照・衣・和 → 咲
 3人とも壊れているので注意
 外伝キャラも登場します


644 名無しさん@秘密の花園 [sage] 2009/11/19(木) 09:44:58  ID:1aHCLkSf Be:
 
 a day

 宮永咲、彼女にはなぜか人を引き寄せるものがあった。
 普段は気弱でドジで、守ってやりたくなる一面があるのに、麻雀となると圧倒的強さ。
 そのギャップもまた魅力の一つだ。これはそんな彼女に魅せられた者たちの醜い物語だ。

 ここはとある喫茶店。3人の少女たちによる熾烈な戦いが繰り広げられていた。

「まったく仕方ない方たちですね。咲さんは私のものだと何度言えばわかるのでしょうか」
 強い口調でこう言い、他2人を睨みつけるのは咲のチームメイト、原村和。

「ハハッ!ののかは相変わらず面白いな!片腹大激痛!咲は衣のものだというのに」
 笑いながら話し、少し余裕を見せているのは咲のライバル、天江衣。

「・・・好き勝手言っているなお前ら。今日は腹を割って話す必要がありそうだ」
 静かに怒りに燃えているのは咲の実の姉、宮永照。以上3人による戦いは始まったばかりだ。

 この3人の誰が言い出したかは知る由もないが、今日こそ決着をつける、ということになり、
 集まることになった。咲は3人全員と友達以上恋人未満の状態であり、
 みんなと仲良くしたい咲としては別によかったのだが、この3人はそうはいかなかった。

「咲さんは優しいですからね、内心嫌だ、と思っていても付き合ってくれているんですよ、
 あなた方と。その気持ちがまだわからないのですか、こどもさん、お義姉さん」
「その言葉、そっくり返してやるぞののか。あと衣は子供じゃないからな」
「・・・ののかではなくのどか、です。ま、お子様には難しすぎる話でしたか?」

 火花を散らす和と衣。それを見た照が言った。
「咲の周りにこんな奴らがいると思うと本当に不安だな。悪い影響しか受けない。
 これは早く東京に連れて行って一緒に暮らすべきか・・・」
 小さく呟いただけだったが、一瞬にして集中砲火を浴びた。
「あなたと東京に!?それこそありえません!力ずくでも止めます!咲さんのために!」
「咲は衣と透華の屋敷で暮らすことが決まっているのだ、照、お前の好きにはさせんぞ!」

 また激しい言い争い、罵り合いとなっていった。他の客も見て見ぬフリをしていたので、
 全く収まりがつかなくなっていた。

「やはり咲と仲良くするためには同等の麻雀力がなければ駄目だな。
 というわけでののか、お前は脱落だ。そして照はもう卒業だろう?
 衣はその点、咲と互角の力を持ち、秋の大会と来年の夏の大会、二回もまた戦える。
 まるでテンポイントとトウショウボーイのような美しい好敵手対決をこれから・・・」
「・・・その例えを出したのは残念だったな天江。トウショウボーイが去ったあと
 テンポイントは悲劇の死を遂げたことを忘れてはいまい。咲をそんな目に遭わすのか?」
「べ、別に衣はそのような訳で言ったのでは・・・う、うぅ」
「ふふ、涙目ですね。もうお家に帰ったほうがいいのではないですか?こどもさん」

 少しでもまずいことを言おうものならすぐこれ。一瞬の油断が命取りだ。

「咲と私は小さいとき、ある約束をしたんだ。将来は2人で、小さな家に暮らすんだ。
 そして大好きな麻雀に関わりながら2人で静かに暮らすんだ・・・」
「・・・おかしいですね、お義姉さん。確かあなたは妹はいないと言っていたような・・・」
「確かに私には妹はいない。嫁ならいるがな。・・ところでさっきから言おうと思っていたが、
 そのお義姉さんという呼び方はなんだ?非常に不愉快なんだが」
「私が咲さんと結婚するのですから当然だと思うのですが。あなたの妹でしょう。
 敬意を払ってそう呼ばせてもらっているのです。悪いことではないと思うのですが。
 それにあなたには弘世さんとか色々いるでしょうに」
「・・・その口に麻雀牌詰めて喋れないようにしてやってもいいんだぞ・・・。
 お前だってそのバカでかい胸があればいくらでも恋人なんか寄って来るだろうが」

