ!」 二人でがしっと久を捕まえた。

「は、離しなさい、部長命令よ!」 「そうはいくかい!」 「逃がさないじょ!」
「ぐはっ、いたタタタ、やめっ、は、離してーーーー!!」

この夏、一躍全国にその名を知らしめた智将・竹井久……。この日は一日アホの子だった。
なんともかしましい、ある秋の日の出来事であった。

全国大会の大活躍で俄然注目を集めた清澄高校麻雀部であるが、その実態は、まあ毎日大体
こんな感じなのだ。

このアホの子たちはこの後、国麻、世界ジュニアと再び旋風を巻き起こすこととなる。久達の
健闘を称え、旧校舎の部室を保存しよう、なんてことになったりするのだが、それはまた、
例によって別のお話ということで。とりあえず、今日のところはめでたしめでたし?

****************
以上 読了感謝 です

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最終更新:2012年06月17日 10:19

*1 だーっ!ゆーきーーっ!!