 声のトーンは下がっても、戦いはさらに熱さを増していた。
 そのとき、その戦いに水を差すかのように、のんきな声が聞こえてきた。

「あらあら~・・・和に天江さんに照姉さんじゃないの。これは奇遇ね・・・」
 声の主は竹井久。横には福路美穂子がいた。久も美穂子も全国大会に出場していたので、
 照のことをよく知っていた。

「・・・久さん・・・。モメてるようですし、あまり関わらないほうが・・・」
「何言ってるのよ美穂子。だから面白そうなんじゃないの。これは見逃せないわよ」
 3人に聞こえないように小声で話していたが、久は3人にいきなり問いかけた。

「そういえば昨日咲が学校で電話しているのを聞いたのよ。誰かとこの辺で待ち合わせの
 約束をしていたわ。時間的には・・・確かもうそろそろかしらね」

 学校を通しての電話だったので、久はそのことを知っていた。それを聞いた3人は・・・
「わ、私以外の誰かとデート!?そんなオカルト、ありえません!S・O・A!」
「・・・お、おちおちつけつけつけののか。ま、まだデートと決まったわけでは・・・」
「お前こそ落ち着け天江。しかしお前でもないということは・・・4人目か!」

 そして3人の思いは一致した。もうすぐ現れるであろう、その4人目を倒す。
 これ以上ライバルを増やすわけにはいかない。ここは一時休戦して協力だ。

 久の話では11時にこの辺で約束をしていたらしい。3人は店の中から外をじっと見ていた。
 すると、店の前で歩みを止め、時計を見る一人の人物が現れた。
 そしてその人物は、皆がよく知る人物であった。

「あ、あれは加治木ゆみ!まさかあいつが咲の相手・・・」

 加治木ゆみ。咲とも当然知り合いだ。咲の約束相手である可能性もあったが・・・。
「いや、その確率は低いでしょう。確か加治木さんは後輩の方とかなり仲が良かったはず。
 それで浮気をするなんてことはまずありえないでしょう」
 和はそのように言った。しかし、そのあと予想外の事態が起こった。

 それから間もなくして、咲が現れた。3人は相変わらずだった。
「・・・咲さん・・・やはり私服も最高ですね・・・」
「・・・お、透華の屋敷に着てきた服と同じだな。衣としてはあれが一番お気に入り・・・」
「相変わらず咲はかわいいなあ・・・。あ~・・・抱きしめたい・・・」
 だが、3人が自分の世界に入っていると、咲は近くにいたゆみとあいさつしてそのまま
 一緒にどこかへと歩いていってしまった。どんどん姿が小さくなっていく。

「まさか加治木さんが宮永さんの相手だったとは・・・。これはびっくりですね。
 でも私と久さんもこうして一緒にいるわけですし・・・」
「そうよ。それにデートじゃないかもしれないわよ・・・」

 久と美穂子はそう言ったが、気がつくと3人の姿はもう無かった。
 一瞬の出来事だった。後を追ったと考えるのが妥当だろう。
「こうしちゃいられないわ、私たちも後を追うわよ、美穂子!」
「・・・何で私たちも一緒に行くんですか・・・・・・」
「咲はうちのかわいい部員だからね、あ、和もか。しっかり監督しないと」

 場面は変わり、咲を追った3人。咲たちを少し見失っていたが、少しするとすぐに
 ゆみが一人でいるのを見かけた。なぜか咲がいないが、これはチャンス。
 早速3人で尋問することにした。3人でゆみの周りを囲んで逃げられないようにした。
 当然ゆみは何が起こったかわからず、驚きを隠せなかった。

「い、いきなり何だお前らは!?・・・って、原村に天江に宮永照!?」
「加治木さん・・・。いつから咲さんとこの関係を?一体どこまで進んだのですか?」
「?・・・原村、お前の言っていることがよくわからないのだが」
「今さらそんな白々しい態度をしても無駄だぞ加治木。衣たちに真実を話すのだ。
 今日は何回目のデートなのだ!?今なら許してやっても・・・」

 3対1での戦いが始まった。この3人、手を組めばとても強力だ。
 照に至ってはゆみの胸ぐらを掴んでいた。その迫力は凄まじかった。
 しかし、この戦いはこのあとすぐに終戦となった。

「・・・お前ら、勘違いしているようだから言っておくがな、宮永とは今、偶然会ったのだ。
 待ち合わせの約束をしているけど迷子になったから助けてほしい、そう言われたんだよ。
 知り合いがそう言うのに助けない奴はあまりいないだろ?それだけの話だよ」
「・・・え、そうなの?」
「だからもう開放してくれ・・・。私だってモモとデートの約束をしているんだ。
 あ、もう時間じゃないか!まずいな・・・。宮永なら向こうにいるから、それじゃ。 
 それにしても人助けしてこんな目に遭うなんて、まったくどんな災難だ・・・」

 それだけ言って、ゆみは元の場所に走り去ってしまった。
 3人は少しの間あっけにとられていたが、ゆみへの罪悪感など感じる間もなく、
 すぐに咲がいる、と言われた方向に向かった。

「ごめんごめん、さっき言い忘れたんだけど咲の電話の相手は加治木さんじゃないのよ・・・」
 実は最初から知っていた久。白々しくも3人に近づいたが・・・。

「部長!邪魔です!どっか行っていてください!」
「そのことはもういい、静かにしろ凡人が!今大事な場面なのだ」
「さっさとあっちへ行っていろ、この塵芥!クズッ!」

「・・・はい。すみませんでした」

 3人の視線の先には、咲と黒髪の少女がなにやら話していた。
 黒髪の少女は、咲と同い年くらいだろうか。髪型はおかっぱで、誰も彼女を知らなかった。

「実はあの人は小林さんっていってね、現役の女子高生でいて漫画家なのよ。
 今回、雀士を取材したいって連絡があったのよ。麻雀漫画を描いているらしいからね。
 ぜひ宮永咲さんに、というお願いだったから、咲に行ってもらったのよ」
 
 このことも全部わかっていた久。3人に睨まれたが、けらけら笑っていた。
 そして咲と小林は、近くのレストランに入っていった。

 デートでなくてほっとした3人。しかし3人は咲たちに気づかれないように
 同じレストランに入った。咲の取材だ。咲が何を言うか気になるのは必然だ。
 
「きっと咲さんは言うでしょうね、志を共にした仲間、いえ、愛を誓い合った原村和が
 いるから、私は勝ち続けられるってね。おふたりのことなど一度も口にしないと思いますよ」
「・・・あ~?正直原村さんは苦手ですって暴露するに決まってるだろ、バカが」
「そうだぞののか。・・・照も、お姉ちゃんなんていないって咲が言っても落胆するでない。
 咲にとってののかと照はあのドブ猫池田以下の存在であることは明白だからな!」

 そしてテーブルの下でお互いの足を蹴りあう始末。それを見て笑みを浮かべる久。
「・・・久さん、部員の監督とか言ってましたけど、楽しんでいるだけでしょ」
「さあ・・・。何のことやらわからないわ~・・・」

 そして小林による咲の取材が始まり10分位した時、皆が気になる質問が出た。

「宮永さんにこれはどうしても聞きたいところだけど・・・、今好きな人っている?
 ほら、漫画に恋愛はつきものだからさ、聞いておきたいんだ。あ、嫌だったら別に・・・」
「・・・はい、います」
「ほう。なるほど。その人物の名前・・・出来れば聞きたいなあ」

 場の緊張感が増してきた。3人とも、自分の名前を言うだろう、そう思っていた。
 ただ、不安があったのも事実だ。本当に自分を好きでいてくれているか。
 そして今、ついに1人だけが生き残る。完全決着の瞬間が迫っていた。
 3人に加え、久と美穂子もその答えに全力で耳を傾けていた。

「私の好きな人は・・・『にゃーーーーーーーーーー!!!!!!!』・・・です」

 ???・・・咲が肝心の名前を言った瞬間、猫の鳴き声と被って聞こえなかった。
 声のするほうを見ると、池田華菜がいた。凄く興奮していた。
「か、華菜・・・。どうしてこんなところに・・・」

「ほ、本物の小林先生だし!私、先生の漫画の大ファンなんです!
 握手してほしいし、いや、先にサインしてほしいし!」

 その後、咲の取材はすっかり華菜に乗っ取られた。
「今連載中の漫画では池山華奈が一番のお気に入りだし!池山は私とそっくりだから
 感情移入できるし!今から池山の逆転優勝、是非お願いしたいし!」
「・・・いや・・・実は私も流局を30回以上させて、リー棒もたくさん溜めて、
 最後は役満直撃で逆転、って書こうとしたんだけど、担当に止められちゃってさ・・・。
 結局主人公を勝たせる王道路線に落ち着きそうだよ。ごめんね。
 私も池山は書いてて楽しいんだけどなあ・・・」

 結局咲が自分の秘密を語ることはなく、そのままみんなで雑談して取材終了の時間となった。


「今日は本当に楽しかったし!小林先生、ありがとうございます!これからも応援してます!
 お体に気をつけて、こち亀より長く連載してほしいし!」
「・・・こち亀よりっていうのは無理かな・・・。でも、私も楽しかったよ。
 同年代の子と話せる時間があまりなかったからね。・・・そうだ、きみたち時間ある?
 今からみんなで麻雀でもどう?咲さんも、華菜ちゃんも、是非一緒に打ちたいな」
「小林先生と打てるなんて光栄です。私も池田さんも、喜んで行かせてもらいます!」

 その様子を見ていた久と美穂子。美穂子には不安があった。
「早く逃げて華菜・・・。3人の魔物に屠られる前に・・・」
 咲の取材を図々しくも邪魔した華菜が3人に襲われるのではないかと懸念していた。
 しかし、そんな心配は無用だった。

「ふふ・・・。私には聞こえていましたよ。宮永さんが私の名前を言うのを」
「・・・ののかは頭だけでなく耳も悪いようだな。衣の名が聞こえなかったのか」
「本当にお前らは呆けているな。一生やってろ。その間に私は咲とヤッてるから・・・」
「・・・・・・照さん、あんまりふざけたことを言うなら、殺ってもいいんですよ・・・」
「ああ!?やれるもんならやってみろコラ!」
「・・・もしもしハギヨシか!?今すぐ龍門渕家の黒服共を言った場所に派遣しろ!
 2人ほど地下帝国に送り込んでほしい愚者が・・・」


 そしてまた言い争いとなっていた。結局今日のところも決着はつかなかった


 そしてその3人を放置して一同は店を出た。店から破壊音がしたが聞こえないフリをした。
 ふと、久と華菜が小林に同じタイミングで質問をしたのだった。

「小林さん、あのときの咲の答え、聞こえてたんでしょう?私たちは聞こえなかったのよ。
 こっそり教えてくれない?」
「小林先生、池山は福地キャプテンと結ばれるからいいとして、肝心の主人公は一体誰と
 カップルになるんですか?全く予想がつかないし」

 その質問に、小林は不敵な笑みを浮かべながら答えた。

「・・・今の二つの質問、答えは同じなんだけど・・・。ま、ここはノーコメントとしよう。
 秘密は秘密のまま、期待は期待のままのほうが明らかになった時、面白いからね。
 それに、今そのことを言ったら・・・。全国の読者たちに怒られる」

 
 咲の恋人の座に誰が座るかは咲本人すらわからず、ただ彼女だけが知るのであった。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2009年11月23日 17:17